どうも、新川です。

鍼灸院にて施術を受ける際に、
「経穴(ケイケツ)」「ツボ」などの言葉をよく耳にされると思います。

今回から経穴の漢字の意味を中心とした解説を行って参ります。
※経穴の効能に関しては、あえて言及せず、
ここではなぜそのツボがその名称になったのかなどをお伝えしたいと思います。

————————————————————————————————————————

【中府(肺経)】

中府(チュウフ)は一番最初に覚える経穴?

私達鍼灸師が、鍼灸学校に入ってまず習得するのが、
経穴(いわゆるツボですね)であります。
経穴はWHOが定めたものだけで、361穴あります。
・・はい、もちろん全部覚えます。

さて、それらの経穴を様々な手段で覚えていくわけですが、
正経十二経の最初の経絡は「手の太陰肺経」となり、
その中で一番目に出てくるのが「中府」となるわけです。

「中府」穴はいつ生まれたのか?

そんな鍼灸師にとって印象深い経穴である「中府」。

古典を学ぶ鍼灸師にとって、
『黄帝内経素問』、『黄帝内経霊枢』という書物は、
大変重要な位置づけとなりますが、
こちらの二つの書物には「中府」という経穴は出て来ません。

しかし、「膺兪(ヨウユ)」という名前では登場します。

「膺」は「胸」という意味があり、
「兪」は、元々木をくりぬいて舟を作る意を指しますが、
白川静氏の説で
「人間の体にできた腫れものを切り開き、
その膿穴を膿盤に取り出すこと」から転じた「癒やす」という解釈を採用すると、
“胸の症状を治める経穴”と解釈できます。
実際、素問の中に
「膺兪十二穴」という胸部にある経穴を指す言葉も出てきます。

黄帝内経が成立したのが、紀元前100年頃(こちらは諸説あり)とされておりますが、
そこから300年程経た西晋の時代に『鍼灸甲乙経』が記され、
そこで初めて「中府」の名称が出てきます。

漢字の意味を考えよう!

ここで改めて、それぞれの字についての意味を探ってみたいと思います。


・内部、場所や時間の範囲内
・中間、中等、中央  ・・・(角川新字源より)

東洋医学で「中」は「中焦(チュウショウ):脾胃(ヒイ)」と解釈します。



・文書や財宝を収めておく蔵
・役所、官庁
・人または物の集まる所
・役人
・都、町
・行政区画の一つ。唐から清まで続いた、州の大きなもの
・貴人の邸宅 ・・・(角川新字源より)

→説文解字注にも、
『文書臧也。文書所藏之處曰府』
「文書を保管するところ」「蔵」とあり、
書類や財宝をしまっておく庫を意味します。

“胸の症状を治める経穴”
→“中央・中焦に関わって集まる(保管する)所の経穴”へ

元々、胸に関わる経穴だったのが、
中央(中焦)に関わって集まるという意味を持つようになり、
また、要穴である募穴(ボケツ:臓腑の気が多く集まるところ)となります。
役割が変わるとともに名称も変わるというのが
興味深いところですね。

中府 位置
中府 位置

続く


参考文献:
『黄帝内経素問 上巻—現代語訳』
『黄帝内経素問 中巻—現代語訳』
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
『新字源』 角川書店

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here