ねこ / ペン・鉛筆
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こんにちは、為沢です。
なんとなく猫を描いてみました。動物描くのは楽しいです。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百三十二章・百三十三章・百三十四章。
百三十二章では、結胸証で脉浮大の時の攻下法の禁忌について。
百三十三章では、結胸証で煩躁が現れた者の治療の禁忌について。
百三十四章では、太陽病に誤って攻下法を行い、結胸証の変証が出現した場合について
それぞれ詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(下)百三十二章

結胸證、其脉浮大者、不可下、下之則死。

和訓:
結胸證、其の脉浮大なる者は、下すべからず、之を下せば則ち死す。


結胸證、其脉浮大者、不可下、下之則死
結胸証は裏で邪実となっているため、脉も沈緊を示しているはずである。
しかし三部の脉、どれも浮大であるということは、
表証では邪がまだ完全に解けず、裏証でも完全に邪実でないことが分かる。
従って、その治療法は、まず正気を壮めてから邪気を除いていくようにする。
このとき安易に大陥胸湯で攻下すれば、邪が除かれる以前に
正気が先に亡くなる恐れがあり生命が危くなるのである。

提要:
結胸証で脉浮大のときは、攻下法を行ってはいけない。

訳:
結胸証を病み、そして脉象が浮大である場合は、
攻下法で治療してはならず、誤って攻下を用いると死に至る場合がある。


百三十三章

結胸證悉具、煩躁者亦死。

和訓:
結胸証悉く具わり、煩躁するものも亦死す。


結胸證悉具、煩躁者亦死
結胸証が悉(ことごと)く出た。
症状を列記→心窩痛・按之石痛・心窩至少腹硬満而痛・不大便など
これらが一挙に現れるということは、邪がすでに深いところで結しており
邪実正虚の状態で病状としては極めて重く、生きるか死ぬかの境にある。
また、この状態で内に煩躁が生じれば、正気は持ち堪えられなくなる。
煩躁は、心気なく神無き状態であるため、治療はできなくなる。

提要:
結胸証で煩躁が現れた者の治療はできない。

訳:
結胸の諸証がすべて出現し、
その後さらに煩躁不穏の状態になれば、これは死証である。


百三十四章

太陽病、脉浮而動數、
浮則爲風、數則爲熱、動則爲痛、數則爲虛、
頭痛、發熱、微盗汗出、而反惡寒者、表未解也。
醫反下之、動數變遲、膈内拒痛、胃中空虛、客氣動陷、
短氣躁煩、心中懊憹、陽氣内陷、
心下因鞭、則爲結胸、大陷胸湯主之。

若不結胸、但頭汗出、餘處無汗、
劑頚而還、小便不利、身必發黃。

大陷胸湯。方二。
大黃六兩、去皮 芒硝一升 甘遂一銭匕
右三味、以水六升、先煮大黃取二升、去滓、
内芒硝、煮一両涌、内甘遂末、溫服一升得快利、止後服。

和訓:
太陽病、脉浮にして動数、浮は則ち風と為し、
数は則ち熱と為し、動は則ち痛みと為し、

数は則ち虚と為し、頭痛発熱し、微かに盗汗出で、
而るに反って悪寒するものは表未だ解せざるなり。

医反って之を下し、動数は遅に変じ、
膈内に拒痛し、胃中空虚に、客気は膈に動き、

短気躁煩、心中懊憹し、陽気内陥して、
心下因って鞭きは、則ち結胸と為し、大陥胸湯之を主る。

若し結胸せず、但だ頭に汗出で、余処に汗なく、
頸を剤えて還り、小便利せずんば、身必ず黃を発す。大陥胸湯。方二。
大黄六両、皮を去る 芒硝一升 甘遂一銭匕
右三味、水六升を以て、先ず大黃を煮て二升を取り、滓を去り、芒硝を内れ、
煮ること一両沸、甘遂末を内れ、一升を温服す。快利を得れば、後服を止む。


太陽病、脉浮而動數、
浮則爲風、數則爲熱、動則爲痛、數則爲虛

脉浮は風邪が表にあること。
動数は早くて急迫する脉で、熱証を示すので

この脉象は病人が表熱証であることを示す。
動脉は数脉の一種であり、
数に緊や滑、短を伴う脉象である。

動脉は、陰陽相搏・昇降失調・気血衝動により生じ、
痛証や驚証によくみられる。

頭痛、發熱、微盗汗出、而反惡寒者、表未解也
頭痛、発熱は表証を表しており、表の陽熱が一部裏に侵入し
その熱が表に外泄してくるので「微盗汗出」になっている。
表邪が完全に裏に入ったのではなく、一部は表に残っているので
一方で「悪寒」という表証もあるため「表未解也」になる。

醫反下之、動數變遲、膈内拒痛
表未だ解せずの状態であるのに、医者が誤って下法を用い
誤下の結果、表邪は胸郭中に内陥して水飲と結合し、
動数の脉は、邪気の凝結を反映する「遅脉」に変じる。

胃中空虛、客氣内陷
下法のために胃が空虚になり、
その虚に乗じて客気(外来の邪のこと)が胸中に入り込んでくる。

短氣躁煩、心中懊憹、
陽氣内陷、心下因鞭、則爲結胸、大陷胸湯主之

邪熱が胸中にあって気機が失調した場合、
呼吸が早く短くなって、気分が落ち着かず、
胸中に灼熱感があって苦しいといった症状を呈する。
ここでいう「陽氣」は表邪のことを指し、
その陽気は心下にまで陥ち込んで
胸中は邪に占領され心窩部も硬くなる、完全な結胸証である。
この場合は大陥胸湯で瀉下し、水飲を追いだしていくとよい。

若不結胸、但頭汗出、
餘處無汗、劑頚而還、小便不利、身必發黃

仮に結胸証とならず、
ただ頭部に汗をかくだけで、頚から下の部分は無汗で

小便の出が良くない等の症状をみる場合は、
邪が中焦に入って、三焦の気機に影響を与え、
これより湿と熱が合わさり

胆汁を正常なルートより
散溢させてしまったので、身体に発黄をみる。

結胸と発黄は水湿と関係が強い。
熱と水が凝結すれば結胸となり熱が水湿を蒸せば、黄疸となる。

大陥胸湯

 

大黄
大黄

大黃
基原:
タテ科のダイオウ属植物、
およびそれらの種間雑種の根茎。
しばしば根も利用される。

大黄は苦寒沈降し気味ともに厚く、
「走きて守らず」で下焦に直達し、
胃腸の積滞を蕩滌するので、

陽明腑実の熱結便秘・壮熱神昏に対する
要薬であり
攻積導滞し瀉熱通腸するため、

湿熱の瀉痢・裏急後重や食積の瀉痢・大便不爽にも有効である。
このほか、瀉下泄熱により血分実熱を清し
清熱瀉火・凉血解毒に働くので
血熱吐衄・目赤咽腫・癰腫瘡毒などの

上部実熱にも用い、
行瘀破積・活血通経の効能をもつために、

血瘀経閉・産後瘀阻・癥瘕積聚
跌打損傷にも適し、
湿熱を大便として排出し清化湿熱にも働くので、
湿熱内蘊の黄疸・水腫・結胸にも使用する。
外用すると清火消腫解毒の効果がある。

芒硝
基原:
天然の含水硫酸ナトリウムNa2 SO4・10H2O
または風化消Na2SO4・2H2O。

なお古来の芒硝は結晶硫酸マグネシウム MgSO4・7H2Oである。


芒硝は鹹渋・寒で、鹹で軟堅し苦で降下し寒で清熱し、
瀉熱通便・潤燥軟堅の効能をもち、胃腸三焦の実熱を蕩滌し燥屎を除去する。
それゆえ、実熱積聚の大便燥結・譫語発狂などを呈する陽明腑実証や、
陽明の熱が水飲と結した結胸に適する。
外用すると清熱消腫に働き、
癰腫瘡毒・目赤喉腫口瘡などに有効である。

 

甘遂
甘遂

甘遂
基原:
トウダイグサ科のトウダイグサ属植物の根。

甘遂は苦寒で、苦で降泄し寒で除熱し、
二便を通利して瀉水除湿する嵯薬であり、
また逐痰滌飲に働く。

主に水湿壅盛による
水腫腸満・二便不通の形症倶実の陽実水腫に用い

また痰飲積聚の癲癇痰涎壅盛にも使用する。
外用すると消腫散結の効能がある。

提要:
太陽病に誤って攻下法を行い、結胸証の変証が出現した場合について。

訳:
太陽病に罹り、脉象は浮でかつ動数である。
脉浮は風邪が表にあること、

脉数は熱があること、脉動は疼痛があること、
そして脉数は表虚の状態であることを表す。

頭痛発熱があり、軽い盗汗が出て、
また悪寒があれば、まだ表邪は解除されていない。

もし医者が誤ってこれを攻下法で治療すると、
動数の脉象は遅脉に変わり、

また胸膈が痛んで押さえられるのを嫌うようになる。
これは誤下によって胃中が空虚となったところへ、
外邪が胸膈に内陥しておこるものなので、

息切れして躁煩、心中懊憹(太陽病中篇・七十六章参照)して不穏となる。
また表邪が内陥しておこるものだから、
心下は堅く膨満して結胸証を形成するが、

これは大陥胸湯で治療すればよい。
もし結胸証に至らず、ただ頭部にだけ汗が出て、
頸項部以下およびその他の部位には汗がなく

そして尿利減少があれば、その患者の身体は必ず黃染するはずだ。
大陥胸湯。処方を記載。第二法。
大黄六両、皮を去る 芒硝一升 甘遂一銭匕
右の三味は、六升の水で、まず大黄を二升になるまで煮て、滓を除き、芒硝を入れ、少し煮たたせてから
甘遂末を入れ、温い状態で一升を服用する。すっきりと下痢したら、あとは服用しない。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

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是非参考文献を読んでみて下さい。

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