この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。


太陽病上篇より

9/7(水)

板書

(29条)
傷寒、脈浮、自汗出、小便数、心煩、微悪寒、脚攣急、反与桂枝欲攻其表、此誤也。
得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾姜湯与之、以復其陽。
若厥愈足温者、更作芍薬甘草湯与之、其脚即伸。
若胃気不和、譫語者、少与調胃承気湯。
若重発汗、復加焼針者、四逆湯主之。


この条文で示されているのは、
表証と誤認し、桂枝を与えた誤治に対する考え方である。

脈浮、自汗の症状だけをみると
表証ととらえてしまいがちだが、その他の症状から、
表証だけでなく陽気の不足、陰分の不足があると考えられる。
桂枝を与え表邪をとろうとすることによって、
陽気不足や陰分不足がさらに悪化してしまう。

それらの虚が悪化した場合に、
陽気を損傷することから手足の厥冷や小便さくが、
陰分を損傷することから虚熱を生じて
咽の乾きや煩躁がおこる。

さて、陽気と陰分がどちらも損傷した場合に、
どのように処置を施すべきなのだろう。

条文では、「まず陽気を復せ」とある。
陰分の回復よりも、まず陽気の回復を優先させるのはなぜだろうか。
他の文献を参考にすると、
陰陽の関係性で「気は形を為す」とある。
すなわち、気によって形はつくられる。
つまり、陰陽がともに衰弱する場合は
陽の回復を優先すべきということであると思う。

また、条文の読み方で
「もし(若)」と文頭ある文章が4つあり、
それぞれ「もしそのような場合は、この方剤を用いよ」とある。
つまり、身体の状態によって方剤を適宜使い分けるということである。
ただし、はじめに陽気を補った場合は、
次に陰分も補う必要があり、最初と二つ目の文章は
おそらくつながっているように思われる。
そうでなければ陽気を回復しただけで、
おそらく陽気過多になってしまうため、
芍薬甘草湯で陰分を補う必要がある。

ただし、陽気を回復させる甘草乾姜湯を用いなくても
自然と陽気が回復した場合(足が温かくなった場合)には、
陽気を補う必要がなく、
芍薬甘草湯で陰分を補えば良い、とも読める。

続いて、胃熱が心をおびやかし、
譫語せんごの症状が生じた場合には腸胃承気湯を、
もし、さらに誤治を重ねた結果、
陽気の損傷が甚だしくなってしまった場合は
四逆湯を用いるということである。
ここで腸胃承気湯は「少し与えよ」とあり、
与えすぎて津液不足に陥らないように注意すべき
ということだろう。

本条文は4つの方剤が記されているが、
陰陽がともに虚した場合に
身体をどのようにみて証を立てるべきか、
そしてどのように治療を組み立てるべきかが示されているといえる。 

参加者:下野、新川、大原、小堀


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