「太渓」の穴性について学んでいきます。

<要穴>
足少陰腎経:原穴・兪土穴
回陽九針穴

<主治>
滋陰壮陽
補腎

腎の臓病,経病,気化病および腎と関係する臓脈器官の疾病を主治する。

『霊枢』九針十二原篇
「五臓に疾あるや、応十二原に出ず。十二原は各々出ずる処あり。
明らかに其の原を知り、其の応を観て、五臓の害を知る。』

原穴は、人体の原気の作用が現れる部位であり、そのため原と称されている。
原穴は、臓腑の真気が輸注するところであり、人体の原気の作用が現れるところでもある。
原穴が臓腑病を治療する重要穴であり、
原穴は五臓の診断穴として用いられることもある。

 

<治療範囲>
① 腎病と腎と関係のある臓器病
1.
腎は、水火の臓であり、内に元陰(真陰)・元陽を蔵している。
腎陰は、全身の根蒂(土台)であり、先天の源(真源)である。
腎陽は、生命活動の動力である。
腎陰虚損、腎陽虚損の病証の治療には、本穴を取って滋陰壮陽をはかる。
また腎は「胞脈は腎に系す」(『素問』 奇病論)と述べられ
腎は先天の本、生殖発育の源である。
腎と関係する胎・ 産・経・陽萎・遺精・ 子宮脱
などの病証はすべて本穴の主治範囲に入る。

腎脈は、膀胱を絡い,膀胱の脈絡は腎を絡っている。
腎と膀胱は,たがいに表裏の関係にあるため,
腎機能の減退によって現れる膀胱の病変には臓病を主治する本穴を使用する。

2.
腎は、骨を主り、精を蔵し、髄を生じる「作強の官」といわれる。
髄は骨中に蔵し骨格を養う。
歯は骨余、脳は髄海、腰は腎の府といわれ腎により生成されている。
腎の生理と足少陰経脈、絡脈、経別および督脈の循行にもとづくと、
腎と腰背、背膂(背骨)心、肝、肺、喉、 舌、陰器、帯脈に関係があることがわかる。

腎の津波は,舌下よりでる。
腎気は耳に開竅し「目は五臓六腑の精なり」といわれ、精は腎に蔵されている。
腎虚と関係のある眼、耳、喉、舌疾患も本穴の治療範囲に入る。

② 腎虚病証
腎は、精神が舎るところであり、元気が関係する臓器である。
腎陽は生命の根本であり、そのためこの腎陽が衰えると、
人体の各種の機能活動は衰退し諸証が出現する。

腎気不固、腎不納気、久病のため元気が衰退している場合、
腎陽虚衰、急病で陽気暴脱の病証および虚脱証候の治療には本穴を用いる。
太渓は、 腎陽を補益し、腎気を補益する作用があるため,
先人は回陽九針穴の1つに加えている。
傷寒病の少陰証虚寒型も本穴の治療範囲に入る。

 

<古典>
『素問 気交変大論』
「歳土太過なるときは,雨湿流行し,腎水邪を受く。
……太渓絶する者は死して治せず。」

『金匱要略 嘔吐噦下利病脈証治』
「下利して、手足厥冷し、脈無き者、これを灸して温まらず、もし脈還らず

かえって微喘する者は死す。少陰扶場に負くる者は順となすなり。」

腎気が先に絶え病勢が重篤になると、手部が無脈になる。
足部少陰(太絡穴の動脈、以て腎気を候じる)と
扶陽(衝陽穴の動脈、以て間気を候じる)の脈が、
上下相応し絶えなければまだ治療可能である。
扶陽(衝陽脈)が少陰(太絡脈)より盛んな場合は、
腎気がまだ盛んであることを表しておりこれも救治が可能である。
太渓には後脛骨動脈の拍動部がある。
この部位で先天の元気を、衝脈(足背動脈)で後天の元気を伺う。


『霊枢』寿夭剛柔篇

「病、陰の陰に在るものは、陰の滎穴・輸穴に刺す」

『素問』咳論篇
「臓を治すは、その兪を治す」

 

<臨床応用>
『臓腑経絡学』 藤本蓮風 著
足少陰腎経は呼吸器、循環器、胸自体を支配している。
胸郭の異常、呼吸がしんどい、心臓の鼓動がおかしいという場合は、
安全策としてまず公孫を打ってみる。
効果が今ひとつの場合は、太渓、照海を打って陽池にお灸をして心陽を高める。
公孫、太渓を先ず調整して、後は心気、心陽、心血の問題を考え調整、処置すればよい。

『体表観察学』 藤本蓮風 著
太渓の穴が凹んでいる患者は先天が弱い。
先天
後天で、太渓と公孫は非常に重要であるため、両方を診る。

 

「経穴彙解」足陰陽図
「経穴彙解」を勉強しながら模写しました。


つづく

 


《参考文献》
『臨床経穴学』 著:李世珍
『穴性学ハンドブック』 著:佐藤弘 伴尚志
『図解・十四経発揮』 本間 祥白 著
『現代語訳・黄帝内経素問』  東洋学術出版
『現代語訳・黄帝内経霊枢』  東洋学術出版
『臓腑経絡学』 著:藤本蓮風
『体表観察学』 著:藤本蓮風
『経穴彙解』 著:原南陽編

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