どうも、新川です。

暦でいえば、「立春」を過ぎ、
『雨水』という時期を目前に控えております。

あまり聞き慣れない、『雨水』という暦。
今まで降っていた雪が雨にかわり、雪がとけ始める時期で、
昔はこのときを目安に農耕の準備に取りかかっていたとのことです。
それらの時代は自然の流れとにらめっこしながら生活していたのがよく分かります。

さて、今回は
刺熱論篇についてです。


今回は、刺熱論篇について綴って参ります。
本来ならここにまとめてある以上の内容がありますが、
なるべく分かりやすくするため、
一部を抜粋して表現させて頂いております。


【刺熱論篇 第三十二】

本篇では、
熱病に対する刺鍼法について論じられ、
「病を治すには必ず病を知るべし」して、
五蔵の熱病の症状や、診断、予後などについて説明している。

【肝が熱病を生ずる】
まず
・小便が黄色くなる
・下腹部が痛む
・よく眠り、発熱する。

邪正相い争う(熱邪と正気とが争うこと)ようになれば、
・言語が錯乱し驚く
・胸肋部が脹満して痛む
・手足をしきりに動かし、じっと横になっていられなくなる。

※1庚・辛の日には重くなり、
甲・乙の日には汗がたくさん出て熱が下がる。
もし邪気が蔵に勝てば病気はさらに重くなり、庚・辛の日に死ぬ。
治療は足の厥陰経と少陽経を刺鍼する。
もし肝気が上逆すれば、頭痛や眩暈が出現する。
これは熱邪が肝脈にそって頭に上衝するためである。

※1庚・辛の日
→庚・辛は、十干の一種で、暦の表記などに用いられる。
十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸からなり、
それぞれを五行に当てはめて、
2つずつを木・火・土・金・水にそれぞれ当て、さらに陰陽を割り当てている。
日本では陽は兄(え)、陰は弟(と)と表記する。
庚であれば、五行でいう『金』、陰陽でいう『陽(兄)』にあたるので、
『金の兄(かのえ)』なる。

では、なぜ肝が熱病を生じた際、
『金の兄(かのえ)』である庚の日に悪化するのかというと、
五行でいうと、肝は木であり、
木は金と相剋関係にあるからである。
・以下一覧表を添付したので、ご参照頂きたい。

音読み 五行 陰陽 意味 訓読み
こう 木の兄 きのえ
おつ 木の弟 きのと
へい 火の兄 ひのえ
てい 火の弟 ひのと
土の兄 つちのえ
土の弟 つちのと
こう 金の兄 かのえ
しん 金の弟 かのと
じん 水の兄 みずのえ
水の弟 みずのと

【心が熱病を生ずる】
まず

・心が鬱々と楽しまず、数日後に発熱する。
邪正相い争うようになれば、
・突然に心が痛む
・煩悶して何度も嘔吐する
・頭痛
・顔面紅潮
・無汗

壬・癸の日には重くなり、丙・丁の日には汗がたくさん出て熱が下がる。
もし邪気が蔵に勝てば病気はさらに重くなり、壬・癸の日に死ぬ。
治療は手の少陰経と太陽経を刺鍼する。

【脾 が熱病を生ずる】
まず
・頭重感
・頬痛
・胸が苦しい
・額が青ばむ
・吐き気がして、発熱する。

邪正相い争うようになれば
・腰痛
・仰向けになれず、腹が脹って下痢する
・両顎が痛む。

甲・乙の日には重くなり、戊・己の日には汗がたくさん出て熱が下がる。
もし邪気が蔵に勝てば病気はさらに重くなり、甲・乙の日に死ぬ。
治療は足の太陰経と陽明経を刺鍼する。

【肺が熱病を生ずる】
まず
・急に寒気がし、鳥肌が立ち、風や寒さを嫌がる
・舌の上が黄色くなり、発熱する。

邪正相い争うようになれば
・呼吸困難
・咳嗽
・胸から背にかけて痛みが走る
・大きな息ができない
・ひどく頭が痛み、汗が出ても寒気がする。

丙・丁の日には重くなり、庚・辛の日には汗がたくさん出て熱が下がる。
もし邪気が蔵に勝てば病気はさらに重くなり、丙・丁の日に死ぬ。
治療は手の太陰経と陽明経を刺鍼する。
大豆大の血を一滴出せば、病気は速やかに治癒する。

【腎が熱病を生ずる】
まず
・腰痛
・脛が疼く
・口がひどく渇いてよく水を飲み、発熱する。

邪正相い争うようになれば
・項頸部が痛んで強ばる
・脛が冷えて疼く
・足の裏の熱
・何も喋りたがらない。

もし腎気が上逆すれば
・項頸部が痛む
・眩暈がしてふらふらする

戊・己の日には重くなり、壬・癸の日には汗がたくさん出て熱が下がる。
もし邪気が蔵に勝てば病気はさらに重くなり、戊・己の日に死ぬ。
治療は足の少陰経と太陽経を刺鍼する。
以上のように、それぞれの蔵で汗がたくさん出るのは、
その蔵の盛んな日に相当し、正気が勝ち、
邪気が退けば汗が出て病気は治癒する。

☆張志聡の説
『これは五蔵の熱病を論じたものである。
いったい五蔵というものは五行が生じたものである。
天の十干が、変化して地の五行を生じ、
人の十二経脈は、はるか上にある天の六気と対応している。
傷寒の邪による病は三陰・三陽の気に宿るので、三日、六日で死に、
十二日で癒えるのである。
五蔵の熱病は五行と関わるので、死生の〔日〕は十干と係わる。
六気に病むのは外因の邪で、その病は肌膚や形体にあり、
五蔵が病むのは内因の病で、五蔵の神志〔の気〕を病ませるのである。
『霊枢』寿夭剛柔篇に
『風寒は形体を傷つけ、憂いや恐れ、いきどおり、怒りは気を傷つける。
気が蔵を傷つけると蔵を病ませ、寒が形体を傷つけると形を病ませる』
というのがこれである。』

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●未病を治す

肝の熱病では、左の頬がまず赤くなる。
心の熱病では、顔がまず赤くなる。
脾の熱病では、鼻がまず赤くなる。
肺の熱病では、右の頬がまず赤くなる。
腎の熱病では、頤がまず赤くなる。
病気がまだ発症していなくても、
顔面に赤色が現れれば鍼治療すべきである。これを未病を治すという。
熱病の初期で五蔵の〔対応〕部位のみに変化が現れ、
まだ病が軽く他の症状が見えぬうちに治療すれば、
その蔵の勝つ日に蔵気が盛んとなって汗が出て治癒する。
しかし刺法を誤り、補すべきものを瀉し、瀉すべきを補せば、
病気は長びき※1「三周」以後にやっと治癒する。
再度、治療を誤れば死ぬような結果となる。
一般に、熱病では汗を出すのが原則だが、
正しい治療法を理解して、その蔵の盛んな日に、
汗をたくさん出すことが出きれば病気は治癒する。

※1「刺の反する者は、三周にして已ゆ」
→張景岳 の説
「反とは虚を瀉し、実を補うこと。
病んだ人に反治すれば、その病は必ず甚だしくなり、治りはかえって遅い。
三周とは、三たび勝つ所の日に遇い、それからやっと治ること。
ちなみに三周には、経脈を三周する(王冰)三日(高士宗)など諸説ある。


☆本節では顔の色からその熱病の病位を予測し、
早期治療に心掛け、発症前に鍼治療することが重要であると説明している。
この「未病を治す」という言葉には予防的、積極的な意義がある。
また三種の治療の状況次第でその予後も異なる。
もし未病を治せば速やかに治癒するが、
治療を誤れば治るまでに「三周」を要し、
さらに治療を誤れば死ぬこともある。
こうした差異について、治療者は充分注意すべきである。

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熱病でまず胸脇部が痛み、手足をしきりに動かすのは、
病が少陽経に生じたのであり、足の少陽経を刺鍼して陽分の熱を瀉し、
足の太陰経を補って邪の侵入を防ぐ。
病気が重いときには※1「五十九刺」の方法を用いる。
熱病でまず腕から胸にかけて痛むものは、病気は上にあって陽に発したものであり、
手の陽明経と太陰経の穴位を刺鍼して、汗が出れば熱は止む。
熱病でまず頭部に症状が出現するものは、太陽の病であり、
足の太陽経を刺して、汗が出れば熱は止む。
熱病でまず身が重くなり、骨や関節が痛み、耳が聴こえ難くなり、
ものうくてよく眠るものは陰に発して熱病となったもので、足の少陰経を刺鍼する。
もし病気が重ければ「五十九刺」の方法を用いる。
熱病でまず眩冒して発熱し、胸脇部が脹満するものは少陽に発した病が裏陰に伝入しようとするもので、
足の少陰経を刺鍼し、枢要の場から邪熱を除く。

※1「五十九刺」
→熱病を治療する五十九穴を刺す。
王冰の注解によれば、
五十九刺とは以下の穴位を指す。
上星、顖会、前頂、百会、後頂(計五穴)と、
五処、承光、通天、絡却、玉枕、臨泣、目窓、正営、承霊、脳空(左右計二十穴)の二十五穴は、
陽経の上逆した熱邪を散じる。
大舒、膺兪、欠盆、背兪、の左右計八穴は、胸中の熱邪を瀉す。
気街、三里、巨虚上下廉の左右計八穴は、胃中の熱邪を瀉す。
雲門、髃骨、委中、髄空の左右計八穴は、四肢の熱邪を瀉す。
魄戸、神堂、魂門、意舎、志室の左右計十穴は、五蔵の熱邪を瀉す。


肝熱病者、小便先黄、腹痛多臥、身熱。
熱争則狂言及驚、脇満痛、手足躁、不得安臥。
庚辛甚、甲乙大汗。気逆則庚辛死。刺足厥陰、少陽。其逆則頭痛員員。脈引衝頭也。
心熱病者、先不楽、数日乃熱。熱争則卒心痛、煩悶善嘔、頭痛面赤、無汗。
壬癸甚、丙丁大汗。気逆則壬癸死。刺手少陰、太陽。
脾熱病者、先頭重、頬痛、煩心、顏青欲嘔、身熱。熱争則腰痛、不可用俛仰、腹満泄、両頷痛。
甲乙甚、戊己大汗、気逆則甲乙死。刺足太陰、陽明。
肺熱病者、先淅然厥、起毫毛、悪風寒、舌上黄、身熱。熱争則喘咳、痛走胸膺背、不得大息。頭痛不堪、汗出而寒。
丙丁甚、庚辛大汗。気逆則丙丁死。刺手太陰、陽明。出血如大豆、立已。
腎熱病者、先腰痛䯒痠、苦渇数飲、身熱。
熱争則項痛而強、䯒寒且痠、足下熱、不欲言。其逆則項痛員員澹澹然。
戊己甚、壬癸大汗。気逆則戊己死。刺足少陰、太陽。諸汗者、至其所勝日汗出也。

肝熱病者、左頬先赤。
心熱病者、顏先赤。
脾熱病者、鼻先赤。
肺熱病者、右頬先赤。
腎熱病者、頤先赤。
病雖未発、見赤色者刺之。名曰治未病。熱病従部所起者、至期而已。其刺之反者、三周而已。
重逆則死。諸当汗者、至其所勝日汗大出也。

諸治熱病、以飲之寒水、乃刺之。必寒衣之、居止寒処。身寒而止也。

熱病先胸脇痛、手足躁、刺足少陽、補足太陰。病甚為五十九刺。
熱病始手臂痛者、刺手陽明太陰、而汗出止。熱病始於頭首者、刺項太陽而汗出止。熱病始於足脛者、刺足陽明而汗出止。
熱病先身重骨痛、耳聾好瞑、刺足少陰。病甚為五十九刺。熱病先眩冒而熱、胸脇満、刺足少陰少陽。

太陽之脈、色栄顴骨、熱病也。栄未交、曰今且得汗、待時而已。
与厥陰脈争見者、死期不過三日。其熱病内連腎。少陽之脈色也。少陽之脈、色栄頬前、熱病也。
栄未交、曰今且得汗、待時而已。与少陰脈争見者、死期不過三日。

熱病気穴、三椎下間、主胸中熱、四椎下間、主鬲中熱、五椎下間、主肝熱、六椎下間、主脾熱、七椎下間、主腎熱。
栄在骶也。項上三椎陥者中也。頬下逆顴為大瘕、下牙車為腹満、顴後為脇痛。頬上者、鬲上也。


参考文献:
『黄帝内経素問 中巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『素問ハンドブック』 医道の日本社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみてあげて下さい。

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