たとえば行人東より西へ通るに、
中途に賊ありて通ることならず、
時に傍より見る者ありて、
かの賊を追払ふときは行人やすくして道を通る、
まさにしるべし、途を通る者は正気なり、
これを妨る賊は邪気なり、
かの賊を追い退る者は針なり、
夫れ針に四法あり、其一つを迎随と曰ひ、
是針に補あり瀉あるの証なり、
何ぞ偏に補なしと云わんや、
医師として針をそしるは武士の兵刃をそしるごとし、
国に奸賊あるときは兵刃を用ひ、
人に疾病あるときは針薬を用ゆ、
たとえば薬は智仁のごとし、針は兵のごとし、
智仁を表にし兵を裏にするときは
剛柔そなはって国豈治らざらんや。

〜『鍼灸重宝記』より〜

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