<近日開催予定のイベント>
11月11日(土):参加申込み受付中!【第四回 一般向け東洋医学養生講座 】(11月11日)


こんにちは、為沢です。

今回は張景岳ちょうけいがくの『質疑録しつぎろく』の第三章「論中風半身不遂在左属血在右属氣」の其の一です。


和訓:
中風の半身不遂は、
左に在るものは血に属し、右に在るものは氣に属すを論ず

内経の但だ左右と言える者は、陰陽の道路のことにして、
未だかつて人身の氣血を以て左右に分かたざるなり。
人の氣血は、一身に周流し、氣は橐籥たくやくの如く、血は波瀾の如し、
氣は血に爲りて行き、血は氣に爲りて配さる、陰陽は相維りて、
循環することきわまり無し、何ぞ嘗て左右の分の有らんや。
丹溪が中風症を論じてり、半身不遂を左右に分ち、
左に在る者を血虚に属すと謂い、四物を以て主と爲し、竹瀝、薑汁を加う。
右に在る者を気虚に属すと謂い、四君を以て主と爲し、竹瀝、薑汁を加う。


中風の半身不随は、左に在るものは血に属し、
右に在るものは気に属すを論ず

・内経の中で、左右といっているのは
陰陽の道路のことについてであり、
人身の気血の左右に分けているのではない。

・気血はくまなく全身を周流するものであり、
気はあたかも橐籥(=ふいご)のようなものであり、
血は波瀾のようなものである。
気は血の助けを借りて巡り、血も気によって全身に配られる。

・気と血は陰と陽の相互依頼の関係があって、
それによっていつまでも全身を循環している。
それなのにどうして気血を左右に分けるのであろうか?

・朱丹溪が中風症を論じてから半身不随を左右に分かつようになった。


朱丹溪の学説
『丹溪心法』中風

”半身不遂、大率多痰、在左屬死血瘀(一作少)血、
在右屬痰有熱、並氣虛。
左以四物東加桃仁、紅花、竹瀝、姜汁、
上以二陳湯四君子等東加竹瀝、姜汁”

○半身不随が左に在る者=血虚
治法:四物湯+竹瀝+生薑汁

こちらを参照→【方剤学】四物湯

竹瀝
基原:イネ科のハチクなどの竹竿を加熱して流れた液汁。

竹瀝は甘寒でごく滑利であり、
心・肺・胃三経の火を清して滌痰除煩・定驚透路し
「痰家の聖薬」といわれる。
肺熱痰壅・中風痰迷・痰熱驚癇および
痰留経路の肢体麻木拘急などに適用する。

○半身不随が右に在る者=気虚
治法:四君子湯+竹瀝+生薑汁

四君子湯

人参
人参

人参
基原:ウコギ科のオタネニンジンの根。
加工調整法の違いにより種々の異なった生薬名を有する。

人参は甘・微苦・微温で中和の性を稟け、
脾肺の気を補い、生化の源である
脾気と一身の気を主る肺気の充盈することにより、
一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。
元気が充盈すると、益血生津し安神し智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。
それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、
気血津液の不足すべてに使用でき、
脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、
肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、
心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、
津液虧耗の口乾消渇などに有効である。
また、すべての大病・久病・大吐瀉による
元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、
もっとも主要な薬物である。

白朮
白朮

白朮
基原:キク科のオオバナオケラの根茎。
この他、日本薬局方では
オケラの周皮を除いた根茎を規定しており、
日本では一般にこれが流通している。

白朮は甘温で補中し苦で燥湿し、
補脾益気・燥湿利水の効能を持ち、健脾の要薬である。
脾気を健運し水湿を除いて痰飲・水腫・泄瀉を消除し、
益気健脾により止汗・安胎にも働く。
それゆえ、脾虚不運の停痰停湿・泄瀉腫満に対する主薬であり、
表虚自汗および脘腹脹満・胎動不安にも用いる。

茯苓
茯苓

茯苓
基原:サルノコシカケ科のマツホドの外層を除いた菌核。

茯苓は甘淡・平で、甘で補い淡で滲湿し、
補脾益心するとともに利水滲湿に働き、
脾虚湿困による痰飲水湿・食少泄瀉および
水湿内停の小便不利・水腫脹満に必須の品であり、
心脾に入って生化の機を助け寧心安神の効能をもつので、
心神失養の驚悸失眠・健忘にも有効である。
茯苓の特徴は
「性質平和、補して峻ならず、利して猛ならず、
よく輔正し、また祛邪す。脾 虚湿盛、必ず欠くべからず」
といわれるが、
性質が緩やかであるところから
補助薬として用いることが多い。

甘草
甘草

炙甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。

甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・
止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。

つづく…


参考文献:
『中国医典 質疑録』 緑書房
『中国医学の歴史』 東洋学術出版社
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here