『諸葛孔明の兵法』徳間書店より
『諸葛孔明の兵法』徳間書店より

こんにちは、為沢です。書籍紹介します。

『諸葛孔明の兵法』 守屋洋(編・訳)

こちらは鍼灸と関係ございませんが、三國志を語る上で
欠かせない蜀漢の大軍師・諸葛亮孔明にまつわる兵法書です。
私が学生当時、兵法書から施術方法の組み立て方の
ヒントを得ようと思いこの書籍を購入したわけですが、
単純に諸葛亮にまつわる話にのめり込んでしまいました。
兵法書としては『孫子の兵法』からの引用が多く見受けられ
戦術理論だけでなく、緻密な人間観察・分析方法、
適材適所での起用法など事細かに書かれております。

本当は書籍紹介だけの記事を作成しておりましたが
諸葛亮好きが止まず、書きたいことが溢れ
自身の言葉でまとめることができませんでした(笑)
また、面白い本があれば御紹介させて頂きます。


では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)七十六章。
発汗・吐・下の各法を用いたあと、虚煩が生じた場合の証治について詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(中)七十六章

發汗後、水藥不得入口爲逆。
若更發汗、必吐下不止。
發汗吐下後、虛煩不得眠、
若劇者、必反覆顛倒、心中懊儂、梔子豉湯主之。
若少氣者、梔子甘草豉湯主之。
若嘔者、梔子生薑豉湯主之。三十八。

梔子豉湯方
梔子
十四個、擘 香豉四合、綿裹
二味、以水四升、先煮梔子、得二升半、
內豉、煮取一升半、去滓、分爲二服、溫進一服、得吐者、止後服。

梔子甘草豉湯方
梔子
十四個、擘甘草二兩、炙 香豉四合、綿裹
右三味、以水四升、先煮梔子、甘草、取二升半、
內豉、煮取一升半、去滓、分二服、溫進一服、得吐者、止後服。

梔子生薑豉湯方
梔子
十四個、擘 生薑五兩、切 香豉四合、綿裹
三味、以水四升、先煮梔子、生薑取二升半、
內豉、煮取一升半、去滓、分二服、溫進一服、得吐者、止後服。

和訓:
發汗して後、水藥口に入るを得ざるは逆と爲す。
若し更に發汗せば、必ず吐下して止まず。
發汗吐下して後、虛煩して眠を得ず、
若し劇しき者は、必ず反覆顛倒、心中懊儂し、梔子豉湯之を主る。
若し少氣する者は、梔子甘草豉湯之を主る。
若し嘔する者は、梔子生薑豉湯之を主る。三十八。
梔子豉湯方
梔子十四個、擘く 香豉四合、綿で裹む
右二味、水四升を以て、先ず梔子を煮て、二升半を得、
豉を内れ、煮て一升半を取り、滓を去り、分かちて二服と為し、
溫めて一服を進め、吐を得る者は、後服を止む。
梔子甘草豉湯方
梔子
十四個、擘 甘草二両、炙る 香豉四合、綿裹
右三味、水四升を以て、先ず梔子、甘草を煮て、二升半を取り、
豉を内れ、煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かち、
溫めて一服進め、吐を得る者は、後服を止む。
梔子生薑豉湯方
梔子十四個、擘 生薑五兩、切 香豉四合、綿裹
右三味、水四升を以て、先ず梔子、生薑を煮て、二升半を取り、
豉を内れ、煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かち、
溫めて一服を進め、吐を得る者は、後服を止む。


發汗後、水藥不得入口爲逆。若更發汗、必吐下不止
発汗法を行ったあと、
水も薬も入らないのは逆証にあたる。
もともと胃腸が弱っている者に、解表を行おうとして発汗させたが
表邪が除かれないばかりか、
胃腸がさらに虚して食物だけでなく
水も薬も受け付けなくなってしまった。
さらに発汗させると、
気が中焦を守れなくなり嘔吐や下痢が止まらなくなってしまう。

發汗吐下後、虛煩不得眠、
若劇者、必反覆顛倒、心中懊儂、梔子豉湯主之

発汗法は外を解し、下法は内を攻め、
吐法は上方の邪を除くという具合に、
実邪を除く目的で設けられている。
これらを連続して使用すれば、誤治ではないにしても
正気を消耗させてしまうことになり、
水火・陰陽のバランスが一時的に崩れ、
心火の炎上が激しく煩が甚だしければ、
寝返りして、気持ちが晴れ晴れとしなくなる。
このような時は梔子豉湯を用いて治療していくとよい。

若少氣者、梔子甘草豉湯主之
少気→気虚不足のことを指す。
主な症状としては、発語に力がない・呼吸が微弱で促迫する
身体の倦怠感・疲れやすい・脈弱無力が診られる。
本症の多くは五臓の気虚を原因としており、
特に中気不足・肺気虚損・腎気損傷が最もよくみられる。
ここでは中気不足によるもので、
この場合は梔子豉湯に甘草を加え中気を補えばよい。

若嘔者、梔子生薑豉湯主之
胃逆が起こり嘔吐する場合には、
生薑を加えて調胃を図ればよい。
陰陽のバランスを取ろうとすれば、
先ず中焦を調和しなければいかないという
原則に従っているのである。

梔子豉湯(しししとう)
方義

山梔子
山梔子

山梔子(さんしし)
基原:
アカネ科のクチナシ、
またはその他同属植物の成熟果実。
球形に近いものを山梔子、
細長いものを水梔子として区別する。

山梔子は苦寒で清降し緩除に下行し、
心・肺・三焦の火を清して利小便し
気分に入って瀉火除煩・泄熱利湿するとともに、
血分に入り凉血止血・解毒に働く。
熱病の熱蘊胸膈による心煩懊憹、
熱欝血分による吐衄下血・瘡癰熱毒、
湿熱蘊結による淋閉黄疸などの要薬である。

香豉(こうし)
基原:マメ科のダイズの成熟種子を蒸して発酵加工したもの。
香豉は辛苦甘で疎散宣透の性質をもち、
表邪を宣透し鬱熱を宣散し、解表して傷陰しない。
外感表証の発熱・頭痛・無汗や、
邪熱内擾胸中の心胸煩悶・虚煩不眠に適する。
ただし、宣散には働くが、清熱の効能はもっていない。




梔子甘草豉湯(ししかんぞうしとう)

梔子豉湯(山梔子・香豉)上記を参照

甘草
甘草

甘草(かんぞう)
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。

梔子生薑豉湯(しししょうきょうしとう)

梔子豉湯(山梔子・香豉)上記を参照

生薑
生薑

生薑(しょうきょう)
基原:ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を
乾生姜ということもあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ
風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。

提要:
発汗・吐・下の各法を用いたあと、虚煩が生じた場合の証治について

訳:
発汗した後、水も薬も飲み込めないならば、
これは誤治によってひきおこされた状態である。
ましさらに発汗させれば、嘔吐や下痢が止まなくなるはずだ。
発汗や催吐および攻下の方法を使用すれば、
虛煩して静かに安眠することができず、
若し劇しき者は、必ず反覆顛倒、心中懊儂し、梔子豉湯で治療する。
若し少氣する者は、梔子甘草豉湯之を主る。
若し嘔する者は、梔子生薑豉湯之を主る。第三十八法。

梔子豉湯方
梔子
十四個、裂く 香豉四合、布で包む

右の二味を、四升の水で、先に梔子を煮て、二升半にし、それからに香豉を入れ、一升半になるまでさらに煮て、
滓を除き、これを二回分に分け、そのうち一回分を温かい内に服用し、嘔吐すれば、第二服目は服用しない。

梔子甘草豉湯方
梔子十四個、裂く
甘草二兩、炙る 香豉四合、布で包む
右の三味は、四升の水で、先に梔子、甘草を煮て、二升半にし、それから香豉を入れ、一升半になるまでさらに煮て、
滓を除き、これを二回に分け、その一回分を温かいうちに服用し、嘔吐すれば、第二服目は服用しない。

梔子生薑豉湯方
梔子十四個、裂く 生薑五両 香豉四合、布で包む。
右の三味は、四升の水で、先に梔子、生薑を煮て、二升半にし、それから香豉を入れ、一升半になるまでさらに煮て、
滓を除き、これを二回に分け、その一回分を温かいうちに服用し、嘔吐すれば、第二服目は服用しない。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

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