こんにちは、為沢です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(上) 二十章です。
この章では、過度の発汗により陽虚になった者の証治について述べております。


弁太陽病脈証并治(上)

二十章

太陽病、発汗、遂漏不止、其人惡風、小便難、
四肢微急、難以屈伸者、桂枝加附子湯主之。方七。

桂枝三兩、去皮 芍藥三兩 甘草三兩、炙 生薑三両、切 大棗十二枚、擘 附子一枚、炮、去皮、破八片
右六味、以水七升、煮取三升、去滓、溫服一升。本云桂枝湯、今加附子、将息如前法。

和訓:
太陽病、発汗し、遂に漏れて止まず、其の人惡風し、小便出難く、
四肢微急し、以て屈伸し難きものは、桂枝加附子湯之を主る。方七。
桂枝三両、皮を去る 芍薬三両 甘草三両、炙る 生姜三両、切る 大棗十二枚、擘る 附子一枚、炮ず、皮を去る、八片に破る
右六味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を溫服す。本に云う、桂枝湯今附子を加うと。将息は前法の如し。


太陽病、発汗、遂漏不止
太陽病に対して発汗させたが、流れるような汗が出て止まらなくなる

其人惡風
発汗法により汗が多量に出たのに、邪が除かれず
なお表証があることを暗示している。

小便難
津液を亡失したために起こる。

四肢微急、難以屈伸者
発汗により津液を失うと、陽気の筋を養い柔軟にするという働きができないため
気血が巡りにくくなって起こる。

桂枝加附子湯主之
これらの症状には、桂枝加附子湯が主る。

方義
桂枝湯(桂枝・芍藥・甘草・生薑・大棗)
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(上) 十二章・十三章

附子
附子は辛熱壮烈であり、「走きて守らず」で十二経を通じ、
下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、皮毛に外達して表の風寒を散じる。
それゆえに亡陽欲脱の身冷肢冷・大汗淋漓・吐利不止・脈微欲絶などには回陽救逆し、
腎陽不足の陽痿滑精・腰膝冷弱には補火壮陽し、
脾腎陽虚・陰寒内盛の心腹冷痛・吐瀉転筋には温裏散寒し、
陽虚不化水湿の身面不浮腫・腰以下腫甚には助陽行水して冷湿を除き、
風寒湿痺の疼痛麻木には祛風散寒止痛し、
陽気不足の外感風寒で悪寒発熱・脈沈を呈するときは助陽発表する。
このほか、補益薬と用いると一切の内傷不足・陽気衰弱に使用できる。
ここでの附子の働きは、陽気を回復して少陰の元を固める。
陽気が回復すれば汗が止まり、止まれば津液も回復してくる。

提要:
桂枝加附子湯の証の特徴と治療について


太陽病で、発汗させたら、汗が出過ぎて止まらなくなり
さらに悪風、小便が少なくなってすっきり出ない、四肢が微かにひきつれ
屈伸しにくいなどの症状がある場合は、桂枝加附子湯で治療する。
処方を記載。第七法。
桂枝
三両 、皮を除く 芍薬三両 甘草三両、炙る 生姜三両、切る 大棗十二個、裂く 附子一個、炮じる、皮を除く、八片に割る
右の六味を、七升の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服する。別本では桂枝湯に附子を加えるとある。
療養法は前法に同じくする。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

為沢

2 コメント

  1. 為沢くん、陽気が津液とともに損傷した場合の
    アプローチの仕方は大変興味深いものです。

    鍼を持ったときのイメージにも直結します。
    附子を加える。
    これが僕にとっても非常に意味深く
    臨床的な直感とも符合する。

    ありがとう 感謝したい。

    キミ達が僕や一鍼堂という看板に頼ることなく
    一人の治療家として深みを持って欲しい。
    全員がそうあって欲しい。
    一人が一人として戦えないとき 一鍼堂としては 
    一人の治療家としては発展的なステージに於いて死を意味する。

    脱線した。
    みんなで高め合おう。

        林

    • 院長、コメント頂きありがとうございます。

      傷寒論は大変内容の深い書物であるので
      解釈に頭を悩ませながら記事を作成していると同時に
      毎回新しい発見があり、楽しんで作らせて頂いております。
      臨床でもまだまだ悩むこと多々ありますが
      客観的に見て、成長していく自分を楽しんでおります。
      まだまだ修行の身なので
      これからも御指導、御鞭撻のほど宜しく御願い致します。

       為沢

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