こんにちは、本多です。

今回は、
秋が深まり夜長となった
この時期に詠まれた一句からご紹介致します。

長き夜の 楽器かたまり ゐて鳴らず(伊丹 三樹彦)

夜長になると部屋で過ごすことが多くなることから
「長き夜」を実感し部屋に楽器がある様子を謳った句とされています。

鳴らない楽器、
鳴らせない状況を不安に感じた様を表しているようです。
昭和初期に作られた句だけに様々な想いがあったのでしょう。

さて、
今回は腹證奇覧に掲載しております、
大黄黄連瀉心湯についてです。

大黄黄連瀉心湯

大黄黄連瀉心湯
大黄黄連瀉心湯

図の如く、
心下痞して、一物ある如く覚え、
手を以て之を按ずるうちに、散り失せて何もなく、頌菜
濡にして、両傍にも亦二大竹を立つる如きものもなく、
只、何となく心下の痞を覚えるものを、
大黄黄連瀉心湯の證とす。
此れ其の之を按ずるに濡らかなるもの、
梔子豉湯の腹に似たりといえども、
梔子豉湯は、心下の痞を覚えず、且つ其の濡らかなるもの、
殊に濡弱にして、綿絮を按すが如く、
心中結痛、若しくは窒塞、
之を探按するに痛を知るもの、前に弁ずるが如し。
此の方は、自ら其の痞を覚え、之を按すに硬からずといえども。
濡弱に至らず。
深く按して腹底に凝結するものあり。
此れを其の別とす。


【大黄黄連瀉心湯:組成】

大黄(だいおう)

大黄
大黄

タデ科のダイオウ属植物の根茎や根。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包

主な薬効と応用:緩下・駆瘀血
①瀉熱通腸:胃腸の実熱による、
便秘・腹痛・高熱・意識障害などに用いる。
方剤例⇒大承気湯

②清熱瀉火:火熱上亢による、
目の充血・咽喉の腫痛・鼻出血など上部の火熱の症候に用いる。
方剤例⇒三黄瀉心湯

③行瘀破積:血瘀による無月経や腹痛時に用いる。
方剤例⇒復元活血湯

④清火湿熱:湿熱の黄疸時に用いる。
方剤例⇒茵蔯蒿湯

備考:生用すると瀉下の働きが強くなり、
酒を吹きかけ火で焙ると上部の火熱を清し活血化瘀の働きが強くなり、
酒とともに蒸すと瀉下の力が緩やかになり、
炒炭すると化瘀止血に働く。



黄連(おうれん)

黄連
黄連

キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸

主な薬効と応用:健胃・利胆・鎮痙
①清熱燥湿:大腸湿熱の下痢・裏急後重などに用いる。
方剤例⇒芍薬湯

②清熱瀉火:熱入心包の高熱・意識障害・うわごと・
煩燥などの症候時に用いる。
方剤例⇒牛黄清心丸

③清熱解毒:熱毒による高熱・煩燥・目の充血・腫痛・
咽喉腫痛・皮下出血・嘔吐などの症候に用いる。
方剤例⇒黄蓮解毒湯

備考:苦寒のため、多量を用いると胃を損傷する。
湿熱や実火でないものや脾胃虚寒には禁忌である。


【大黄黄連瀉心湯:効能】

傷寒論には以下の以下の記載がみられます。

【条文154】
「心下痞、按之濡、其脉關上浮者、大黄黄連瀉心湯主之。」

「心下痞し、之を按じて濡、
其の脉関上浮なるものは、大黄黄連瀉心湯之を主る。」

邪気が心窩で痞え、気機昇降の働きができなければ、
その影響は上下や水火の交流に現れる。
脈位の寸関尺の三部で、
それぞれ上焦・中焦・下焦の様子を候う。
関部で浮脈を呈している場合、
中焦から上焦(心胸)に向かって熱が通って
煩が生じていることが分かる。
これは中焦が痞塞したことにより
下焦の水が上焦の火を牽制しないために
火が独り上焦で昂ぶっているためである。

 

【条文164】
「傷寒大下後、腹發汗、心下痞、惡寒者、表未解也。
不可攻痞、當先解表、表解乃可攻痞。
解表宜桂枝湯、攻痞宜大黄黄連瀉心湯。」

「傷寒大いに下して後、復た発汗し、心下痞、
悪寒するものは、表未だ解せざるなり。
痞を攻むべからず、当に先ず表を解すべし。
表解すれば乃ち痞を攻むるには大黄黄連瀉心湯に宜し。」

傷寒時に峻下した後や、発汗させたために
裏が虚して邪が内陥して心下痞が生じ、
悪寒を発するようになったのは表証がまだ解けていないからである。

この場合はすぐに痞を治そうとしてはいけない。
まず表に対して治療を行って表が解けたあと、
痞証に対して治療を行っていく。

このような誤治で表を治療するのには桂枝湯がよく、
そのあとで大黄黄連瀉心湯で痞証に対して治療すればよい。

大黄黄連瀉心湯について為沢先生の【傷寒論】の記事は↓こちらをご覧ください。

【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百五十三章・百五十四章
【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百六十四章・百六十五章


参考文献:
『生薬単』 NTS
『漢方概論』 創元社
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『傷寒雑病論』
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 正編2巻・後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004914

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。


本多

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