イチョウの葉がほのかに色づき始めました
イチョウの葉がほのかに色づき始めました (10月初 緑地公園にて)

 


こんにちは、大原です。
前回の続きです。
前回は、水飲と熱邪が胸中で結合してできた
「結胸」に対しては、
大陥胸湯や大陥胸丸を用いて、
水熱の結合を破って
疎通させるといった内容でした。
(条文128条〜131条)
以下、132条から引き続き結胸証について、
注意点などが述べられています。
(参考リンク:大陥胸湯 / 腹證奇覧

条文132条
結胸証で脈浮大のときは攻下してはならない。

(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百三十二章・百三十三章・百三十四章

脈浮は病邪がいまだ表にあることを示し、
脈大は虚の脈であるため。攻下すると
虚をさらに虚してしまうため、
誤治に注意しなければならないことが書かれています。

条文134条
太陽病を誤治した場合の結胸、
誤治によって瀉下法を用いて結胸証が形成された場合と、
瀉下法によっても結胸証が形成されない場合について

133条をとばして、先に134条について述べます。
132条では、「誤治に注意すべし」とありましたが、
本条は、太陽病の表邪が完全に裏に入ってない状態で
(表邪が解してない状態で)、
誤って瀉下を行ってしまった場合についてです。
表の邪気が胸膈中に内陥し水飲と結合して、
ついには「大結胸証」が完成してしまう
とされています。

ここで「大結胸証」とは
心下〜少腹の鞕満・疼痛、また、
舌の乾燥、便秘、日晡潮熱などの症状が
あらわれるものを言います。

本条の後半では、表邪が胸膈中に内陥せずに
中焦の湿邪と結合した場合は、
結胸を形成せず、

体内に湿熱を形成し、それが鬱滞することで
黄疸があらわれるとされています。

条文135条
傷寒が緩解せずに6、7日が経過すると
誤治しなくても結胸証を形成する場合がある。
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百三十五章・百三十六章

条文136条
大柴胡湯証と結胸証との比較

大柴胡湯を用いる場合は、
少陽病に陽明腑証が併存する場合でした。
(参考リンク:太陽病 その11
すなわち、表邪が熱化して大便結実などの
陽明腑病の症状に加え、
往来寒熱など少陽の邪もみられる場合です。

これに対して、
水と熱が胸脇で結合した結胸証
(大陥胸湯を用いる場合)では、
心窩部の疼痛や鞕満、熱も鬱熱であり、
大柴胡湯とは異なる症状であることが
記されています。

条文137条
邪熱が内陥して痰飲と結合し、結胸と
陽明裏実がともにあらわれる場合について
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百三十七章・百三十八章

結胸と陽明裏実証が
ともにあらわれる場合も
「大陥胸湯が主治する」とあります。

条文133条
大結胸の症状があらわれ、
煩躁する場合は、非常に重篤なものである。
(死に至る)

【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百三十二章・百三十三章・百三十四章

(133条は、大結胸証について
死に至る可能性のある
重篤な場面について記されているので、
大結胸証の記述のある条文の最後に
並び替えてみました。)

大結胸証(「結胸証悉ク具ワル」=
心下〜少腹の鞕満・疼痛、また、
舌の乾燥、便秘、日晡潮熱
の症状があらわれ、かつ煩躁するということは
邪気が旺盛で正気が衰えていることを示すと
されています。

これは、攻下すれば正気が衰退し、
正気を補おうとすれば邪気が旺盛になる恐れがあり、
治療側として進退極まった状態をあらわしているようです。
すなわち、治療時期を逸し
(攻下するのが遅すぎて)、
病人を死に至らしめてしまう場合について
書かれています。

以下、結胸について、もう少し続きます。
次回は大結胸証に似た「小結胸証」の内容からです。


参考文献:

『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会

*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。

大原

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