こんにちは、大原です。

前回まで、臓腑ごとの記述についてみてきました。
臓腑についての記述は終わり、
今回は次の段落です。

過去の記事のリンク
鍼道秘訣集を読む その1

鍼道秘訣集を読む その2
鍼道秘訣集を読む その3
鍼道秘訣集を読む その4
鍼道秘訣集を読む その5


三 心持之大事

他流ニハ何レノ病ニハ何レノ處ニ何分ナンブタルルナ
ドト  フハカリニ心ヲ盡シ一大事ノ處ニマナコヲ不
當流ノ宗トスル處ハ針ヲ立ル内ノ心持ヲ専
トス語ニ
ムシンニテワサニシナレハ  ニ自然シセンニキヨニシテ霊空レイクウニシテメウ
ヒカヌ弓ハナサヌ矢ニテ射日イルトキアタラズシカモハヅサ
ザリケリ
コレ當流心持ノ大事也此語歌ヲ以テ工夫
  キハリス


原文に句読点などを入れ、
適当と思われるところで改行するなどし、
現代的な読み方にしてみたいと思います。


他流には、いずれの病にはいずれの処に何分鍼立てる、
などということばかりに心を尽くし、
一大事の処に眼を付けず、当流の旨とする処は
鍼を立る内の心持を専とす語に、
事に無心にして心に無事(ぶじ)なれば
自然に虚にして霊空にして妙、
挽かぬ弓、放ぬ矢にて射る日(とき)は、
中(あたら)ず、しかもはずさざりけり。
これ当流の心持の大事なり。
この語歌をもって工夫し鍼すべきなり。


ここでは、
鍼をどこにどのぐらいの深さを刺すという
他流の考え方に対する、
無分流の要となる考え方が述べられていると思います。

的に当てようとせずに弓を挽き、
矢を的に当てようとせずに放てば、
必ず的を外さないという
鍼をする上での心の持ち方の喩えが書かれており、
この次の章(三清心)につながる
重要な内容となります。

色々考えて治療することも大事だと思いますが、
考察通り論理的にいかないことも多くあり、
治療にいき詰まったときには
このような無心の心持ちを思い出すことも
必要だと思います。


参考文献:
『鍼道秘訣集』(京都大学附属図書館所蔵)より
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003559
(掲載画像は該当部分を抜粋)
『弁釈鍼道秘訣集』 緑書房

 

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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