<近日開催予定のイベント>

「素問を読もう!」勉強会のお知らせ
毎週火曜19時〜 または 毎週木曜13時〜 (途中からの参加も可能です。)


 

こんにちは、大原です。
今回は、「補瀉之大事(ほしゃのだいじ)」です。

素問(そもん)、難經(なんぎょう)、針灸聚英(しんきゅうじゅえい)等の書に、
補瀉迎随の事、色色(いろいろ)書すと雖も、當流には補は瀉なり、瀉は補なり。

補の内に瀉有り、瀉の内に補有りと云て、諸病是れ皆實火なり。
是の實火の証には針す。虚冷の者(ひと)には針せず。
陰中の陰、金の針を以て實火を瀉(くだ)し、
平にすしかれば皆以て瀉なりといへども有餘(ゆうよ)の邪氣を鎮め、
萬病を痊(いや)す處(ところ)、是即ち皆補なり。

世俗の諺(ことわざ)に針は瀉有れども補無しと云ふ事、謂(い)われあり。
肝の臟は多氣・多血にして常に實火、龍雷(りゅうらい)、相火(そうか)なるに、
仍(よ)って瀉針はあれども補針無し。

閉藏(へいぞう)をつかさどる物は腎にして、
常に不足なるゆへに補針はすれども瀉の針はなし。
是の事を瀉有りて補無しと云うなり。
これに就(つ)き、六ヶ敷(むつかしき)秘理(ひり)あれども紛ぎれ易き。
故に畧(りゃく)す。

無分流の記述においては、
局部だけではなく全体をとらえることの重要性が
一貫しているように思います。

一般的に、
ある部分は虚(きょ:力の無い状態を表す反応)で、
他のある部分は実(じつ:病理産物があり、それを表す反応)である場合に、
虚には不足を補い、
実はその病理産物を取り除くということが
治療原則になります。

ですが、この無分流の記述においては
「諸病是れ皆實火なり。」と、病は「実」の火であるとあり、
「平にすしかれば皆以て瀉なりといへども有餘(ゆうよ)の邪氣を鎮め、
萬病を痊(いや)す處(ところ)、是即ち皆補なり。」
と、その実を取り去り「平」の状態になると
虚の部分も補われてくるとあります。
逆に、虚が補われると、停滞している実を動かす力が出てきて
病理産物が取り除かれるという場合もあります。

これが「當流には補は瀉なり、瀉は補なり。」
という、「虚」や「実」という局部の反応だけにとらわれない、
全体をとらえる無分流における
重要な治療原則につながるのだと思います。

続きます。


〜Back Number〜
鍼道秘訣集を読む その1 →  鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
鍼道秘訣集を読む その9
鍼道秘訣集を読む その10
鍼道秘訣集を読む その11
鍼道秘訣集を読む その12
鍼道秘訣集を読む その13 → 五.四脉之大事
鍼道秘訣集を読む その14
鍼道秘訣集を読む その15 → 六.火曳之針
鍼道秘訣集を読む その16 → 七.勝纍之針
鍼道秘訣集を読む その17 → 八.負曳之針
鍼道秘訣集を読む その18 → 九.相曳之針
鍼道秘訣集を読む その19 → 十.止針
鍼道秘訣集を読む その20 → 十一.胃快ノ針
鍼道秘訣集を読む その21 → 十二.散針
鍼道秘訣集を読む その22 十三.鍼不抜抜事
鍼道秘訣集を読む その23 十四.鍼痛
鍼道秘訣集を読む その24 十五.知必死病者習
鍼道秘訣集を読む その25 十六.吐針
鍼道秘訣集を読む その26 十七.瀉針
鍼道秘訣集を読む その27 十八.車輪之法
鍼道秘訣集を読む その28 十九.実之虚 & 二十.虚之実
鍼道秘訣集を読む その29 二十一.実実 & 二十二.虚虚
鍼道秘訣集を読む その30 二十三.知寒気事
鍼道秘訣集を読む その31 二十四.知腫気来事
鍼道秘訣集を読む その32 二十五.瘧観之大事
鍼道秘訣集を読む その33 二十六.膈之針
鍼道秘訣集を読む その34 二十七.中風針之大事
鍼道秘訣集を読む その35 二十八.亡心之針
鍼道秘訣集を読む その36 二十九.丹毒之針
鍼道秘訣集を読む その37 三十.驚風之針
鍼道秘訣集を読む その38 三十一.疳之針
鍼道秘訣集を読む その39 三十二.瘧毋之針
鍼道秘訣集を読む その40 三十三.一之針
鍼道秘訣集を読む その41 三十四.胃氣有無之大事
鍼道秘訣集を読む その42 三十五.三焦腑之大事


参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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