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こんにちは、大原です。
今回は、金匱要略の百合ひゃくごう狐惑こわく陰陽毒いんようどく病ノ証治(第3)より、
甘草瀉心湯の条文をみていきます。
(甘草瀉心湯は傷寒論にも出てきています。)

<条文3-11>
狐惑之為病、状如傷寒、黙黙欲眠、目不得閉、臥起不安。
蝕於喉爲惑、蝕於陰爲狐。
不欲飮食、惡聞食臭、其面目乍赤、乍黒、乍白、 蝕於上部則聲喝、甘草瀉心湯主之。

<読み>
狐惑の病たる、かたち傷寒のごとく、黙黙もくもくとして眠らんと欲し、目閉ずるを得ず、臥起がき安からず。
喉を蝕するを惑と為し、陰を蝕するを狐と為す。
飲食を欲せず、食臭を聞くを悪み、その面目たちまち赤く、たちまち黒く、たちまち白し。
上部を蝕すれば則ち声喝す。
甘草瀉心湯、之を主る。

「狐惑の病」とは
熱のある傷寒のようで、眠たいのだけれど目が閉じられず、
寝ても起きてもじっとしていられない不安がつきまとう。
喉に潰瘍ができた場合は「惑」といい、
陰部に潰瘍ができた場合は「狐」という。
しかし、この「惑」「狐」の文章は、後の人の註釈ではないかとの説あり、
さらに、
「その面目たちまち赤く、たちまち黒く、たちまち白し。
上部を蝕すれば則ち声喝す。」の文章も
後の人の註釈ではないかという解説がある。
そのように読まないよ意味がよく分からないためである。

すなわち、狐惑病とは、
眠りたくても眠れず、不安感があって、
寝ても起きてもいられず食欲がなく、
食物の臭いを嗅ぐのも嫌だというもので、
このようなときには甘草瀉心湯の証であると考える。

「狐惑」とは狐にまどわされたような病気だと言う説もあるが、
狐:下疳(げかん=下部にできる潰瘍)
惑:上部(口の中)にできる潰瘍
という説もあり、条文の内容から後者であると汲み取れる。
実際に、甘草瀉心湯はアフタ性の口内炎によく効く。
(『傷寒論解説』より)

●甘草瀉心湯方
甘草四兩。
黄芩、人參、乾薑各三兩。
黄連一兩。
大棗十二枚。
半夏半升。
右七味、水一斗、煮取六升、去滓再煎、温服一升、日三服。

<読み>
●甘草瀉心湯方

甘草四兩。
黄芩、人參、乾薑各三兩。
黄連一兩。
大棗十二枚。
半夏半升。
右七味、水一斗、煮て六升を取り、滓を去り、再煎し、一升を温服す。日に三服す。

さて、甘草瀉心湯は
傷寒論の太陽病下篇にも出てきます。
ちょっとみてみましょう。

<傷寒論 太陽病下編より>
傷寒中風、反二三下之後、其人下利日数十行、
穀不化、腹中雷鳴、心下痞鞕満、
乾嘔、心煩不得者、甘草瀉心湯主之。

<意味>
『寝ころんで読む傷寒論・温熱論』より
傷寒であれ中風であれ、誤って2、3回下した後、下痢が一日に数十行にもなって、

食物は消化されず、ゴロゴロと腹鳴し、心下は痞えて鞕満し、
嘔吐しようとするが吐物はなく、胸苦しく精神不安になっている。
この場合には甘草瀉心湯が良い。

『傷寒論解説』より
傷寒・中風で表証のあるものを医者が誤って下したために、
下痢が日に数十行の多きに達し、
飲食物は消化せず腹鳴があり、心窩部はつかえて硬く膨満し、
からえずきがあって、胸苦しく、安静にしておれない。
そこで医者は、みずおちの膨満して硬いのをみて、
病邪が心下に充満していると診断して、重ねてまたこれを下した。
ところが、そのつかえはますますひどくなった。
これは胃中が空虚で、邪気の上逆によって硬くなっているのである。
この場合には甘草瀉心湯が良い。

2つの参考文献から、なんとなく
腹部の状態は上の絵のようになるイメージが湧くかと思います。

半夏瀉心湯の腹証
半夏瀉心湯の腹証

金匱要略の狐惑病の文章と、
傷寒論の条文の文章とを比較すると、
甘草瀉心湯をどちらも共通して用いて良いとは
なかなかイメージがつきにくいです。

ですが、この腹証の絵で邪の状態をみてみると
胸部と心下に邪があり、
・胸部に邪=
精神的に不安定・眠れない(傷寒論)、不眠・不安感(金匱要略)


・心下に邪=
消化されない(傷寒論)、心下に痞えて硬くなる(金匱要略)

というように、邪の場所から、
今回の傷寒論と金匱要略の条文で
それぞれ甘草瀉心湯が用いられる意味を
一応説明できると思います。
(・・・少し強引な感じもありますが・・・)

続きます。


<参考文献>
『金匱要略講話』
『傷寒論解説』 創元社
『金匱要略も読もう』 東洋学術出版社
『寝ころんで読む傷寒論・温熱論』 中外医学社
『腹證奇覧』 医道の日本社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。

大原

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