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こんにちは、大原です。
今回で、「三清浄」についての記述は最後です。
この「三清浄」は長いですね。
おそらく夢分翁が鍼道秘訣集の中で
一番言いたいところなのでしょう。

それでは、↓↓へ!!

過去の記事のリンク
鍼道秘訣集を読む その1 → 鍼道秘訣集序
鍼道秘訣集を読む その2 → 一.當流他流之異
鍼道秘訣集を読む その3 → 二.當流臓腑之辯
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5
鍼道秘訣集を読む その6 → 三.心持之大事
鍼道秘訣集を読む その7 → 四.三清浄
鍼道秘訣集を読む その8
鍼道秘訣集を読む その9
鍼道秘訣集を読む その10
鍼道秘訣集を読む その11


(前回の続き)
イニシヘ美濃國加納ミノノクニカナフシロ於伊茶ヲイチャ
ト申女ノ母重病ヲ受苦ウケクルシム於伊茶アマリカナシサ
セキ  フ處二龍泰リウタイ寺ノ全石センセキト申僧ヲシヤウ
タウノ為ニ陀羅尼タラニヨミテモラヒケル全石一
心不亂ニ陀羅尼ヲ讀ムコトシハラク有リテ母カウヘヲア
ゲヤレヤレウレシコノコロムネノ内ニクルシミアリテカナシカリ
ケルニ御經ノ力二依苦無ヨリクルシミナシヨロコブナシカキリ厥時ソノトキ
全石憶様ヲモフヤウ最早モハヤ布施フセヲモラヒカヘルベキカ今  シ
逗留トウリウスベキカト思フ心出来イテキケルトキニ母ヤレヤ
カナシマタクルシク成テ候トカナシム全石是聞扨コレヲキキサテ
我二欲心ヨクシン出ル故トヲモヒトリ  クサキノ一心不亂ニ
陀羅尼ヲヨミケレバ母モ病漸漸ニ軽成終カロクナリツイ
イヘケルト也此モ皆我心ノ清浄シヤウジヤウ清浄ト
イワレニテ加様ノ善悪センアクアリ又病者ムカフヲク
ヒヤウ出ル人  リ是ハ我ワサイタラサルヒトハ心二ドウ
テンヤスシイテサレ不動明王フトウミヤウワウセナカナル伽婁羅炎カルラエン
心火ヲアラワス  ノ火ノ内二不動御座ヲワシマスハ人
人ノ心ザルトウセ體也諸藝ショケイ共二不動ノ體トナ
ラザレハ其事  ノワザ  シ成歌二
鳴子ヲバ ヲノ羽風ハカセニ マカセツツ 心トサワク 村雀哉ムラススメカナ
  ノ段能能心カケ工夫ヲ  シ成是心持第一ノ
事也


又、古(いにしえ)美濃の國、加納の城に
於伊茶(おいちゃ)と申す女の母、重病を受け苦しむ。
於伊茶(おいちゃ)、余りの悲しさに、関(せき)と云う所に、
龍泰寺(りゅうたいでら)の全石と申す僧を請(しょう)じ、
祈祷のために陀羅尼(だらに)を読みてもらひける。

全石、一心不乱に陀羅尼を読むこと暫く有りて、
母、頭(こうべ)をあげ、やれやれ嬉しや、
頃(このごろ)心の内に苦みありて悲しかりけるに、

御經の力により、苦み無しと悦ぶこと限り無し。

その時、全石思うよう、もはや布施をもらい帰えるべきか、
今少し逗留(とうりゅう)すべきかと思う心出来(いでき)ける時に、
母やれやれ悲しや、また心苦しく成りて候と悲しむ。

全石、これを聞き、さては我に欲心出る故と念(おも)いとり、
前(さき)の如く、一心不乱に陀羅尼(だらに)を読みければ、
母も病漸漸(ぜんぜん)に軽く成り、終に癒えけるとなり。
此も皆我心の清浄と不清浄との謂(いわ)れにて、加様の善悪あり。

又、病者に向うて憶病(おくびょう)出る人有り。
これは我藝(わざ)の至らざる者(ひと)は、心に動転(どうてん)出で易し。
されば、不動明王(ふどうみょうおう)の
背(せなか)なる伽婁羅炎(かるらえん)は心火をあらわす。

その火の内に不動御座(おわします)は、人人の心の動ぜざる体なり。
諸藝(しょげい)共に不動の体とならざれば、その事(わざ)成り難し。
歌に、
鳴子をば 己(おの)が羽風(はかぜ)に 任(まかせ)つつ 心と騒(さわぐ) 村雀かな

この段よくよく心掛け、工夫を成すべし。
これ心持第一の事なり。


全石という僧が重病人を治すために
一心不乱にお経を読んだところ、
苦しい症状が治まってその重病人は大変喜んだ。
全石はその後すぐ、お布施を頂いて帰ろうか、
それともしばらく滞在するべきかを思案しようとし出したら、
さっきの重病人は再び苦しみ出した。

全石は「なぜこのようなことが起こったのだろうか、
さては自分の心に欲心が出たことが原因ではないのか」
と思い、再度一心不乱にお経を読んだ。
すると、病人は少しずつ症状が軽くなり、しまいには癒えてしまった。
これは、我心の清浄・不清浄について述べた通りである。

また、病人に対して臆病になってしまう人がいる。
技術が一定に達していない者は、心が定まらず動転しやすいためである。
不動明王の背中にある炎は心火を表すが、
その火の中で動かずに座す姿は
人の心が動転せずに定まっている姿なのである。


技術とともに心も定まらなければ
その技はうまくいくのが難しい。

歌にあるが
 鳴子(田んぼや畑で、鳥などから農作物を守る。風などで音が鳴る。)というのは
 自分の羽風にまかせながらも
 落ち着きがない、群を成す雀のようだ

この段落をよく心掛け工夫をするべきである。
これが心持ちの第一である。

※後半の、原文の意味については
拙生の解釈によります。

あくまでも、参考までに
とどめてくださいますようお願いいたします。


参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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