甥っ子 / オイルパステル
甥っ子 / オイルパステル

こんにちは、為沢です。
久々にオイルパステルで絵を描きました。
絵は産まれて5〜6ヶ月になる甥っ子です。
いや〜、この子にはなかなか苦労させられまして。
というのも、妊娠初期の出血→ひどい悪阻→前置胎盤→逆子という受難を乗り越え
自然分娩で無事産まれた甥っ子ちゃんなんです。
厳密に言えば、これらは母体の不調からくるものなので、
胎児には何の問題はなかったのですが、
去年、毎週のように身内のところへ鍼をしに行ったのを覚えてます。
産まれた時は、安堵に近いものがあり
鍼師として責務を全うできたことに胸を撫で下ろしました。
こうやって元気な甥っ子を抱きかかえた時はとても感慨深いものがありましたね。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百三十七章・百三十八章。
百三十七章では、陽明腑証と大結胸証について。
百三十八章では、小結胸の証治について詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(下)百三十七章

太陽病、重發汗、而復下之、
不大便五六日、舌上燥而渇、

日晡所小有潮熱、從心下至少腹、
鞭滿而痛、不可近者、大陷胸湯主之。

和訓:
太陽病重ねて発汗して復た之を下したけれども、
大便せざること五六日、舌上燥きて渇し、
日晡所に小し潮熱あり、心下従り鞭満して痛み、

近づくべからざるものは、大陥胸湯之を主る。


太陽病、重發汗、而復下之、不大便五六日、舌上燥而渇
太陽病に何度も発汗させた後、誤って攻下したために、
津液を重損させて邪熱の内陥化燥に至らせ、大便が5〜6日出ず
舌上が乾燥して渇くなどの陽明の燥気が過旺となった現象である。

日晡所小有潮熱
「日晡所」とは午後から夕方にかけて、
午後15時〜午後17時ころの時間帯。

「潮熱」は、おおかた午後に熱が上昇する熱型をいうが
ここでは小有とあるので、陽明の症状は軽症である。

從心下至少腹、鞭滿而痛、不可近者、大陷胸湯主之
心窩から少腹にかけて硬満し、
ひどくなると触れることもできなくなる。

本証は、強い太陽病結胸証と
やや軽い陽明腑病とが併存している。

治法は、仮に承気湯を用いると胃中の燥熱は排泄されるが
それでは胸腹部の水熱の邪が除かれない。
ここは大陥胸湯を用いて、
水熱互結の邪を瀉熱逐水するとともに

陽明の燥熱を瀉下泄熱するのが正しい治療法である。

大陥胸湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百三十二章・百三十三章・百三十四章

提要:
陽明腑証と大結胸証について。

訳:
太陽病に罹り、再三にわたって
発汗を反復し攻下を繰り返したため、

その結果五六日にわたって大便が出ず、
口が乾き舌が燥いて水を飲みたがり、

午後三時から五時の頃に軽い潮熱があり、
心下から少腹までの部位が硬く膨張して痛み、

手で触られるのを嫌う場合は、大陥胸湯で治療する。


百三十八章

小結胸、病正在心下、
按之則痛、脉浮滑者、小陷胸湯主之。

黄連一兩 半夏半升、洗 括蔞實大者一枚
右三味、以水六升、先煮括蔞、
取三升、去滓、内諸藥、煮取二升、去滓、分溫三服。

和訓:
小結胸病、正に心下に在り、之を按ずれば則ち痛み、
脉浮滑なるものは、小陥胸湯之を主る。
黄連一両 半夏半升、洗う 括楼実大なるもの一枚
右三味、水六升を以て、先ず括楼を煮て、三升を取り、滓を去り、
諸薬を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。


小結胸、病正在心下、按之則痛、脉浮滑者、小陷胸湯主之
小結胸証は邪熱が内陥し、
心窩で痰飲と結びついて形成されたもの。

その病邪の存在位置は
ちょうど心窩にあり(胃脘ー心窩部)であり、

影響範囲狭く、上は項背部まで至らず、下は少腹部まで及ばない。
疼痛も比較的軽く、手で按じて初めて痛みを感じるくらい。

大結胸証は、水飲と熱邪が胸腹部の奥深くで
結びつき形成されたものであるから脉は沈緊であり

心窩部の痛みは、手で按さえなくても痛むほどの強い痛みである。
(こちらを参照→【古医書】傷寒論:弁太陽病脈証并治(下)百三十五章・百三十六章

これに対して、小結胸証は痰飲と熱邪が心窩で結びついたので
部位も浅いから脉も浮滑となり、手で手で按じて初めて痛みを感じる。

小陥胸湯

 

黄連
黄連

黄連
基原:
キンポウゲ科のオウレン、
及びその他同属植物の根をほとんど除いた根茎。
以上は日本産である。
中国産は同属の川連・味連、雅連・峨眉連、
野黄連・鳳眉連、雲連などに由来する。

黄連は大苦大寒で、寒で清熱し苦で燥湿し、
心・胃・肝・胆の実火を清瀉し、
胃腸積滞の湿熱を除き、
清心除煩・消痞・止痢に働き、湿火欝結に対する主薬である。
それゆえ、心火熾盛の煩熱神昏・心煩不眠、
肝胆火昇の目赤腫痛・羞明流涙、
胃熱の清穀善飢、
腸胃湿熱の痞満嘔吐・腹痛泄瀉などの要薬である。
また、清熱泄火・解毒にも働くので、
疔毒癰腫・口舌潰瘍・湿瘡瘙痒および迫血妄行の吐血衄血にも有効である。

 

半夏
半夏

半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。

半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し
逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、
痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、
痰湿犯胃の咳喘・胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。

括楼実
基原:
ウリ科のシナカラスウリなどの果実の実。

括楼は甘寒潤降で、痰濁を下行させる特長があり、
上は肺胃の熱を清して滌痰導滞し
利気寛胸・散結にも働き、下は大腸を潤して通便し、
さらに消腫散結の効能を持つ。
それゆえ、痰熱咳嗽・胸痺・結胸・腸燥便秘および
肺癰・腸癰・乳癰などに適用する。

提要:
小結胸の証治について。

訳:
小結胸病の特徴は、病位はちょうど心下で、手で押さえてはじめて痛みを覚え、
脉象は浮滑、小陥胸湯で治療してよい。
黄連一両 半夏半升、洗う 括楼実大きいものを一個
右の三味は、六升の水で、まず括楼を、三升になるまで煮て、滓を除き、残りの諸薬を入れ、
二升になるまで更に煮て、滓を除き三回に分けて温服する。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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