下野です。

神峯山寺にて
神峯山寺にて

早いもので今年もあと僅か。
やりたいことは山ほどあるのですが、
また来年まで持ち越しになりそうです。

では『万病回春』の記事に参ります。


【原文】
寒者、天地殺癘之気也。
傷寒者、身熱無汗悪寒也。
傷風者、身熱有汗悪風也。
太陽則頭疼身熱脊強也。
陽明則目頭鼻乾不眠也。
少陽則耳聾脅痛寒熱嘔而口苦也。
太陰則腹満自利尺寸沈而津不到咽也。
少陰則舌乾而口燥也。
厥陰則煩満而囊拳也。

表熱者、翕然而熱也。
裏熱者、蒸蒸而熱也。
項背強者、太陽表邪也。
悪風者、見風則怯也。
発熱悪寒者、発於陽也。
無熱悪寒者、発於陰也。
寒熱往来者、陰陽相勝也。
煎厥者、気熱煩労也。
薄厥者、気逆太甚也。
解●者脊脈痛少気不欲言也、
四肢不収者脾病也。
肉痿者、肌肉不仁也。
肉蠕動者、脾熱也。

五飲者、支飲、留飲、痰飲、溢飲、懸飲也。
五泄者、脾泄、胃泄、大腸泄、小腸泄、大瘕泄也。
又有飱泄、腎泄、濡騖溏之類。
脾泄者、腹脹嘔逆也。
胃泄者、飲食不化也。
大腸泄者、食巳窘迫也。
小腸泄者、溲便濃血也。
大瘕泄者、裏急後重也。
騖溏泄者、大腸有寒也。
腸垢者、大腸有熱也。
飱泄者、食不化脾病也。
脾約者、大便堅而小便利也。

五膈者、憂恚寒気也。
五噎者、憂思勞食気也。
九気者、喜怒憂思悲恐驚勞暑也。
五積者、五臟之所生也。
六聚者、六腑之所成也。
肝積在左脇、肥気也。
脾積在右脇、息奔也。
心積在臍上、伏梁也。
腎積在臍下、奔豚也。
脾積居中、痞氣也。

<第十七に続く>


【現代語訳・解説】
寒は天地殺癘の気である。
傷寒は、身熱・無汗で悪寒がする。
傷風は、身熱・発汗があり悪風がする。
太陽の主症状は、頭痛・身熱・背中の強張り。
陽明の主症状は、眼痛・鼻の乾燥・眠る事が出来ず。
少陽の主症状は、耳聾・脇痛・寒熱往来・口苦。
太陰の主症状は、腹満・自利・尺寸が沈・咽渇。
少陰の主症状は、舌乾・口燥。
厥陰の主症状は、煩満・囊拳(苦しい)。

表熱は、翕然として熱す。
裏熱は、蒸蒸として熱す。
項背が強張るものは、太陽の表邪である。
悪風は風をおそれる。
発熱悪寒は陽に発し、
熱なくただ悪寒するは陰に発す。
寒熱往来は、陰陽相勝つである。
煎厥は、気熱煩労であり、
薄厥は、気逆が甚だしいことである。
解エキは、脊脈が痛み、
気が少なく、言うことを欲さず。
四肢が収まらないものは脾病である。
肉痿とは、肌肉の麻痺である。
肉蠕動は、脾熱である。

五飲とは、支飲、留飲、痰飲、溢飲、懸飲也である。
五泄とは、脾泄、胃泄、大腸泄、小腸泄、大瘕泄である。
有飱泄、腎泄、濡騖溏の類もある。
脾泄は、
腹が脹って突然下し、飲食物が入ると直ぐに嘔吐する。
胃泄は、飲食物が消化不良の状態で排泄される。
大腸泄は、
食事後に腹が急にさしこむような痛みで便意をもよおす。
小腸泄は、小便に濃血がある。
大瘕泄は、腹中がひきつれて痛む。
騖溏泄は、大腸に寒がある。
腸垢は、大腸に熱がる。
飱泄は、消化不良の脾病である。
脾約は、大便は堅く小便利す。

五膈は、憂、恚、寒、熱、気である。
五噎は、憂、思、勞、食、気である。
九気は、
喜、怒、憂、思、悲、恐、驚、勞、暑である。
五積は、五臓が生み出したものであり、
六聚は、六腑が生み出したのである。
肝積は左脇に在り、肥気である。
肺積は右脇にあり、息奔である。
心積は臍上に在り、伏梁である。
腎積は臍下に在り、奔豚である。
脾積は中在り、痞気である。
———————————————————————————
先ず目に入ってくるのが
『傷寒論』を引用した文であるが、
原典とは多少異なっている。

以下に簡潔ではあるが、
傷寒論に記載されいる主症状を挙げていきます。

◉太陽病
悪寒・発熱・頭痛・項の強張り・脈浮など。

◉陽明病
悪寒のない熱・口渇・腹満疼痛で拒按・大便秘結など。

◉少陽病
寒熱往来・胸脇苦満・食欲がない・口苦・咽乾・目眩など。

◉太陰病
下痢・嘔吐・腹満疼痛で温めると気持ちが良いなど。

◉少陰病
四肢厥冷・不消化の下痢、ただ寝ていたい・脈微細など。

◉厥陰病
寒熱錯綜・消渇・胸心疼熱、腹は空くが食欲がない・嘔吐など。


また最後に出てくる「積聚」に関して、
『難経』では臓と腑以外の区別方法を記載している。

「積者、陰気也、聚者、陽気也。
故陰沈而伏、陽浮而動。
気之所積名曰積、気之所聚名曰聚。
故積者五蔵所生、聚者六府所成也。
積者、陰気也、其始発有常処、其痛不離其部、
上下有所終始、左右有所窮処。
聚者、陽気也、其始発無根本、上下無所留止、
其痛無常処、謂之聚。」

積は陰に属し、聚は陽に属す。
陰のものは沈んで伏し、陽のものは浮かんで動く。
有形の気が積もり留まって出来たものが積であり、
無形の気が合わさり聚まって出来たものが聚である。
故に積は五臓が生み出し、聚は六腑が生み出したのである。
積は陰に属し、決まった場所に発生し、痛みはその臓から離れず
上下左右の境が明確である。
反対に、聚は陽に属し、発生場所は決まっておらず、
痛む場所も決まっていない。
これらのことから、積と聚を鑑別することが出来るのである。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『難経解説』 東洋学術出版社
『中医学の基礎』 東洋学術出版社
『中国傷寒論解説』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経素問 中巻』 東洋学術出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here