「内関」の穴性について学んでいきます。

< 要穴 >
○ 
手厥陰心包経 絡穴
○ 八脈交会穴 陰維脈


< 心包の生理と病理 >

心は胸中にある。
心包は心の外を包んで保護しており、心と同一体である。
温邪逆伝により心包が邪をうけておこる病証
心血液阻、疲火擾心、痰蒙心包、飲邪が心陽を抑止している病証、
情志失調や気機不暢によりおこる胃や肺の病変
はすべて本経の関連穴の治療範囲に入る。
また心、肺、胃と関係のある病証は、
それぞれ心、肺、胃経の関連穴およびその背兪穴を取って施治するとよい。

内関は、本経の経病、胃、心、心包絡の各疾患
情志失調、気機阻滞による臓脈、器官、肢体の病変を主治する。
本穴と間使との効果は類似しており、
ともに理気散滞・心絡を通暢する作用がある。


<治療範囲>

1. 絡脈病
『霊枢』経脈篇では、
「手心主の別、名づけて内関という。
腕より二寸去り、両筋の聞に出で、経を循り以って上り、心包絡に系する。
心系実すれば則ち心痛み、虚すれば則ち頭強ばる。
(甲乙経では煩心)これを両筋の聞に取る。」
と述べている。

邪気が盛んなため実しておこる心痛、
正気が虚しているためにおこる煩心の治療では本穴を取穴するとよい。

 

2. 神志病と血脈病
心は血脈を主り、また神明を主っている。
心包と心とは同一体であり、その気は互いに通じている。
心包は心の外膜であり、絡は膜外の気血の通路である。
心包は心臓が主っている経脈であり、心包の作用により心は邪から守られている。
心包が心に代わって邪をうけて病む仕組みになっている。
邪が心包を犯し、それが心臓に影響して現れる神志病や、
気が脈中に滞り心絡が瘀阻しておこる病証の治療に本穴を取ることができる。

 

3. 気機阻滞による病証
思い悩んだり、怒ったりして情志失調になると、気機阻滞の病変が現れる。
気滞により気機の昇降が失調すると気逆が起こることがある。
肺気上逆、胃気上逆、気滞脈絡、気滞による瘀などの病証、
また治療において、気血の大補、脾腎の温補、脾胃の補益などを行う際に
気機の通暢に影響をあたえることがある。
このような場合には、佐として本穴を瀉し理気散滞をはかるとよい。

 


4.経脈通路上の病証

経脈と絡脈の循行、経筋の分布といった要素を鑑みて、
内関はまた本経の経、絡脈が循行している
胸 脇 乳 腋窩 膈 中焦(とりわけ胃)、
上腕 前腕 手掌 指の疾患を治療することができるとされている。
「胸脇に若し病があれば,速やかに内関を謀る」
「胸中の病は内闘が担う」ともいわれている。
胸脇部の疾患に対しては、循経取穴を用いて通経活絡をはかったり、
弁証取穴により行気散滞をはかるとよい。

 

<臨床応用>
■ 気滞
肝鬱の邪気を瀉す場合に使う穴処ですが、
心気虚や心陽虚のものは絶対刺してはならない。
「心悸があったり、心臓の病には内関を刺せ」
とあるが、あまりやらない。
ごく軽い段階、気滞の段階で起こっているものは有効でしょうが、
心気虚や心陽虚、陽虚のキツイものはショックを起こす場合が多々ある。

肝鬱のひどい者に一気に気を引き下げる手法を取る場合があるが、心の代行をする。
手厥陰経の要穴を介して肝気に働きかける事が大きくあると思われる。
この手法は、心臓のポンプ作用に直接働きかけるため、
心気、心陽の弱りがある患者には用いてはならない。
置鍼時間にも充分な注意が必要である。


■ 心肝の熱を冷ます
「心臓の疾患に効く」と言うけれども、
ごく軽いものは良いが、心の陽気を取ってしまうから逆です。
心神を熱邪が襲うとか、痰湿が襲う場合なら、
内関の熱の側に鍼をすると非常に効果を上げます。

手厥陰心包経は、足厥陰肝経と上下関係にあり、
心神を支配すると同時に足厥陰肝経を支配します。
心肝火旺や肝鬱化火といった熱証、
心と肝の関わりで熱証を持ったものに有効です。
内熱⇨化火⇨生風 が慢性化すると、
陰虚内熱から内風が起こる場合があるので、
そういった場合に、内関に鍼をするとショックを起こす可能がある。


■ 精神疾患
肝鬱化火や脾胃の実熱が上を攻める場合など、
清熱瀉火というような働きを持っている。
肝鬱を取り除く、肝気を引き下げる、
清熱瀉火、安神作用を引き出すこともできる。


■ 咽喉の熱

咽頭部に陽明からの熱や、陽明の湿熱、陰虚によるところの内熱から咽喉部に熱が篭る場合。


■ 癲癇発作

心神に熱や痰湿が襲って起こす事もの。
実という前提の元にやらないと、
一部でも正気の弱りがあると心膈を傷つけて大変な状況になる。

 

 

臨床応用に見られるように、心・心包経の経穴はよく病因病機を鑑みて、状況に応じて用いるべきと改めて思いました。

次回は陰維脈について勉強していきます。

つづく

 

「十四経発揮」を勉強しながら模写しました

 


《参考文献》
『臨床経穴学』 著:李世珍
『穴性学ハンドブック』 著:佐藤弘 伴尚志
『図解・十四経発揮』 本間 祥白 著
『現代語訳・黄帝内経素問』  東洋学術出版
『現代語訳・黄帝内経霊枢』  東洋学術出版
『臓腑経絡学』 著:藤本蓮風
『経穴解説』 著:藤本蓮風

 

 

 

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