下野です。

ここのところ
別テーマの記事が続いておりましたが、
今回は久しぶりに『薬性の歌』の記事になります。


【原文】
附子辛熱、性走不守、四肢厥逆、回陽功有。
川烏大熱、捜風入骨、湿痺寒疼、破積之物。
木香微温、散滞和胃、諸気能調、行肝瀉肺。
沈香降気、暖胃追邪、通天徹地、衛気堪誇。
丁香辛熱、能除寒嘔、心腹疼痛、温胃可曉。

<第十八に続く>


【解説】
付子は辛・熱。
走きて守らずの性質で経絡を通し、
回陽救逆する。

川烏は大熱。
風邪が骨に入るのを捜り、
寒湿痺の麻木や積を破るものである。

木香は微温。
滞を散じて和胃し、諸気を調え
肝を行し、肺を瀉す。

沈香は気を降ろし、
胃を暖めて邪を追い払い、
天に通じて地に徹する。

丁香は辛熱。
寒嘔を治し、心腹の疼痛に用いる。
胃を温める。

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◉附子

附子
附子

キンポウゲ科のハナトリカブトの塊根。
性味:大熱・辛
帰経:肺・心・脾・腎

※本多先生による解説はこちら → 附子粳米湯/腹證奇覧

「ホジュン」という韓国ドラマで
病気の母を治すために
附子を必要以上に投与してしまい、
反って失明しかけたという話がありました。
それだけ毒性の強い生薬になるため、
細心の注意と、学が必要となります。

◉川烏頭

トリカブト属の母根で、
主に四川省で栽培されている。
性味・帰経・効能は附子に似ているが、
附子は補陽の力が長け、
烏頭は祛風痛痺の効能が勝っている。

◉木香

キク科のトウヒレン属の根部。
性味:辛・苦・温
帰経:肺・肝・脾・胃・大腸・三焦
効能:
①行気止痛
・胃腸気滞の腹満や腹痛、嘔吐など。
方剤例 → 木香調気散・香砂二陳湯
・食積や湿熱の腹痛や便秘、下痢に。
方剤例 → 香連丸
②健脾消食・止瀉
・脾胃気虚の気滞による少食、腹満、食欲不振などに。
方剤例 → 香砂六君子湯・香砂枳朮丸

◉沈香

ジンチョウゲ科の沈香木などの材中に
樹脂が沈着したもの。
性味:辛・苦・温
帰経:脾・胃・腎
効能:
①行気止痛
・胸脇痞満や痛み、月経不順などに。
方剤例 → 沈香降気散
・痰飲の胸の痞えや痛みに。
方剤例 → 沈香化気丸・沈香墜痰丸
②温中止嘔
・胃寒による嘔吐に。
方剤例 → 沈丁二香散
③温腎納気・降逆平喘
・腎陽虚の吸気性呼吸困難に。
方剤例 → 沈香湯
・胸部の寒凝気滞の胸苦しいや呼吸困難、促迫に。
方剤例 → 沈香四磨湯

◉丁香

フトモモ科チョウジノキの花蕾。
性味:辛・温
帰経:肺・脾・胃・腎
効能:
①温中降逆
・胃寒の迄逆や嘔吐に。
方剤例 → 柿蒂湯・丁香柿蒂湯
・脾胃虚寒による食欲不振や嘔吐、下痢などに。
方剤例 → 丁香散
②下気止痛
・奔豚気逆の胸腹の痛みに。
・胃寒の上腹部の痛み。
・ヘルニアなどの下腹部の疼痛に。
方剤例 → 丁香楝実丸
③温腎助陽
・腎陽虚のインポテンツや陰部の冷感、帯下などに。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『まんが漢方入門』 医道の日本社
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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