「太衝」の穴性について学んでいきます。

<要穴>
足厥陰肝経:原穴・兪土穴

<主治>
肝の臓病、経病、気化病および肝と関係する臓腑器官の疾病。

肝の主な生理は「疏肝」と「肝蔵血」であることから
太衝の穴性は「疏肝理気」と「活血化瘀」に整理できる。
「疏肝理気」することで、
「疏肝」により「通驚」「潜陽」「熄風」「解鬱」「助運化」
「活血化瘀」により、「清血」「鎮痛」することができる。
「調補衝任」により、「調補肝腎」「補血」も担う。


<治療範囲>

① 肝気、肝火、肝風などの病証

肝は、風木の臓であり、体陰にして用陽、
その性は剛強で鬱結化火しやすく、陽亢生風しやすい。

「昇」「動」を主っている。
その体は筋に在り、全身の筋骨関節の屈伸を主っている。
また、肝は条達を喜び、疏泄を主どり、抑鬱を嫌う。
精神情志の調節機能と肝気とは密接な関係にあり、
鬱怒により肝を損傷すると気機は阻滞する。
気鬱化火すると、血絡を損傷することがある。
肝陽が強くなりすぎて血が気とともに昇ると、肝風が内動する。
寒邪が肝脈に阻滞すると、気機は阻滞する。

肝虚血少のため筋脈失養となった場合、あるいは血虚生風となった場合、
肝陰が不足して肝虚陽亢となった場合、肝血不足、
衝脈空虚および肝経湿熱などによっておこる病証に用いる。
肝陰不足、肝腎陰虚の証候では、肝腎併治法が多く用いられる。
補腎すれば涵木柔肝がはかれる。

肝火を清め、肝陽を平げ、肝風を熄め、下焦の湿熱を疏泄することができる。

 

② 眼疾患および血証

肝は目に開竅している。
「目は肝の官なり」「肝気は目に通じ、肝和せば則ち目五色を弁ずるを能う」
肝血が不足するか、肝火が上炎して起こる眼疾患の治療では常用穴である。

肝は血臓であり、血液の貯蔵と調節を司っている。
気は血の師であり、血は気とともにめぐる。
したがって、気がめぐれば血めぐり、気滞れば血瘀となる。
また気が鬱すると、肝は損傷する。
肝がうまく疏泄すれば、気がスムーズにめぐり、
気がスムーズにめぐれば血はうまく流れる。
血液の昇降は、気によって決定されるのである。
疏肝理気の作用のある太衝穴には、活血化瘀の作用がある。

 

③ 肝と関係ある他臓の病証

経脈の流注関係を通じて、肝と脾・胃・肺・心・腎・胆と密接に関係する。
肝気犯胃、肝脾不和、肝火犯肺など。

肝は腎水の滋養を受けている。
腎陰が不足して精が血に化せなくなり、血が肝を養うことができなくなると
肝陰不足、肝陽偏亢の病証がおこる。
肝腎同治の考えに基づいて本穴を配穴して用いることができる。

 

 

<古典>
『霊枢』九針十二原篇
「凡そこの十二原は、五臓六腑の疾あるを治することを主るものなり」

「五臓六腑の疾あるや、応十二原に出づ、十二原は各々出づる所あり。

明らかに其の原を知り、其の応を観て五臓の害を知る。」

『霊枢』寿夭剛柔篇
「病、陰の陰に在るものは、陰の滎穴・輸穴に刺す」

『素問』咳論篇
「臓を治すは、その兪を治す」

 

原穴は、人体の原気の作用が現れる部位であり、そのため原と称されている。
原穴は、臓腑の真気が輸注するところであり、人体の原気の作用が現れるところでもある。
原穴が臓腑病を治療する重要穴であり、
原穴は五臓の診断穴として用いられることもある。

 

『難経』六十六難
「臍下の腎間の動気は、人の生命なり、十二経の根本なり、
ゆえに名付けて原という。

三焦は、原気の別使なり、三気を通行し、五臓六腑に経歴するを主る。
原とは三焦の尊号なり。
ゆえに止まるところすなわち原となし、
五臓六腑の病あるは、皆その原を取るなり」

十二経の根本になる臍中腎間の動気を「原」というが、
原穴の「原」はこれのことで、三焦との関係が厳密であるといわれている。
先天の元気、腎間の動気、人間生命の根源と後天の元気、三焦の元気などと解釈されている。

太衝は、足厥陰肝経絡の原穴であり、肝臓の真気が輸注するところである。

 

つづく

掲載している経絡図は『類経図翼』を勉強しながら模写しました。

 


《参考文献》
『臨床経穴学』 著:李世珍
『中医臨床』第33巻第2号 p.134 穴性論 著:李昇昊 他
『中医臨床』第36巻第3号 p.128 鍼灸配穴法  著:髙士将典
『穴性学ハンドブック』 著:佐藤弘 伴尚志
『類経図翼』 著:張介賓

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