どうも、新川です。

最近、古本屋へ行った際、
懐かしい本に出会ったので、
購入してみました。

『李陵・山月記』新潮文庫
『李陵・山月記』新潮文庫

改めて読んでみますと、
漢文調のリズムが心地よく感じます。
李陵、山月記の他に数話収録されておりますが、
なかでも『名人伝』の過剰なまでに自分の道を突き進む主人公の姿が印象的です。
ワクワクしてしまいます。


今回は、鍼解篇について綴って参ります。
本来ならここにまとめてある以上の内容がありますが、
なるべく分かりやすくするため、
一部を抜粋して表現させて頂いております。


【鍼解篇 五十四】

【瀉鍼手法と補鍼手法】
実症を刺すには瀉法を用いなくてはなりません。
刺鍼後に留鍼して、陰気が盛んになり、
鍼下に爽涼感があらわれるのを待ち、その後で抜鍼します。

虚症を刺すには補を用いなくてはなりません。
陽気が盛んになって、鍼下に温暖の感覚が現れるのを待って、その後で抜鍼します。

もしもすでに経気が得られたならば、
慎重に対処し、時機を失することなく、
自由に手法を変えて行かなくてはなりません。

疾病が内に在るか外に在るかによって、
刺の深浅を考慮しなくてはいけません。

病が深ければ深刺し、浅ければ浅刺します。
刺鍼に深浅の差はありますが、
気が至るのを候う方法はすべて同様です。

※虚実の証候に基づいて、
『虚すれば則ちこれを補し、実すれば則ちこれを瀉す』
の原則に従って治療を行う。

【術者の心構え】
刺鍼に際しては、深淵に臨んだような気持ちと、
落下を恐れるような慎重細心の注意が必要です。
鍼を持つには虎を握ると同じようなしっかりした力が必要です。
冷静な頭脳で病人を観察し、精神を病人の身体に集中し、
決して右顧左眄
【右か左か決めかねて迷うように、人の思惑などまわりのことばかり気にして決断をためらうこと。】
してはなりません。
鍼を下すときは正確でなくてはならず、偏ってはいけません。
刺入後は、必ず病人の両眼を注視し、病人の精神を制御し、
経気が動き易いようにしなくてはなりません。
このようにすればかなり大きい効果が得られます。

【九鍼】
黄帝がいう。
「私は、
九鍼と天地・四時・陰陽とは、
相い応じたものであると聞いている。
どうかこの原理を説明してもらいたい。
これを後世に伝えて、治病の常規にしたいと思っている。」

岐伯がいう。
「一は天、二は地、三は人、四は時、五は音、
六は律、七は星、八は風、九は野で、
人の形体もまた自然と対応しており、
鍼の様式も各種の異なった症状に適応して作られています。
それで九鍼と名づけられたのです。

人の皮膚は外側に在り、
全身を庇護している状態は、ちょうど天が万物を覆っているのと同じです。
人に動静があるのは、〔人の〕脈搏に盛衰があるのと同じです。
人の筋(腱や筋膜に相当する)は全身をくくりたばねていて、
各部分の機能はそれぞれ違っていますが、
これはちょうど四季の気候がそれぞれ異なっているのに似ています。
人の発声は、五音〔角、微、宮、商、羽〕と相応しています。
人体の五蔵六府の陰陽の機能が相互に協調している状態は、
六律〔黄鐘、大簇、姑洗、蕤賓、夷則、無射〕
六呂〔夾鐘、仲呂、林鐘、南呂、応鐘、大呂〕
の音律の高低に節があるのと同じです。
人の顔面の目の位置や歯の配列は、
天上の星辰に似ています。
人の呼気と吸気は、ちょうど自然界の風と同じです。
九竅〔目、耳、鼻の各二つと、口および肛門、尿道口〕
と三百六十五絡は、全身に分布していて、
あたかも地上の百川万水が、九野を縦横に灌漑している状態のようです。

このようなわけで、
一(鑱)鍼は皮を刺し、二(員)鍼は肉を刺し、三(鍉)鍼は脈を刺し、
四(鋒)鍼は筋を刺し、五(鈹)鍼は骨を刺し、六(員利)鍼は陰陽気血を調和し、
七(毫)鍼は精気を補益し、八(長)鍼は風邪を駆除し、九(大)鍼は九竅を疎通し、
全身三百六十五骨節の間の邪気を駆除します。

 

九鍼 『鍼灸医学事典』より
九鍼 『鍼灸医学事典』より

これは症候と病変部位の差によって、
それぞれ選択して用いることを述べています。
人の意志は様々に変わり、
これは自然界の八風が変化して無常なのと同じです。
人身の正気は休むことなく運行していますが、
これは自然界の変化生成がやむことがないのと同じです。
髪や歯の生長、耳目の聡明、音声の清濁など、
機能はそれぞれ異なっていますが、
すべて整然と行われているのは、
五音六律にすじみちがあってみだれないのと同じです。
人身の気血が陰陽の経脈の中を運行しているのは、
地上の河川の水が貫流してやまないのと同じです。
肝の精気は両目に通じ、目はまた九竅に属しているので、
肝目は九の数に応じるというのです。」


黄帝問曰、願聞九鍼之解、虚実之道。
岐伯対曰。刺虚則実之者、鍼下熱也。気実乃熱也。
満而泄之者、鍼下寒也。気虚乃寒也。菀陳則除之者、出悪血也。
邪勝則虚之者、出鍼勿按。
徐而疾則実者、徐出鍼而疾按之。
疾而徐則虚者、疾出鍼而徐按之。言実与虚者、寒温気多少也。若無若有者、疾不可知也。
察後与先者、知病先後也。為虚与実者、工勿失其法。若得若失者、離其法也。
虚実之要、九鍼最妙者、為其各有所宜也。補写之時者、与気開闔相合也。
九鍼之名、各不同形者、鍼窮其所当補写也。

刺実須其虚者、留鍼陰気隆至、乃去鍼也。
刺虚須其実者、陽気隆至、鍼下熱、乃去鍼也。
経気已至、愼守勿失者、勿変更也。深浅在志者、知病之内外也。
近遠如一者、深浅其候等也。如臨深淵者、不敢墮也。
手如握虎者、欲其壮也。神無営於衆物者、静志観病人、無左右視也。
義無邪下者、欲端以正也。必正其神者、欲瞻病人目制其神、令気易行也。
所謂三里者、下膝三寸也。所謂跗之者、挙膝分易見也。巨虚者、蹻足䯒独陥者。下廉者、陥下者也。

帝曰、余聞九鍼上応天地四時陰陽。願聞其方、令可伝於後世、以為常也。
岐伯曰、夫一天、二地、三人、四時、五音、六律、七星、八風、九野、身形亦応之。
鍼各有所宜、故曰九鍼。人皮応天、人肉応地、人脈応人、人筋応時、人声応音、人陰陽合気応律、人歯面目応星、人出入気応風、人九竅三百六十五絡応野。
故一鍼皮、二鍼肉、三鍼脈、四鍼筋、五鍼骨、六鍼調陰陽、七鍼益精、八鍼除風、九鍼通九竅、除三百六十五節気。
此之謂各有所主也。人心意応八風、人気応天、人髮歯耳目五声、応五音六律、人陰陽脈血気応地、人肝目応之九。


参考文献:
『黄帝内経素問 中巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『鍼灸医学事典』 医道の日本社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

新川

2 コメント

  1. いつもお世話になっております。

    「山月記」大好きな作品です。

    上手く言えないのですが、ものすごく切なさを感じるというか…。

    私も、読み直してみようかな。確か、まだ本棚にあったはず…。

    • コメントありがとうございます。

      本棚、是非探してみて下さい( ^o^)ノ
      古本屋へ行くと、
      新書のお店よりも『思わぬ出会い』があるようで、
      たびたび足を運んでしまいます。

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