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こんにちは、為沢です。

今回は張景岳ちょうけいがくの『質疑録しつぎろく』の第十七章「論右腎爲命門」の其の二です。



和訓:
命門は兩腎の中に居して右に偏らず、即ち婦人の子宮の門戸なり。
子宮は腎臓の精を藏えるの府なり、当に関元、氣海の間は、
男精女血が皆な此に聚り、先天真一の氣と爲る、
所謂坎中の真陽なり、一身生化の原爲り。
此れ命門は兩腎の中間に在り、而して以て独り右に偏る可からず。
兩腎は水屬し、陰陽の分けて有り、命門は火に屬し、二陰の中に在り。
故に《脉経》は腎脉を以て兩尺に配す、
但し当に左尺は真陰を主り、右尺は真陽を主ると曰うべし、
而して命門は則ち陽氣の根爲り、三焦の相火に随う、
以て同じく右尺に見るとなすは則ち可なり、
若し左腎は則ち腎を主り、而して右腎は命門と爲すと謂えるは、
此れ千古の訛傳の弊なり、而して亟正せざるを得ざるの者なり。


・両命門は両腎の中央に存在しており右に偏ってなどいない。
その証拠に子宮の門戸は中央に存在している。

・子宮は腎臓が精を蔵えているその容器みたいなものであり、
子宮は関元穴、気海穴の下に存在し、
それらの経穴に男子の精気も女子の経血も集積されていて
先天真一の気のよりどころになっている。

・これは八卦の坎(水、北方を示す)中の真陽、
すなわち陰中の陽であり、身体を発育生長させる本源である。

・この命門は両腎の中央に位置し、右に偏っているとすべきではない。
両方の腎は水に属しており、その作用に陰陽の二面がある。
命門は火に属していて、二陰の間に存在する。

・『脈経』では腎脈を両側の尺脈に配置していて
左尺脈は真陰を主り、右尺脈は真陽を主るとしている。
そして命門は陽気の根本であるので、
三焦の相火とともに右の尺脈に配している。

・これは同意できることであるが
もし脈のことではなく、左腎が腎を主り、
右腎が命門だけを主るとする主張は
昔から伝わってきた誤った考え方であり、
訂正しないわけにはいかない。


原文:
命門居兩腎之中、而不偏於右、即婦人子宮之門戸也。
子宮者、腎臓藏精之府也、当関元、氣海之間、
男精女血皆聚于此、爲先天真一之氣、
所謂坎中之真陽、爲一身生化之原。
此命門在兩腎中間、而不可以独偏于右。
兩腎屬水、有陰陽之分、命門屬火、在二陰之中。
故《脉経》以腎脉配兩尺、但当曰左尺主真陰、右尺主真陽、
而命门則爲陽氣之根、随三焦相火、以同見于右尺則可、
若謂左腎則主于腎、而右腎偏爲命門、
此千古訛傳之弊、而不得不亟正之者也。


参考文献:
『中国医典 質疑録』 緑書房
『格致餘論注釈』医聖社
『中国医学の歴史』 東洋学術出版社
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社
『宋本傷寒論』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・素問』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・霊枢』東洋学術出版社
『校釈 諸病源候論』緑書房
『景岳全書』台聯國風出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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