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この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。



3/1(水)
太陽病中篇より

74、75条

76条

 


(74条)
中風、発熱、六七日不解、而煩、有表裏証、
渇欲飲水、水入則吐者、名曰水逆、五苓散主之。

下焦に水飲の停滞があるものを
ここでは「裏証」と表し、
下焦に水滞があると水逆が起こることを
示している。

また、金匱要略にも五苓散の条文があり、
臍下に悸があり吐などの症状がある場合に用いるとある。
この74条と同様の症候であることが窺える。

さて、腹證奇覧において、五苓散における邪は、
小腹ではなく心下部に書かれている。
これは何故なのだろう。
他の古典や条文などを紐解くと、
五苓散を、心窩痞に対して用いる場合があるようである。
諸病源候論に「病陰に発す者、下すべからず。下せば則ち心窩痞」とあり、
これは、誤治によって心窩痞がおこった場合に五苓散を用いる。
また、心窩痞がある場合に156条で
瀉心湯との使い分けについて記されている。
下焦の水滞と心窩痞は大きく関係しているようである。

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(75条)
未持脈時、病人手叉自冒心、
師因教試令欬、而不欬者、此必両耳聾、無聞也、所以然者、以重発汗、虚故如此。
発汗後、飲水多必喘。以水灌之亦喘。

病人が胸に手を当てて交差して、
医師が「咳をしてみてください」と指示しても咳をしない場合は
耳が聞こえておらず、発汗によって虛の状態になっているためである。
発汗後に水を飲ませると喘し、
」すればやはり喘するという内容である。

解説本では発汗によって心腎の虛が現れている状態であるとされている。
さて、条文後半の、「飲水多必喘」とはどのような状態なのか。
これは71条の「欲得飲水者」の言い換えとする見解がある。
すなわち、この場合にも
71条と同様に五苓散の証ということになる。

その次の節に、
聞き慣れない「」という用語が出てくるが何を意味するのだろうか?
これは素問にも記述があるようで、
身体に水を吹きかけて病を調べる方法のようである。
体表に水をかけて喘がおこるということは、
皮毛は肺が主ることから、
これは肺気不宣のような状態であるとされ、
このことから、五苓散ではなく
小青龍湯や麻黄湯が用いられるといった見解がある。

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(76条)
発汗後、水薬不得入口為逆、若更発汗、必吐下不止。
発汗吐下後、虚煩不得眠、若劇者、必反覆顚倒、心中懊憹、梔子豉湯主之。
若少気者、梔子甘草豉湯主之。
若嘔者、梔子生薑豉湯主之。

発汗した後、水薬を飲み込めないのは発汗法が誤治であり、
さらに発汗してしまうと
吐いて下してしまう。
発汗して吐いた後、「虚煩」して眠らず、
症状が激しく胸が苦しい場合には梔子豉湯を用いるという内容である。

虚煩」とは一見、
正気の虛によって「」の症状がおこるということだと
とらえがちだが、そうではない。
これは、心窩痞のような有形の邪実に対して、
無形の、それほど力はない邪実という意味で「」と表現している。
実際には熱邪が煩を形成していることから、
梔子豉湯を用いてその熱を取り去る。
諸病源候論には、虚煩とは「陰気少陽気多」をいうようである。
これらは、本当に正気の虛があった場合、
これまでの条文では
煩ではなく虚寒のような症状があらわれていたが、
本条文ではそうではなく、
もともと胃気が充実していることが背景にあり、
発汗によって正気はそれほど落ちず、
熱が停滞しているという状況である。

(続く)


 

心下痞について記す盧氏
心下痞について記す盧氏

参加者:下野、新川、大原、盧

 

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