どうも、新川です。

前回掲載の『茶を喫す』の際に訪れた宇治での写真を公開します。


(左)宇治川の川辺に堂々と立つクヌギの大木です
近くの看板には樹齢150年と書かれていましたが、
看板自体が古いので、もう少し年を重ねているかもしれません。

(右)この日の宇治川は水の流れが速く、
水面が荒々しくうごめいておりました。


今回は、皮部論篇について綴って参ります。
本来ならここにまとめてある以上の内容がありますが、
なるべく分かりやすくするため、
一部を抜粋して表現させて頂いております。


【皮部論篇 五十六】

 

【原文】
黄帝問曰、余聞皮有分部、脈有経紀、筋有結絡、骨有度量。
其所生病各異。別其分部、左右上下、陰陽所在、病之始終、願聞其道。
岐伯対曰、欲知皮部、以経脈為紀者。諸経皆然。

陽明之陽、名曰害蜚。上下同法、視其部中有浮絡者、皆陽明之絡也。其色多青則痛、多黒則痺、黄赤則熱、多白則寒。
五色皆見、則寒熱也。絡盛則入客於経。陽主外、陰主内。
少陽之陽、名曰枢持。上下同法、視其部中有浮絡者、皆少陽之絡也。
絡盛則入客於経。故在陽者主内、在陰者主出以滲於内。諸経皆然。
太陽之陽、名曰関枢。上下同法、視其部中有浮絡者、皆太陽之絡也。絡盛則入客於経。

少陰之陰、名曰枢儒。上下同法、視其部中有浮絡者、皆少陰之絡也。絡盛則入客於経。
其入経也、従陽部注於経。其出者、従陰内注於骨。
心主之陰、名曰害肩。上下同法、視其部中有浮絡者、皆心主之絡也。絡盛則入客於経。
太陰之陰、名曰関蟄。上下同法、視其部中有浮絡者、皆太陰之絡也。絡盛則入客於経。
凡十二経絡脈者、皮之部也。

是故百病之始生也、必先於皮毛。邪中之則腠理開、開則入客於絡脈。
留而不去、伝入於経。留而不去、伝入於府、廩於腸胃。
邪之始入於皮也、泝然起毫毛、開腠理。其入於絡也、則絡脈盛色変。其入客於経也、則感虚乃陥下。
其留於筋骨之間、寒多則筋攣骨痛、熱多則筋弛骨消、肉爍[月囷]破、毛直而敗。

帝曰、夫子言皮之十二部。其生病皆何如。
岐伯曰、皮者、脈之部也。邪客於皮、則腠理開、開則邪入客於絡脈。
絡脈満則注於経脈。経脈満則入舍於府蔵也。故皮者有分部。不与而生大病也。
帝曰、善。


☆皮膚と十二経脈との関係

黄帝が問う。
「私は
・皮膚の上に十二経脈にそれぞれ分かれて属する部位があること
・脈絡の分布に縦行と横行との別があること
・筋に結び目とつながりがあること
・骨に大小長短があること
・その生ずる疾病がそれぞれ同じでないこと
を聞いている。

今、皮膚の分部の上で、左右上下、陰陽の所在を区別し、
疾病の始まりと予後に及びたい。
こうした道理についてどうか聞かせてほしい。」

岐伯が答える。
※1皮膚の分部
について知ろうとするなら、
経脈の循行部位をその手がかりとします。
どの経もみなそうです。」

※1皮膚の分部
→張景岳 の説
「人の身体の皮膚外表には、
上下前後各おの部位があることをいっている。」

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「●陽明経の陽絡は※2害蜚とよびます。
手と足の陽明経いずれも同じであり、
その上下の分部中を観察した時、
そこにある※3浮絡は、すべて陽明経の絡脈に属します。
この浮絡に
・青色が多い→痛を病む
・黒色が多い→痺を病む
・黄と赤が多い→熱を病む
・白が多い→寒を病む

もし五種の色すべてが現れていれば、
これは寒熱を兼ねた病です。

絡の邪気が盛んだと、その本絡に内伝します。
絡は陽に属して外を主り、経は陰に属して内を主ります。

※2害蜚〔ガイヒ〕
→万物の成長を損なうという意味。
張景岳の説 「蜚は昔の『飛』の字である。
蜚とは、飛揚することで、陽が盛んで浮くことをいう。
すべて盛んとなって極まったものは必ず損なわれる。
そこで陽が盛んとなるのも陽明経においてであるし、
陽が損なわれるのも陽明経においてということになるので、
陽明の陽を名づけて害蜚というのである。」

※3浮絡
→体表の浅い所に在る絡脈のこと。
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●少陽経の陽絡を※4枢持とよびます。
手と足の少陽経いずれも同様であり、
上下の分部中を観察した時、
そこにある浮絡は、すべて少陽経の絡脈に属します。
もし絡の邪が盛んだと、その本経に内伝します。
そこで陽分の邪は、内伝して経に入り、
陰分の邪は、経から出て内蔵に滲み入ります。
どの経もみなこのようです。

※4枢持
→張景岳 の説
「枢とは枢機である。持とは支え持つこと。
少陽は三陽中において表裏の間に在り、
枢〔とぼそ〕が運るように、
その〔三陽の〕出入の働きを支え持っているので、
枢持という。」
これは、少陽経が出入りの重要な働きの鍵を握っているということである。
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●太陽経の陽絡を※5関枢とよびます。
手太陽経と足太陽経いずれも同様であり、
上下の分部中を観察した時、
そこにある浮絡は、すべて太陽経の絡脈に属します。
絡に在る邪気が盛んなのを瀉さないでいると、
本経に内伝してしまいます。」

※5関枢
→呉崑の説
「関とは固め守ること。
少陽は、枢であり陽気を運びめぐらせる。
太陽は、しばりつけてその運びめぐらされる陽を固め守るので、
関枢という。」
これは太陽経が、
少陽経の出入りを主る働きを固め保持していることをいう。
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「●少陰経の陰絡を『※6枢儒』とよびます。
手の少陰と足の少陰いずれも同様で、
上下の分部を観察した時、
そこにある浮絡は、すべて少陰経の絡脈に属します。
もし絡脈中の邪気が盛んとなれば、
その本経に内伝してしまいます。
その邪気が経脈に伝わり入る際には、
まず陽たる絡脈から経脈に入り、
その後に陰たる経脈から出て内側に向かい、骨に注ぐのです。

※6枢儒
→儒は『説文』に「柔らかいこと」という。
『新校正』の引く『甲乙経』には「檽」に作っている。
張景岳 の説
「少陰は三陰経の開闔〔開閉〕の要であり、
かつ陰気は柔順なので名づけて枢儒という。」
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●厥陰経の陰絡を※7害肩とよびます。
手厥陰と足厥陰いずれも同様で、
上下の分部を観察した時、
そこにある浮絡は、すべて厥陰経の絡脈に属しています。
もし絡脈中の邪気が盛んだと、本絡に内伝します。

※7害肩
→張景岳の説
「肩とは任せること、載せること。
陽は運ることを主り、陰は載せることを主る。
陰盛の極では、その気は必ず傷われる。
この陰の盛は厥陰においてであり、
陰が傷われるのも、また厥陰においてである。
そこで害肩というのである。」
これは害蜚の意味と同様である。
前〔の害蜚〕では陽の極が万物を損なうことをいい、
ここでは陰の極が万物を損なうことをいっている。
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●太陰経の陰絡を※8関蟄とよびます。
手太陰と足太陰いずれも同様で、上下の分部を観察した時、
そこにある浮絡は、すべて太陰経の絡脈に属します。
もし絡脈中の邪気が盛んなら、本経に内伝します。
こうして以上の十二経の絡脈は、すべて皮膚の各おのの分部に分かれて所属するのです。」

※8関蟄
→張景岳 の説
「関とは外を固く守ること。
蟄は中に伏しこもること。
陰は蔵めることを主るが、
太陰はこれを守るので関蟄という。」
太陰が閉蔵されている陰気をしばりつけ固めて、
外に泄れないようにしていることをいう。」
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「こうしたわけで、百病〔さまざまな病気〕が発生するのは、
まず皮毛から始まるのです。

●病邪が皮毛を襲うと腠理〔肌のきめ〕が開き、
腠理が開くと邪は侵入して絡脈に客します。
→そこに留まったまま去らないと、経脈に内伝
→さらに留まったまま去らないと、
伝わって府に入り腸胃に集まり積もる

・病邪が皮毛に入り始めると、人に悪寒を起こさせ、
毫毛は堅く直立し、腠理は開いて〔体内の気を〕泄らしてしまいます。
・病邪が絡脈に侵入すると、絡脈を満ちあふれさせ、その色を変えてしまいます。
・病邪が経脈に侵入するときには、経気がまず虚となって病邪の陥入を招きます。
・病邪が筋骨の間に滞っていた場合は、
寒気が盛んだと、筋が攣れ骨が痛むことになり、
熱気が盛んだと、筋骨が痿えて弱くなって、
皮肉がくずれこわれ、毛髪は干からびてしまいます。」

黄帝がいう。
「あなたは皮の十二部について説かれたのだが、
その〔分部を出発点として〕生ずる病変についてはどうなのか。」
岐伯がいう。
「皮の上は、いずれも絡脈が分布している部分です。
邪気が皮膚を襲うと腠理が開いて〔気を〕泄らすと、
邪気が絡脈に侵入します。
絡脈が満ちあふれると、内伝して経脈に入ります。
経脈が満ちあふれると、また内伝して蔵府に伝わります。
そこで皮の上には十二経の分布がありますが、
病変を見て前もって治療しないと、
邪気が蔵府に内伝して、人に大病を起こさせるのです。」
黄帝がいう。
「よくわかった。」

→外邪が人体に侵入した後の、体表から体内へという経路について指摘し、
さらに邪が体表浅くあるときに早めに治療すべきで、
さもないと邪気が蔵府に内伝して、重い大病を引き起こすことについて説明している。

 


参考文献:
『黄帝内経素問 中巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『鍼灸医学事典』 医道の日本社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

新川

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