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こんにちは、為沢です。

今日は魏〜晋代の医家、王叔和おうしゅくかについて御紹介致します。

王叔和
王叔和

王叔和に関する史料はほとんど残されておらず、
北魏時代(439年〜534年)の高湛こうたんが『養生論』で王叔和を評して記しています。

『養生論』高湛こうたん
“王叔和、性沉靜、好著述、考覈遺文、
 採摭羣論、撰成《脈經》十卷;
編次張仲景方論、編為三十六卷、大行於世。”

和訓:
王叔和は沈静の性で、著述を好み、遺文を考覈こうかく(考え調べること)して
群論を採摭さいせきし、脈経十巻を撰成し、
張仲景ちょうちゅうけいの方論を編次(順を追って編集すること)し三十六巻とし、世に大行す。

王叔和は大きく2つの面で貢献したとされております。
その1つに①『脈経』を著したことと、
2つに張仲景の散逸した著作②『傷寒論』を整理し再編したことにあります。

①『脈経みゃくきょう
紀元前3世紀以前の中国に伝承された脈学に関する諸説を総括した書物です。

『脈経』序
“今撰集岐伯以來、逮於華佗、經論要決、合為十卷。
 百病根原、各以類例相從、聲色證候、靡不該備。”

和訓:
今岐伯以来を撰集し、華佗およんで、
要決(肝要な奥義)を經論けいろん(筋道を立てて論ずる)し、合わせて十卷と為す。

百病の根原は、各類例を以て相い從い、
聲色(声と顔色)、証候、まさに備るべからずはなし。

脈経の序からの引用です。
岐伯から華佗にかけての古代脈学の諸文献を系統的に整理し研究し、
収集した知識を基に、脈学をまとめ上げたと記してあります。
後の歴代の医家達はこの『脈経』に高い評価を与え、
『黄帝内経』『神農本草経』『傷寒論』『針灸甲乙経』と並ぶ、
脈学の経典として位置づけております。

 

②『傷寒論』の編纂
張仲景による『傷寒論』と『金匱要略』は
当時の戦乱で散逸してしまいましたが、
王叔和がこれを収集し復刻するに至りました。
なので、現代まで流伝している版本は、
いずれも王叔和の編纂によって完成したものであります。
後世の医家達は、この王叔和の業績を讃えてますが、
同時に“編纂を機に自分の意見を混同しているところが多いぞコノ野郎!”
とその功罪を責める意見も多々ありました…。
そんな中、清代の徐霊胎じょれいたい【名医列伝】徐霊胎)は
“後世の医家が王叔和に文句垂れるのは道理に合わんやろが!!”
と彼を擁護しております。
確かに、王叔和が傷寒論を編纂しなければ、
その存在や内容自体を知る由もなかったわけですから
文句言うのは違いますね。


参考文献:
『東洋医学 基礎編』
『いちばんわかる!東洋医学のきほん帳』学研
『東洋医学概論』医道の日本社
『現代語訳◉黄帝内経素問』
『現代語訳◉黄帝内経霊枢』
『中国医学の歴史』
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社

画像:
『図像本草蒙筌』総論,首巻,巻之1-12
早稲田大学図書館古典籍総合データベースより
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ni01/ni01_00815/index.html

為沢

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