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鍼道秘訣集


こんにちは、大原です。
4月になり年度も変わって
何か新しい本でも読もうかと本棚を見てみると
まだまだ読み切れてない本が沢山あるなあ、と感じました。

ふと目にとまった本の中に、
鍼道秘訣集がありました。
もう一度読んでみようと思います。
まずは序文から。
(できるだけ原文のままになるように抜粋してみました。)


鍼道秘訣集序           夢分流

當流撃鍼ウチハリハジメハ夢分翁ハジメ禅僧ゼンソウタリシ時
キワメ病者ビョウシャナリシカハ夢分ナゲキコレヲ母孝行ノタメ
時ノ名人タリシ醫師クスシアフ捻針ヒネリハリナラヒテ朝
夕母ヲ療治リョウヂシ病ヲイヤサントスレドモ重病ニヤシルシナシ
   テココ夢分翁工夫クフウツイヤアンメグラシテ   ノ撃針ウチハリヲ以
テ立ルニ手ニヨウシテ験ヲ取ノミカハ他人ノ病ヲイヤス
事十ニマツタフスヨツテ   二人ノ病苦ビヤウクスクフハ藥師如来ノ

慈悲ジヒノ道理トヲモヒ遠近エンキン貴賤キセン貧福ヒンフクエラバ  テスクフヲ
モツハラトシタマフ故ニ   ノナクホト四方ニヒイヅ是ヲ
サイ法橋ホツキヤウ聞傳キキツタヘ奇異キイヲモヒヲナシ千ノ道ヲトヲシ
セズシテ夢分ノイエタツネユキ師弟シテイヤクカタクトシ
ツミ月ヲカサネ奥義オウキサツカツイ   ノ名ヲタカフヨツテ  二
弟子數多アマタ有トイヘドモ奥田意伯得 ノ  ヲ洛陽
ニ住ミテ名ヲ都鄙トヒヒロムアヒ繼テ宗子九郎左衛
  ノ尊直タカナヲ父ニコヘ針術シンジュツニ妙ヲアラワス事カタシアケテカソエ

  ノチャク意伯  ク相繼洛陽ニシテ億萬人ノ病ヲスクフ
コレ即夢分翁ヨリ傳ヘ来處ノ鍼法シンハフ  シカクノ此然
ルニ當流ハ十二ケイ十五ラクミャク任督両脉ニントクレウミヤクカンカヘ
針セズ根本コンホンノ五ザウ心眼シンカンヲ付枝葉エタハニ不
カマエシンハ心也ト和訓ワクンシテ心ヲ以テ心ニツタヘ教外ケウゲ
別傳ヘツテン不立文字フリツモンジカウスルカ故ニ他流ノコト遠理エンリ
マハリトホナル療治リヤウジホン更ニナシ心裏ココロノウチニ奥義ヲヲサ
唯一心ノ持様モチヨウヲ大事トスル也此セン一ノトコロ

マモル  キ成ガユヘ二管針クダハリ指針サシバリナト名ヲカヘシナ
カヘテ人ノ心ヲトラカタトヘハ手カク尊圓ソンエン流ノ御家
ノ筆法  キ成ユヘニ色色ト書替カキカヘマギラカスガ如コノ
故ニ  クアヤマチ有テ十二九非業ヒゴフノ死ヲスル人數多アマタ
マコトベシ悲憐カナシムアワレムベシトオモフ止難ヤミカタキヨツテ萬人ノ死
ヲモスクヒ千万ノ鍼醫シンイアヤウキ事ヲナサズ上手カウトラ
シメンガタメ秘中ヒチウノ秘事ヲカキアラワシテ世ホウトス
ルモノナリ少モナカレシヤウスル
ウタガイヒヲ


原文に句読点などを入れて、
適当と思われるところで改行するなどし、
現代的な読み方にしてみたいと思います。


当流撃針(うちはり)のはじめは、
夢分翁はじめ禅僧たりし時
悲母極めて病者なりしかは夢分これを歎き、
母孝行のため時の名人たりし薬師に逢って
捻針(ひねりはり)を習い得て
朝夕母を療治し病を癒さんとすれども
重病にや験(しるし)も無し。

ここに於いて、夢分翁工夫を費やし案を廻らして
この撃針(うちはり)をもって立てるに
手に応じて験(しるし)を取るのみかば
他人の病を癒やすこと十に九をまっとうす。

これによって人の病苦を救うは
薬師如来の慈悲の道理と念(おもい)、
遠近、貴賤、貧福を選ばず、
救うをもって専(もっぱら)としたまう。

ゆえにその名ほど無く四方に秀づ、
これを意齋法橋(いさいほっきょう)聞き伝え、
奇異の念(おもい)をなし、
千里の道を遠しとせずして
夢分の宅(いえ)に尋ねて行き
師弟の約を堅くし
歳を積み月を重ねて奥義を授かり
終(つい)にその名を高(たこう)す。

これに依って弟子数多(あまた)有りといえども、
奥田意伯その伝を得、
洛陽に住みて名を都鄙(とひ)に広(ひろ)む。
相繼(あいつい)で、宗子九郎左衛門の尉尊直(たかなお)、
父に越えて針術(しんじゅつ)に妙を現す事勝(あけ)て計え難し。
その嫡(ちゃく)意伯同く相繼(あいつぎ)、
洛陽にして億萬人の病を救う。
これすなわち夢分翁より伝へ来る所の鍼法(しんぽう)かくのごとし。

しかるに、当流は十二経、十五絡脈、任督両脈を考え針せず、
根本の五臟六腑に心眼を付、枝葉に構えず、
針は心なりと和訓して、
心を以て心に伝え、
教外(きょうげ)、別傳(べつでん)、不立(ふりつ)、

文字(もんじ)と號(こう)するがゆえに、
他流のごとき遠理(えんり)の廻遠(まわりとお)なる療治(りょうじ)、本さらにこれ無し。

心(こころ)の裏(うち)に奥義を納め、
唯一心の持様(もちよう)を大事とするなり。

これ専一のところを護(まも)る事成難きがゆえに、
管針(くだはり)、指針(しんし)など、
名を替え、品を変えて人の心を蕩(とらか)す。

譬(たとえ)ば、手書(かく)人、尊圓流の御家の筆法成難きゆえに、
いろいろと書き替え、紛(まぎら)かすが如し。

このゆえに、多く過(あやま)ち有りて、
十に九非業(ひごう)の死をする人数多(あまた)なり。
誠に悲むべし、憐(あわれむ)べしと念(おもう)心止み難きによって、
萬人の死をも救い、千万の鍼医の危(あやう)き事を成さず、
上手號(こう)を取らしめんがため、
秘中の秘事を書きあらわして、世寶(せほう)とするものなり。
少も疑いを生ずること勿れ。



<語句の意味>

・洛陽:時代背景から、ここでは京都の別称のことと思います。
・都鄙(とひ):都会やいなか
・號(ごう):
・蕩(とらか)す:落ち着かないで、ゆれうごく。ゆらぐ。など
・號(こう):さけぶ。声を出して泣く。 


参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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