この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。


太陽病上篇より

5/18(水)

 cam 板書02

cam 板書01

 

15条の前半において
太陽病、下之後、其気上衝者、可与桂枝湯」とあり、
太陽病で下法を用いた後、
「その気上衝する場合は桂枝湯を与える」とある。
太陽病は汗法を用いるべきであるが、
そうではなく下法を用いた後、
気の上衝があるということである。
この「気の上衝」とは何をあらわすのか?

→「気の上衝」という言葉だけをみると、
気逆や上逆といった、嘔気(胃気上逆)やのぼせなどのイメージが出てくる。
しかし具体的な症状が記されていないのでなんともいえない。→そもそも、なぜ太陽病で下法ではなく汗法を用いるのか。
表証では、正邪の闘争は、表で行われている。
それに対して裏証では腑など裏に邪があり、
下法とは、裏の正気に働きかけて腑の邪を瀉するものである。

→この条文では、「太陽病に対して下法を用いた」とあるので、
表邪があるにも関わらず、腑(裏)の邪に働きかけたということである。
すなわち、表邪はそのままで、
かつ、裏の虚がある程度生じている状態といえる。

→裏に残った正気は、表邪を追いだそうと、裏から表へ向かう。
ただし、ここである程度の正気がなければ、
裏から表へ正気が向かってしまうと裏虚が甚大になってしまうのではないだろうか。
すなわち、正気の虚が大きい場合には、
表邪を追い出そうとはせず、裏の正気を保とうとすると思われる。

本条文はこのようなメカニズムを表しているといえる。
すなわち「その気上衝する」とは、
下法によって侵害された正気が
表邪を排しようする動きであると思われる。
十分な正気があり表邪を追いだそうとする力がある場合に
営衛を調える「桂枝湯を与えるべき」ということである。

条文の後半には
もし、その気が上衝しない」場合は
桂枝湯は与えない」とだけ記されているが、
おそらく、裏の正気を高めるような方剤を用いるべき
ということではないだろうか。

参加者:下野、新川、本多、大原、小堀


<原文>
15条:
太陽病、下之後、其気上衝者、可与桂枝湯、方用前法、
若不上衝者、不得与之

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here