この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。



5/24(水)
太陽病中篇より

(100条)
傷寒、陽脈渋、陰脈弦、腹中急痛者、先与小建中湯。
不差者、小柴胡湯主之。

前回に続き、100条からである。
小建中湯は、中焦虚寒・営衛気血不足の者に用いる。
桂枝湯に芍薬を加えたものが桂枝加芍薬湯で
脾胃の力を高めるが、
さらに膠飴を加えたものが小建中湯である。

98条では小柴胡湯証に対して医者が下法を行い、
脾胃を損傷させて腹が下るようになってしまった。
ここでは本条の小建中湯を用いるなど
脾胃の力を上げなければならなかった。

さて、条文に「傷寒、陽脈渋、陰脈弦、」という脈状が記されているが、
これはどういう意味なのだろう。
傷寒に罹っている場合には浮の脈を呈するが、
ここでは、浮位で渋、沈位で弦ということである。
小建中湯を用いていることから、
この脈は、実は緩脈のことを表しているのではないか
という見方もある。

(101条)
傷寒中風、有柴胡証、但見一証便是、不必悉具。
凡柴胡湯病証、而下之、若柴胡証不罷者、
復与柴胡湯、必蒸蒸而振、却発熱汗出而解。

傷寒中風証にかかり、
柴胡の症状が一つでも見受けられれば柴胡湯を用いて良く、

もし柴胡湯証で下法を用いてしまい、
柴胡湯証の症状が止まなければ
その後にまた柴胡湯を与えて良いという内容である。

98条では柴胡湯証に対し、
医者が下法を用いたことで、中焦を損傷させたことはすでに述べた。
この98条の場合は小柴胡湯を与えると「後に必ず下重す」とあり、
小柴胡湯を与えてはならない例が述べられていた。
一見、98条の「食あたわずして脇下満痛する」は
少陽病の胸脇苦満を述べているように見受けられるが、
実はそうではないということであろう。

すなわち、98条では柴胡湯証の症状が出ておらず、
本当に柴胡湯証の症状かどうかを見極めることが、
小柴胡湯を用いるかどうかの鑑別点であり
要点となるということである。

(続く)


参加者:下野、新川、大原、盧

 

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