こんにちは、為沢です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(上)二十一章と二十二章。
二十一章では、太陽病を誤下により変証にしてしまった時の治療法について述べており、
二十二章では続いて、誤下の結果生じた陽気虚損の証治について述べております。


弁太陽病脈証并治(上)

二十一章

太陽病、下之後、脉促胸滿者、桂枝去芍藥湯主之。方八。
桂枝三兩、去皮 甘草二兩、炙 生薑三両、切 大棗十二枚、擘
右四味、以水七升、煮取三升、去滓、溫服一升。本云、桂枝湯今去芍藥、将息如前法。

和訓:
太陽病、之を下して後、脉促に胸滿するものは、桂枝去芍薬湯之を主る。方八。
桂枝三両、皮を去る 甘草二両、炙る 生姜三両、切る 大棗十二枚、擘る
右四味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。本に云う、桂枝湯今芍薬を去ると。将息は前法の如し。


太陽病、下之後
太陽病の治療原則は発汗法であり、
「下之後」とは攻下法を行った後のことを述べている。
先表後裏の治療原則に反するため誤治にあたる。

脉促胸滿者
誤治のため、邪が胸中に入り「胸満」が出現する。
「胸満」とは、胸がいっぱいになったようで、衛気が巡らず気分が悪いこと。
そして陽気が胸中の邪を外に追い出そうと抗争し脉促となる。
脉促とは、脈象の一つで脈の去来がとても速い脈であり
ときに脈拍が止まる。ただし止まる回数、間隔は不規則な脈である。

桂枝去芍藥湯主之
芍薬は陰気とのつながりが強く、身体を収斂するという働きがある。
従ってこの場合、芍薬によって腠理が塞がり、邪気を散じることができなくなると
胸中に更に籠って胸満がひどくなると考えられるので、
薬は桂枝湯から除き
胸中に下陥した邪を再び表に持ち上げることを目的とする。

方義
桂枝湯(桂枝・芍藥・甘草・生薑・大棗)の内、芍藥を除く
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(上) 十二章・十三章

提要
太陽病を誤って下した後の変証を治療する方法について。


太陽病で、誤って攻下法で治療された後、脈象は急促となり、
胸がつかえて苦しい場合は、桂枝去芍薬湯で治療する。第八法。
桂枝
三両 、皮を除く 甘草二両、炙る 生姜三両、切る 大棗十二個、裂く
右の四味を、七升の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服する。別本では桂枝湯から芍薬を除くと記している。
療養法は前法に同じ。


二十二章

若微惡寒者、桂枝去芍藥加附子湯主之。方九。
桂枝三兩、去皮 甘草二兩、炙 生薑三両、切 大棗十二枚、擘 附子 一枚、炮、去皮、破八片
右五味、以水七升、煮取三升、去滓、溫服一升。本云、桂枝湯今去芍藥加附子。将息如前法。

和訓:
若し微惡寒する者は、桂枝去芍藥加附子湯之を主る。方九。
桂枝三両、皮を去る 甘草二両、炙る 生姜三両、切る 大棗十二枚、擘る 附子一枚、炮ず
、皮を去る、八片に破る
右五味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。本に云う、桂枝湯今芍薬を去り附子を加うと。将息は前法の如し。


若微惡寒者、桂枝去芍藥加附子湯主之
前章の証に加えて「もし少し悪寒があれば」
この症状は太陽病を攻下法で腹中より津液亡失してしまったため、
虚寒を呈し、少陰にまで影響を与えたことにより生じたものである。

方義
桂枝湯(桂枝・芍藥・甘草・生薑・大棗)の内、芍藥を除く
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(上) 十二章・十三章

附子
附子は辛熱壮烈であり、「走きて守らず」で十二経を通じ、
下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、皮毛に外達して表の風寒を散じる。
それゆえに亡陽欲脱の身冷肢冷・大汗淋漓・吐利不止・脈微欲絶などには回陽救逆し、
腎陽不足の陽痿滑精・腰膝冷弱には補火壮陽し、
脾腎陽虚・陰寒内盛の心腹冷痛・吐瀉転筋には温裏散寒し、
陽虚不化水湿の身面不浮腫・腰以下腫甚には助陽行水して冷湿を除き、
風寒湿痺の疼痛麻木には祛風散寒止痛し、
陽気不足の外感風寒で悪寒発熱・脈沈を呈するときは助陽発表する。
このほか、補益薬と用いると一切の内傷不足・陽気衰弱に使用できる。
ここでの附子の働きは、
二十章と同様に陽気を回復して少陰の元を固め、汗を止めて津液を回復させる。

提要
前章に続いて、誤下の結果生じた陽気虚損の証治について。


もしさらに微かに悪寒があれば、桂枝去芍薬加附子湯で治療する。処方を記載。第九法。
桂枝
三両 、皮を除く 甘草二両、炙る 生姜三両、切る 大棗十二個、裂く 附子一枚、炮じる、皮を除く、八片に割る
右の四味を、七升の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服する。
別本では桂枝湯から芍薬を除くと記している。療養法は前法に同じ。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

為沢

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