下積み修行中の冠木のお勉強記事です。
勉強不足で至らない内容ですが、
少しずつ学んで参りますのでお許し下さい。
不出来なところもあるかと思われますが、
成長とともに少しずつお返しして参ります。
どうか見守り 応援してやって下さい。


出雲にて
出雲にて

こんにちは、冠木です。

先日、唾液づわり(唾液過多)でお悩みの患者様が来院されましたので、
内容を調べてみました。


産婦人科の専門誌や妊婦向けの本を見てみたところ、
「つわり」でまとめられているか、
唾液が多く、水も飲めない状態であれば病院へ行って下さいと
小さく記載されているだけのようです。

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●唾液(ほとんど痰のようなもの)が多く出るため、
日中はペットボトルに出したり、
夜中も枕にタオルをしいたり洗面器を置いて眠る。
●タオルを持ち歩くが、すぐに唾液でビショビショになってしまう。
●産婦人科に行っても、乗り切って下さい。としか、言われない。
●唾液が大量に出るが、飲み込むのも気持ちが悪い。
●吐きづわりと違い理解されにくい。
●他のつわりと違い、出産まで続いた。
●涎が出て満足に会話も出来ない。

などの症状で悩まれている方が多くいるのだと知りました。
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この症状は、唾液≒涎が大量に出るとのことであるが、
東洋医学では「涎」は脾が主っている。
涎とは唾液中の清い液のことである。
食をとると涎の分泌が増え、嚥下と消化を助ける。
脾胃不和になると、涎液の分泌が急激に増え、
涎が口から溢れでるようになる。

脾は運化・昇清機能を
胃は受納と腐熟を主っており、
その機能が失調し、
水湿が化生されないと、湿が集まって痰飲となり
それが中焦に停滞して胃脘部を塞ぐので
濁飲が上逆するのである。
すると、水っぽい痰涎を嘔吐する・
胃がつかえて食べられないなどの症状が出る。

このことから、
脾胃の弱りが唾液づわりを起こしているのではと考えます。

このような症状であっても、
きちんと原因を求めることで
鍼治療が非常に有効となってまいります。


【つわり】

つわりとは(妊娠嘔吐・妊娠悪阻)、
妊娠初期から起こる悪心や嘔吐を始め、
食欲不振などの消化器症状や嗜好の変化など多彩な症状の総称。
妊娠5~6週頃に発症し、多くは16週頃には自然に消失する。
*悪阻という名称は、
「胎産心法」がいうように、「悪心のために飲食を阻む」ことから名づけられ、
民間では「害喜」ともいう。
『症例から学ぶ中医婦人科 東洋学術出版』より

【西洋医学的病因】
妊娠による内分泌的、代謝的、精神的な変化が
母体へ影響を及ぼすことから起こるとされている。
内分泌的には血液中に大量に分泌されるホルモンの影響に
体が必死に対応しているために起こると考えられており、
また胃蠕動運動低下によって胃から十二指腸への輸送が
長引くために嘔吐を引き起こす可能性もある。

【東洋医学的病因】
臨床的には悪心があり、酸っぱいもの・辛いものを欲する、
早朝空腹時に嘔吐・痰涎、
あるいは空えずきするなどの症状がみられ
軽症の場合、治療は要しない。
症状が重い場合は、
食後すぐに嘔吐を催し、水を飲むだけで嘔吐することもある。
本病は受胎後、衝脈の気が旺盛となる一方で、
胃の和降作用が失調した結果、胃気が衝気とともに上逆して起こる。

“悪阻”
妊婦が患う悪阻の理由は何でしょうか?
妊娠している婦人は、その子宮の中にいつもは存在していない男精を留めています。
そして血海の精血は浮き溢れて、内に気はいつもと異なりざわついています。
このため悪阻を患うわけです。

血海の精血が浮いて逆すると吐逆します。
精胎の気が緩んでいるときはそれを収斂させようとして酸を好みます。
精胎の気が急なときは、それを散じようとして辛を好みます。
けれども日を積み月を重ねていくと、
子宮の精血が定まり、悪阻もまたなくなります。
治療する必要は必ずしもありません。』
(医学三蔵弁解 たにぐち書店p57より引用)
以前、下野先生が記事にされています。↓
【医学三蔵弁解】妊娠悪阻(つわり)


●脾胃虚弱悪阻
脾胃虚弱・胃失和降を原因とするもの。
★悪心・嘔吐して食べられない
★清涎を嘔吐する
★食後の嘔吐
★胃脘部や腹部の張満・疲労感があり眠りたがるなど。

≪病機≫
もともと脾胃虚弱の上に
妊娠により陰血が衝・任脈および胞宮に下注することにより発症する。
すなわち胃気がさらに虚して下降しずらくなると同時に
衝脈の気が旺盛となって上逆するため、
胃気もこれに伴い上衝する。


●肝胃不和悪阻
肝気犯胃・胃失和降を原因とするもの。
★嘔吐・酸水・苦水の吐出を繰り返す
★腹部がムカムカする
★胸脇部の苦悶感や疼痛・げっぷ・目眩・イライラなどの全身症状

≪病機≫
①もともと脾胃虚弱の女性で、
妊娠に伴い陰血が胞宮に下りて肝血不足を招き、
滋養を失った肝気が旺盛になりすぎて発症するもの。
②精神的抑うつ・過剰な怒りなどの要因によって
肝が疏泄機能を失った結果、
肝気が上逆して胃を犯し、
胃気が衝脈にそって上逆し、発症するもの。


『方剤』
乾姜人参半夏丸(かんきょうにんじんはんげがん)
組成:乾姜・人参・半夏・生姜
妊娠嘔吐不止、乾姜人参半夏丸主之。
妊娠、嘔吐、止まざるは、乾姜人参半夏丸之を主る。

一般にその症状は軽いものであるが、
嘔吐が止まらなければ、必ず胃気を損傷するので、
益気温中降逆の薬を主として用いなければならない。
乾姜には祛寒温中、半夏には止嘔降逆の作用があり、
人参には益気補中の作用がある。
本処方は、胃の虚寒による妊娠嘔吐に有効である。


参考文献:
『金匱要略解説』
『東洋医学講座 取穴編』
『中医病因病機学』
『症例から学ぶ中医婦人科』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『中医臨床のための中薬学』
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会
『入門 金匱要略』 南山堂
『医学三蔵弁解』 たにぐち書店
『医道の日本 ポジティブを治療に活かす/妊婦への鍼灸治療』 医道の日本社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

冠木

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