下野です。

二十以上の記事となりました
「万金一統の述」の章も
次回で最終となり、
その後は「薬性の歌」の章に入って参ります。

では残り2回となりました、
『万病回春 万金一統の述』
の記事に参ります。


【原文】
在表者、汗而発之也。
在裏者、下而奪之也。
在高者、因而越之也。謂可吐也。
慓悍者、按而収之也。

臓寒虛脱者、治以灸柄也。
脈病攣痹者、治以針刺也。
血実蓄結腫熱者、治以砭石也。
気滞痿厥寒熱者、治以導引也。
経絡不通、病生於不仁者、治以醪醴也。
血気凝注、病生筋脈者、治以慰薬也。

人能健步、以髓会絶骨也。
肩能任重、以骨会大杼也。
老人臥而不寐也。
少壯寐而不寤者。
此血有余気不足也。

前富後貧、多鬱火也。
前貧後富、喜傷心也。

開鬼門者、謂発其汗也。
潔淨府者、謂利小便也。

少壮新病者、攻邪為主也。
老衰久病者、補虚為先也。
調理脾胃者、醫中之王道也。
節戒飲食者、即病之良方也。

望而知之者、謂之神、
望其五色、以知其病也。
聞而知之者、謂之聖、
聞其五音、以知其病也。
問而知之者、謂之工、
問其所欲五味、以審其病也。
切而知之者、謂之巧、
切其脈、以察其病也。

<第二十二に続く>


【現代語訳・解説】
邪が表にあれば発汗させ、
裏にあれば下させる。
病が上部にあればと吐法を用い、
病勢が激しいときは
病状を考えこれを制し収える。

臓が寒を受け虚脱した者には、
灸で治療を行う。
筋脈の拘急、痺れの症状には、
鍼で治療を行う。
血実、蓄結、腫熱には、
砭石で治療を行う。
気滞、痿厥、寒熱には、
導引で治療を行う。
衛気が通じず、
寒熱・痛痒を感じないないものは、
濁酒を飲むようにする。
血気が凝滞し、
筋脈に病が生じたものには、
慰薬(温湿布)を用いる。

歩くことができるのは、
髄が絶骨で会するからである。
肩で重いものを持つことができるのは、
骨が大杼で会するからである。
老人は睡眠時に熟睡出来ないが、
若い人達は熟睡して目覚めることがない。
これは血の有余、気の不足である。

富んでいた者が
貧しくなった場合は鬱火が多く、
貧しい者が
富た場合は喜び心を傷つける。

鬼門を開くとは、発汗させることであり、
淨府を潔くするとは、小便を出させることである。

若い人達の新病には攻法を主とし、
老人の久病には先に虚を補う。
脾胃を調えるのは医の王道であり、
飲食節制は病を却るのに良方である。

望診を通じて知ることを神とし、
体表の五色を診ることによって病を知るということである。
聞診を通じて知ることを聖とし、
五音を聞くことによって病を知るということである。
問診を通じて知ることを工とし、
好む五味によって病の起こるとこや、部位を知ることである。
切診を通じて知ることを巧とし、
脈を按じその虚実を弁別し、病がどの臓腑にあるかを知ることである。

———————————————————————————
ここで書かれているもので、
前富後貧、多鬱火也。
前貧後富、喜傷心也。
という社会的地位が
心身に影響を及ぼすといった内容で
非常に現代ともリンクする内容だと思います。

これは『黄帝内経 素問』「疏五過論篇」
「凡未診病者、必問嘗貴後賎。
雖不中邪、病従内生。名曰脱営。
嘗富後貧、名曰失精。五気留連、病有所并。」
「患者を診察する前に、必ず職業・社会的地位の
変遷を伺うように。もし以前は地位が高かったが、
その後に勢力を失った者は、外邪に当たってなくても、
病が内から発生する。この種の病を『脱営』という。
以前は裕福で、後に貧しくなり発病したものは
『失精』と呼ばれる。」
と記載され、
精神的変化について観察をおろそかにしないよう
戒めており、非常に重要である。

「疏五過論篇」に関しては、
以前 新川先生が記事にされておりますので、
そちらも参照ください。
【古医書】素問:其ノ七十七 疏五過論篇


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『難経解説』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経素問 上巻』 東洋学術出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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