後渓 (後谿)の穴性について勉強していきます。

<要穴>
○ 手太陽経脈 兪木穴 / 火経の木穴
○ 八脈交会穴 督脈

小腸経は「火」に属し、
後渓は「木」なので、小腸の母穴となる。
太陽経と督脈とに関与することから、
衛表の開閉を調節する。
手太陽小腸経は、大椎で督脈と交会する。
督脈上にある大椎は手足の三陽経が合する。


<小腸の生理病理>

小腸は腹中にあり、上部では胃につながり、下部では大腸に通じており、心と表裏関係にある。

[生理機能]
食物の消化と清濁の転輸

[病理的変化]
清濁不分、転輸障害、消化不良などという形で現れる。
また飲食の不摂生による脾胃の損傷、心熱の小腸への移熱、
さらに小腸自身の機能失調などが生じた場合、
小腸虚寒、小腸実熱、小腸気痛などの病証をひきおこす。

本経の経脈や絡脈の病候、
手太陽小腸経の下合穴である下巨虚による小腸腑病の治療効果といった要素から、
本経の経穴の多くは、本経経脈の循行する部位の体表疾患、
神志病を主治するとされている。

小腸腑病の多くに対しては、
下巨虚と小腸の兪穴・募穴(関元)を取って施治するとよい。
小腸は脾胃系統に属しているので、
小腸腑病は脾胃の機能失調によるものが多い。
足太陰脾経や足陽明胃経の関連する経穴を配穴する場合が多い。

 

<治療範囲>
1. 経脈通路上の病証
『霊枢』邪気臓蹄病形篇では、
『栄輸は外経を治し、合は内腑を治す』と述べている。
後渓は、本経経脈、経別の循行している
耳、目、頚項、肩甲部、肘管、腕、手指などの部位の病変を主治する。

2. 督脈病
後渓は八脈交会穴のひとつであり督脈に通じている。
督脈は脊を貫き、脳に入絡し、また下項に別れている。
さらに脊を挟み腰中に抵し、入って膂(背骨)を循っている。
その絡脈は脊をはさみ項に上っている。

『素問』骨空論篇では
「督脈の病たる、脊強反折す」
と述べており
『難経』第二十九難では
「督の病たる、脊強ばりて厥す」
と述べている。

督脈に邪気が侵入しておこる頭項強痛、頚項強直は
本穴の治療範囲に入る。

 

<臨床応用>
耳鳴り
脾胃の気虚がひどくなり、清陽不昇をお越し、
頭部や耳に正気がめぐらず、耳鳴り、頭痛、肩こり等の症状が出たものに。
小腸経と八脈交会穴で督脈と交会しており、
醒脳開竅作用がある。

上焦における、目・鼻・耳・喉の熱を清ます。
空間論的に耳に相応する。

神門の代用
後渓と神門は表裏になっていて、神門が使い難い時に用いる。
上焦の心熱、心と表裏関係で小腸を動かす。

陽気の調整
八脈交会穴の後渓は、督脈を支配する。
督脈が全ての陽経の脈、陽気を調節する。
内熱傾向の全てのものを、督脈が最終的に支配する。

麻黄湯証
『傷寒論』
「脈浮、頭項強痛して悪寒す」(1)
はっきりとした徴候が現れれば麻黄湯証の適応なのですが、
「太陽病. 或㔾發熱.或未發熱.必悪寒.
體痛嘔逆.脉陰陽俱緊者.名為傷寒」(3)

この場合、鍼灸の方では鍼よりもお灸が非常によく効く。
合谷で上手く処理できないものに対しては、
後渓の多壮灸が麻黄湯証に対して有効である。
風寒を発散させ、督脈を通じ
表を固め表熱を清める。

 

「類経図翼」手の太陽小腸経
「十四経発揮」を勉強しながら模写しました

《参考文献》
『臨床経穴学』 著:李世珍
『穴性学ハンドブック』 著:佐藤弘 伴尚志
『図解・十四経発揮』 本間 祥白 著
『臓腑経絡学』 著:藤本蓮風
『経穴解説』 著:藤本蓮風
『中医臨床』 2015年6月号

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