こんにちは、為沢です。

先日、NASAのスペースシャトルが30年の歴史を以て引退となりましたね。

スペースシャトル30年の歴史

出典:ついに最終飛行 スペースシャトル30年の歴史 http://mainichi.jp/select/wadai/graph/spaceshuttle/9.html

スペースシャトルは無重力での科学実験のほか、
大型物資の輸送能力を生かして
ハッブル望遠鏡や木星探査機ガリレオなどを運搬しました。
2015年以降打ち上げ予定のハッブル望遠鏡の後継者である
ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡はどうやって打ち上げる予定なのか?
個人的に少々気になりますが、
沢山の感動を与えてくれたスペースシャトルに感謝と賛辞を送りたいです。

では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(上)二十七章。
太陽病表証の熱多寒少証の治療について詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(上)

二十七章

太陽病、發熱惡寒、熱多寒少。脉微弱者、此無陽也。
不可發汗。宜桂枝二越婢一湯。方十四。
桂枝去皮芍藥 麻黄 甘草各十八銖、炙
大棗四枚、擘 生薑一兩二銖、切 石膏二十四銖、砕、綿裹
右七味、以水五升、煮麻黄一二沸、去上沫、
内諸藥、煮取二升、去滓、溫服一升。
本云、当裁爲越婢湯、桂枝湯合之、飲一升。
今合爲一方、桂枝湯二分、越婢湯一分。

臣億等謹按、桂枝湯方、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。
越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。
今以算法約之、桂枝湯取四分之一、即得桂枝、
芍藥、生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚。
越婢湯取八分之一、即得麻黄十八銖、生薑九銖、
甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分之七、棄之。
二湯所取相合、即共得桂枝、芍藥、甘草、麻黄、各十八銖、
生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚、合方。
旧云、桂枝三、今取四分之一、即当云桂枝二也。
越婢湯方、見仲景雑方中、外台秘要一云起婢湯。

和訓:
太陽病、発熱悪寒し、熱多く寒少なし。
脉微弱なるものは、此れ陽なきなり。
汗を発すべからず。桂枝二越婢一湯に宜し。方十四。
桂枝皮を去る 芍藥  麻黄 甘草各十八銖、炙る
大棗四枚、擘く 生薑一兩二銖、切る 石膏二十四銖、砕く、綿で裹む

右七味、水五升を以て、麻黄を煮ること一二沸、
上沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を溫服す。
本に云う、当に裁ちて越婢湯を爲り、桂枝湯之を合わせ、
一升を飲むべし。今合せて一方と爲し、将息は前法の如しと。

臣億ら謹んで按ずるに、桂枝湯方、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。
越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。
今算法を以て之を約するに、桂枝湯は四分の一を取り、即ち桂枝、
芍藥、生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚を得。
越婢湯は八分の一を取り、即ち得るは麻黄十八銖、生薑九銖、
甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分の七、之を棄す。
二湯の取りたる所相合わせ、即ち共で桂枝、芍藥、甘草、麻黄、各十八銖、
生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚を得、合方す。
旧に云う、桂枝三と。今四分の一を取り、即ち当に桂枝二と云うべきなり。
越婢湯方、仲景雑方中に見れ、『外台秘要』には一つに起婢湯と云う。


太陽病、發熱惡寒、熱多寒少。
太陽病にかかり、発熱・悪寒するが、発熱している時間が長く悪寒が少ない。

脉微弱者、此無陽也。不可發汗
脈が微弱であれば、陽気を失っているので発汗させてはいけない。

宜桂枝二越婢一湯
桂枝二越婢一湯が良い。
「この句は、熱多寒少の後にくるのが正しい書き方であり、
後世の編集の過程で条文の順序が変わってしまった」という意見がある。
太陽病発熱悪寒シ、熱多ク寒少ナキ者ハ桂枝二越婢一湯ガ宜シ。
脉微弱ナル者ハ、此陽無キ也。發汗スベカラズ。
このように解釈すると、桂枝二越婢一湯の適応と禁忌を論じたものになる。

方義
桂枝湯(桂枝・芍藥・甘草・生薑・大棗)
こちらを参照→
【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(上)  十二章・十三章

越婢湯(麻黄・石膏・甘草・生薑・大棗)

麻黄
麻黄

麻黄
辛温・微苦で肺・膀胱に入り、
辛散・苦降・温通し、肺気を開宣し腠理を開き
毛窮を透して風寒を発散するので、
風寒外束による表実無汗や肺気壅渇の喘咳の常用薬である。



石膏
石膏

石膏
石膏は辛甘・大寒で、肺・胃の二経に入り、
甘寒で生津し、辛で透発し、
大寒で清熱し
清熱瀉火するとともに散熱し、
外は肌表の熱を透発し内は肺胃の熱を清し、
退熱生津により
除煩止渇するので、
肺胃二経の気分実熱による
高熱汗出・煩渇引飲・脈象洪大、
肺熱の気急鼻扇・上気喘咳、
胃火熾盛の頭痛・歯齦腫痛・口舌生瘡などに、非常に有効である。
ここでは知母・甘草とともに用いると効果的である。

桂枝二越婢一湯について
桂枝二越婢一湯は桂枝湯の1/4量と越婢湯の1/8量を合わせたものである。
風寒表邪があり、陽熱内壅を伴って熱多寒少になっている状態であり、
桂枝加麻黄で表邪を散じ石膏で内熱を清する。
ただし量が少ないので小しく汗を発すである。
「汗を発すべからず」とあるのは、
通常の量で強い発汗をさせてはならないことを指している。

提要
太陽病表証の熱多寒少証の治療について


太陽病に罹り、発熱悪寒が出現し、
発熱が多くて悪寒が少ない場合は、桂枝二越婢一湯で治療すればよい。
もし脉象が微弱であれば、陽気はすでに虚しているから、
さらに発汗法で治療することはできない。処方を記載。第十四法。
桂枝
皮を除く 芍薬 麻黄 甘草各十八銖、炙る 大棗四枚、裂く
生薑一両二銖、切る 石膏二十四銖、砕く、綿で包む

右の七味は、五升の水で、まず麻黄をしばらく煮て、浮かんだ泡を除き、
残りの諸藥を入れ、二升になるまで煮て、滓を除き、一升を溫服する。
別本には、越婢湯と桂枝湯を別々に作ってから両者を合わせ、一升を服用するべきものであるが、
今両者を合わせて一処方とし、桂枝湯二に対して越婢湯一にする、と記載されている。

臣億らが謹んで考察するには、
桂枝湯方は、桂枝、芍藥、生薑が各三兩で、甘草二兩、大棗十二個である。
越婢湯方は、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五個である。
いま計算して数を求めると、桂枝湯の四分の一は、
桂枝、芍藥、生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚個である。
越婢湯は八分の一は、麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、
大棗は一個と八分の七で、端数を切り捨てる。
二湯のそれぞれを合わせると、桂枝、芍藥、甘草、麻黄各十八銖、
生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四個となる。
別本では桂枝三と越婢一湯としているが、
桂枝湯四分の一と越婢湯の八分の一を合わせているので、桂枝二越婢一湯と言うのが正しい。
越婢湯という処方は、仲景の『金匱要略』に出ている処方であるが、
同じものが『外台秘要』に「起婢湯」という名で出ている。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

為沢

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