以前より来院されている
患者さん(仮にSさんとする)の症例。
Sさんは陰虚(体を冷やす陰気が足りないため、
体が熱傾向にあること)体質の為、
症状は常に口渇があり、夜になると腰痛、
陰虚がひどくなると動悸を起こす。
気鬱を起こすと季肋部に痛みがでる。
治法は主に陰分を補い、
気鬱と、それに伴う熱(気分が抑鬱になり熱を生じること)
を取り去る施術をし、体調を整える。
養生指導として普段より温める行為を控えて頂いていました。
定期的な治法のかいあり、経過は良好。
口渇などの症状緩快。動悸なく過ごされる。
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しかし突然、体調不良によりキャンセルされる。
体調をお伺いしたところ、
動悸と頻脈で全身倦怠感がきつく来院出来ないとのこと。
キャンセルされた翌日来院され、詳しく問診する。
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便が水様便で調子が悪かったため
消化器科で診てもらい、
医師より処方された「大建中湯」を
二日前より服用し始めたとのこと。
大建中湯は、
陽虚(体を温める陽気が足りないため、体が冷え傾向にあること)
を温め補って治す湯液である。
Sさんにとっては
陰虚に熱を補う処方になってしまうため、
治療どころか体調を悪化させてしまう処方になる。
(これまでにも温泉に入り体調悪化させたり、
冬にこたつを入れたまま眠り、
陰分が損傷したために口渇が現れ、
決まって腰痛や動悸を強く訴えられることが度々ありました。
このように、陰虚のものに、
温補を用いることは非常に危険です。)
今回は大建中湯の熱を取り除き、陰虚を補う。
体調は改善方向へ。
今後Sさんには大建中湯の服用は控えて頂き、
陰虚を補う施術を続けていく。
その西洋医師はSさんの体全体を診ず、
便の状態だけで冷えによる症状と判断し
大建中湯を処方したと思われる。
この症例のように、
体全体のバランスを診ず、一つの症状だけで
漢方を服用することはとても危険であることを、
この症例を通して主張したい。
1人の患者、1人の症状を徹底的に観察していくことで、
多くのものを教えられます。
このような事は、教科書では決して教えてくれないこと。
いつまでも大事にしたいことである。

2 コメント

  1. 確かに仰るとおりです。
    しかし、最近の西洋医学会の東洋医学の用い方は、
    統合ではなく、利用です。
    西洋医学で効果のなかったものを漢方薬などで、
    治療する。
    しかし、西洋医学の理論でもってです。
    東洋の弁証論治をもってせず
    パターンでもって処方する湯液など、
    東洋医学というには程遠いと感じています。
    しかし、認知されないよりはましとは言えるか。。
    本当の意味での、東洋医学の復興を望みます。

  2. そうですね。
    栄養価だけですもんね。
    もっとも大事な「質」が忘れられていますもんね。
    masaさんの戦いも続きますね★

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