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こんにちは、大原です。
前回につづいて
金匱要略 痙湿暍けいしつえつやまい脈証治みゃくしょうとち(第2)の条文をみていきましょう。
ここからは湿の病についてです。
前回の記事:金匱要略 痙湿暍病脈証治(第2)②

<条文2-15>
太陽病。關節疼痛而煩。脉沈而細者。
此名濕痺。濕痺之候。小便不利。大便反快。但當利其小便。

(太陽病。関節疼痛して煩し、脉沈にして細なる者、
これを湿痺(しっぴ)と名づく。湿痺の候は小便利せず、大便反って快し。
ただ当(まさ)にその小便を利すべし。)

はじめに「太陽病」とあるが、
太陽病に病状が似ているということであり、
本当は太陽病ではない。
太陽病であれば脈は浮でなければなたないが、沈にして細となっている。
「湿痺」とは水毒のために気のめぐりが悪くなって起こる病気である。
小便が出なくてかえって大便の方は気持ち良く出る。
そのため、このようなときには「小便を利すべし」という。

<条文2-16>
濕家之爲病。一身盡疼。發熱。身色如熏黄也。
(湿家の病たる、一身尽(ことごと)く疼(いた)み。
発熱し、身の色、薫黄(くんおう)の如きなり。)

熱が出て、「薫黄(くんおう)の如き」とは、くすぶったように黄色いということで、
黄疸を呈している。湿熱がたまっているために黄疸がおこる。

<条文2-17>
濕家。其人但頭汗出。背強。欲得被覆向火。
若下之早則噦。或胸滿。小便不利。舌上如胎者。
以丹田有熱。胸上有寒。渇欲得飮。而不能飮。則口燥煩也。

(湿家、その人、ただ頭汗(ずかん)出(い)で、背強ばり、
被覆して火に向かうことを得んと欲す。
もしこれを下すこと早ければすなわち噦(えっ)す。
或(あるい)は胸満、小便利せず、
舌上胎の如き者は、丹田熱あり、胸上寒あるを以てなり。
渇して飲をむことを得んと欲して飲むことあたわず。
則ち口燥煩するなり。)

水毒のある人が、頭の方からだけ汗を出している。
『傷寒論』で陽明病の条文に、
頭汗を呈したときには茵蔯蒿湯を用いるとあり、参考になる。

(<傷寒論 条文236条>については下に解説があります。)

そして背中が凝り、
着物をきていてそれでもまだ寒いから火に向かって体を温めるというときに、

医者が誤って下法を用いると、しゃっくりが出たり、
あるいは胸がいっぱいになって、小便が出なくなり、舌に苔がついてくる。

丹田に熱があるとは臍下に熱がある。
胸の上に寒があるということで、

下熱上寒である。咽が渇いて飲みたいが、
湿邪があるため飲めず、口が渇いて煩する。

————–参考:<傷寒論 条文236条>————–
「陽明病、発熱、汗出、此為熱越、不能発黄也。
但頭汗出、身無汗、劑頸而還、小便不利、
渇引水漿者、此為瘀熱在裏、身必発黄、茵蔯蒿湯主之。」

(陽明病、発熱し、汗出づるは、これ熱越(ねつえつ)と為す。
黄を発することあたわざるなり。

ただ頭のみ汗出で、身に汗無く、
頸を剤(かぎ)りて還(かえ)り、小便不利、

渇して水漿を引く者は、此れ瘀熱裏に在りと為す。
身必ず黄を発す。茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)之を主る。)

発熱して汗が出れば「熱越」となり、
熱が体外に排泄されるために黄疸になることはない。

頭からは汗をかくが体から汗が出ず、
小便も出ずに、湿熱が排泄されなければ裏に湿熱が停滞する。

水漿とは水や水のような飲み物で、
瘀熱とは邪熱が裏に鬱滞している状態をいう。
津液が正常に運ばれず、瘀熱があるために渇して水が飲みたくなる。
茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)は、
これらの瘀熱、湿邪を排泄させることで
黄疸を除く。
——————————————————–

<条文2-18>
濕家下之。額上汗出。微喘。小便利者死。若下利不止者亦死。
(湿家これを下し、額上汗出でて微喘し、小便利する者は死す。
もし下利(げり)止まず者もまた死す。)

湿邪の病人に誤って下法を用いて、
額に汗が出て、呼吸が乱れて喘息があり、小便が止まらず多く出る場合は死ぬ。
もし下痢の止まないものも、ともに体液が消耗して死に至る。

続きます。

夜の梅田の空
夜の梅田の空

<参考文献>
『金匱要略講話』 創元社
『金匱要略も読もう』 東洋学術出版社
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。

大原

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