箕面観光ホテル
箕面観光ホテル(撮影:為沢)

こんにちは、為沢です。
画像に見えますは、箕面山の斜面にそびえ建つ「箕面観光ホテル」で御座います。
昔 この建物が遠くから見える位置に住んでまして、普段何気なく見て育ってました。
この間 ふと思い立って見に行ってみたのですが、
緑豊かな箕面山に佇むコンクリートの要塞という感覚でしょうか。迫力がありました(^_^)
遠くで見るのと間近で見てみるのでは違うものですね。

調べてみると、西澤文隆氏という建築家さんの設計で 築45年にもなるそうです。
時間が経たないと出ない 味わい深い建物が個人的に好きなのですが、
この建物にも同じそれを感じた気がします。大阪の近代建築物で好きな建物の一つです。
他にも古い建物探訪したら、ここで御紹介しようかと思います。


では、ここから張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)百十二章と百十三章。
百十二章では、傷寒証で火法を行い、心陽を暴脱させた場合の証治について。
百十三章では、温病で脉弱にして
口渇・発熱があるものには火療による発汗は禁忌と述べている。


弁太陽病脈証并治(中)百十二章

傷寒脉浮、医以火迫劫之、亡陽必驚狂、臥起不安者、
桂枝去芍藥加蜀漆牡蠣竜骨救逆湯主之。方六十。

桂枝三兩、去皮 甘草二兩、炙生薑三兩、切
大棗十二枚、擘牡蠣五兩、熬 蜀漆三兩、洗去腥竜骨四両
右七味、以水一斗二升、先煮蜀漆、減二升、内諸藥、
煮取三升、去滓、溫服一升。本云、桂枝湯今去芍藥加蜀漆牡蠣竜骨。

和訓:
傷寒脉浮に、医火を以て迫り之を劫かせば、
亡陽して必ず驚狂し、臥起安かざるものは、
桂枝去芍藥加蜀漆牡蠣竜骨救逆湯之を主る。方六十。
桂枝三兩、去皮甘草二兩、炙 生薑三兩、切
大棗十二枚、擘 牡蠣五兩、熬 蜀漆三兩、洗去腥竜骨四両

右七味、水一斗二升を以て、先ず蜀漆を煮て、二升に減じ、諸藥を内れ、
煮て三升を取り、滓を去り、一升を溫服す。
本に云う、桂枝湯今芍藥を去り蜀漆牡蠣竜骨を加うと。


傷寒脉浮、医以火迫劫之
傷寒証で火法により強引に大汗をかかせた。

亡陽必驚狂、臥起不安者
汗は心の液で、汗をかかせ過ぎると徒らに心陽を傷つけ、
心気を虚させてしまうのでよく驚くようになる。
火邪が神明を狂わせると、
精神に障害を来たすようになり
具体的には寝ても起きても不安になって落ちつかなくなってしまう。

桂枝去芍藥加蜀漆牡蠣竜骨救逆湯主之
この場合、桂枝去芍藥加蜀漆牡蠣竜骨救逆湯が主治する。

桂枝去芍藥加蜀漆牡蠣竜骨救逆湯
方義

桂枝
桂枝

桂枝
基原:
クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得て
はじめて化し、通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。

甘草
甘草

甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。

生薑
生薑

生薑
基原:ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を
乾生姜ということもあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ
風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。

大棗
大棗

大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。またはその品種の果実。

甘温で柔であり、
補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、
大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、
営衛を調和することができる。

牡蠣
牡蠣

牡蠣
基原:イタボガキ科のマガキ、
その他同属動物の貝殻、通常は左殻が利用される。
牡蠣は鹹渋・微寒で重く、
益陰清熱・潜陽鎮驚の効能をもち、
鹹渋で軟堅散結・収斂固渋にも働く。
熱病傷陰の虚風内動・肝陰不足の肝陽上亢・
驚狂煩燥・心悸失眠・自汗盗汗・遺精崩帯・
久瀉不止・瘰癧痰核・肝脾腫大などに有効である。
このほか、煅用すると胃痛吐酸に対し止痛止酸の効果がある。

蜀漆
ジョウザンアジサイの若い枝葉、甜茶ともいう。
常山と同様であるが、涌吐の効力が強い。

竜骨『中医臨床のための中薬学』より
竜骨『中医臨床のための中薬学』より

竜骨
基原:古代(おもに新生代)も大型哺乳動物の化石。
種々の原動物が知られ、おもなゾウ類のstegodon orientalis (owen)
サイ類のRhinoceros sinensis Owen、ウマ類のHipparion sp.、
シカ・ウシ類のGazella gaudryi Schl.などがある。
竜骨は甘渋で重く、重で鎮心し渋で固脱し、浮陽を潜沈する。
驚狂煩燥・心悸失眠多夢には重鎮安神に、自汗盗汗・遺精滑精
小便不禁・久瀉久痢・便血・婦女滞下不止には収斂固脱に、
陰虚陽亢の頭暈目眩に対しては平肝潜陽に働く。
このほか、外用すると吸湿・止血・生肌斂瘡に働く。

提要:
傷寒証で火法を行い、心陽を暴脱させた場合の証治について。

訳:
傷寒に罹って脉象が脉となっているものを、火療で無理やり発汗させると、
心陽を損傷し、その結果、患者は驚惕(びっくりして不安)狂乱し、
起居不穏の状態になるが、これは桂枝去芍藥加蜀漆牡蠣竜骨救逆湯で治療する。処方を記載。第六十法。

桂枝三兩、皮を去る甘草二兩、炙る生薑三兩、切る
大棗十二枚、裂く 牡蠣五兩、焙る 蜀漆三兩、洗ってなまぐささを除く 竜骨四両

右の七味は、一斗二升の水で、先に蜀漆を(水が)二升減るまで煮て、その後残りの諸薬を入れ、
三升になるまで煮て、滓を除き、一升を溫服する。別本には、桂枝湯から芍藥を去り蜀漆牡蠣竜骨を加えるとある。


弁太陽病脈証并治(中)百十三章

形作傷寒、其脉不弦緊而弱。弱者必渇、被火必譫語。
弱者發熱脉浮、解之当汗出愈。

和訓:
形傷寒を作し、其の脉弦緊ならずして弱なり。
弱なるものは必ず渇し、火を被れば必ず譫語す。
弱なるものは發熱して脉浮、之を解するに当に汗出でて愈ゆべし。


形作傷寒、其脉不弦緊而弱
「形作傷寒」とは頭痛、発熱、悪寒、身疼痛、無汗などの症状を指し、
脈は浮緊で有力の場合をいう。
弦脈は上下にビーンと張ったような脈で、緊脈は緊張感のある強い脈をいう。
脈弦緊はどちらも傷寒表実証に属す症状であるが、今は弦緊ではなく弱脈を示している。
これは陰の津血が虚して不足している状態を示す脈であるから、
たとえ傷寒証であっても裏では熱化し、実となっていることがわかる。

弱者必渇、被火必譫語
熱化しているため、口渇がある。
この時火法を用いれば、その火が胃熱を助け傷津・化燥の実となるので
必ず譫語を発するようになる。

弱者發熱脉浮、解之当汗出愈
いま表熱が盛んになり、弱脈の中に浮脈をみるようになれば
邪気は表にあって、表を解いていくべき時期であるから、
「解之当汗出愈」と書いている。
この「解之」は病を汗法で解いていくときに、津が虚して内熱があるので
過汗させてはいけないことを説いている。

提要:
温病で脉弱にして口渇・発熱があるものには火療による発汗は禁忌と述べている。

訳:
傷寒に類似した病証が現れているが、脉は弦緊ではなくて軟弱である。
脉が軟弱の場合は口渇して発熱する。これを火療法で発汗させると、
必ずや譫語を言うようになる。本証のような脉弱で発熱するものや
口渇して脉浮のものは、辛味の薬で発汗すれば癒える。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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