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水たまり
水たまり

下野です。
今回は「諸病の主薬」の第二回になります。


【原文】
左癱属血虚、須用芎帰、為主。
右瘓気虚、須用参朮、為主。
諸風、須用防風、羗活、為主。
傷寒頭痛、羗活、川芎、為主。
遍身疼痛、須用蒼朮、羗活、為主。

<第三に続く>


【解説】
左半身不随は血虚に属す。
芎帰を使用すべし。

右半身不随は気虚に属す。
参朮を使用すべし。

風の病には、
防風、羗活を使用すべし。

傷寒の頭痛には、
羗活、川芎を使用すべし。

体の疼痛には、
蒼朮、羗活を使用すべし。

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芎帰、参朮は
二種類の生薬を表していると考えられるので、
それぞれ記載していきます。

芎帰きゅうき

川芎せんきゅう

川芎
川芎

セリ科のマルバトウ属植物の根茎。原名は芎藭。
性味:辛・温
帰経:肝・心包・胆
効能:
①活血行気
・気血瘀滞による月経不順・無月経・月経痛など。
方剤例 → 四物湯。
・肝鬱気滞・血瘀の胸脇痛。
方剤例 → 柴胡疏肝散。
・瘀血痺阻心脈による挟心痛。
方剤例 → 冠心Ⅱ号。
・火毒壅盛の気滞血瘀による皮膚化膿症など。
方剤例 → 透膿散。
・打撲外傷による内出血の腫脹・疼痛。

②祛風止痛
・風寒の頭痛に。
方剤例 → 川芎茶調散。
・風熱の頭痛に。
方剤例 → 川芎散。
・風湿の頭痛に。
方剤例 → 羌活勝湿湯。
・血虚の頭痛に。
方剤例 → 加味四物湯。
・風寒湿痺の関節痛に。
方剤例 → 三痺湯。

当帰とうき

当帰
当帰

セリ科の根をいう。
根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
性味:甘・辛・苦・温
帰経:心・肝・脾
効能:
①補血調経
・血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・眩暈・目がかすむ・動悸・月経不順などに。
方剤例 → 四物湯。
[組成] 当帰・川芎・白芍・熟地黄
・大出血のあと、あるいは気虚をともなうときに。
方剤例 → 当帰補血湯。
・虚寒の腹痛・冷えなどをともなうときもに。
方剤例 → 当帰生姜羊肉湯。

②活血行気・止痛
・気滞血瘀の疼痛・腹腔内腫瘤などに。
方剤例 → 膈下逐瘀湯。
・打撲外傷による腫脹・疼痛に。
方剤例 → 活絡効霊丹。
・痺証のしびれ痛みにも。
・癰疽瘡瘍にも。

③潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 潤腸丸。

参朮じんじゅつ

・人参

人参
人参

ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾
効能
①補気固脱
・大病・久病・大出血・激しい吐瀉などで
元気が虚衰して生じるショック状態で脈が微を呈するときに。
・亡陽で四肢の冷え・自汗などを呈するときに。
方剤例 → 参附湯。

②補脾気
・脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振・四肢無力・泥状〜水様便などの症候に。
・気虚下陥による内臓下垂・子宮下垂・脱肛・慢性の下痢などの症候に。
方剤例 → 補中益気湯。
・気虚下陥
元気がない・疲れやすい・動くと息切れがする・
四肢がだるく無力・立ちくらみ・頭痛・眩暈などに。
・気虚発熱
発熱・体の熱感・自汗・悪風・口渇があり熱い飲食を欲する・息切れ・元気がない。

③益肺気
肺気虚による呼吸困難・咳嗽・息切れ(動くと憎悪する)・自汗などの症候に。
方剤例 → 人参蛤蚧散。

④生津止渇
・熱性の気津両傷で高熱・口渇・多汗・元気がない・脈が大で無力などに。
・気津両傷による元気がない・息切れ・口渇・皮膚の乾燥・脈が細で無力などに。
方剤例 → 加減復脈湯。
・消渇証の口渇・多尿に。

⑤安神益智
・気血不足による心神不安の不眠・動悸・健忘・不安感などに。

⑥その他
血虚に対し補血薬と用いて益気生血し、
陽虚に対し補陽薬と使用して益気壮陽し、
補血・壮陽の効果を強める。
正虚の表証や裏実正虚に、
解表薬や攻裏薬とともに少量を使用する。

白朮びゃくじゅつ

白朮
白朮

キク科のオオバナオケラの根茎。
性味:甘・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①健脾益気
・脾気虚による食欲不振・泥状便・水様便・腹満・倦怠無力感。
方剤例 → 四君子湯・参苓白朮散。
・虚寒の腹痛や冷えに。
方剤例 → 理中湯・附子理中湯。
・脾虚に積滞があり、腹満や腹痛に。
方剤例 → 香砂枳朮丸。

②燥湿利水
・脾虚で水湿が停滞したための浮腫・尿量減少・泥状便・水様便などに。
方剤例 → 防已黄耆湯・啓脾湯。
・虚寒の冷えや寒がるを伴うときに。
方剤例 → 実脾湯・真武湯。
・水飲の滞りによるふらつきやめまいに。
方剤例 → 苓桂朮甘湯。
・湿困脾陽の腹満や下痢に。
方剤例 → 四苓散・五苓散・胃苓湯。

③固表止汗
・表虚の自汗に。
方剤例 → 玉屏風散。

④安胎
・胎動不安・妊娠中の腹痛・性器出血など。

⑤その他
・風湿痺の関節痛に。

防風ぼうふう

防風『中医臨床のための中薬学』より
防風『中医臨床のための中薬学』より

セリ科のボウフウの根および根茎。
帰経:辛・甘・微温
性味:肝・脾・膀胱
効能:
①散風解表
・風寒表証の発熱・悪寒・頭痛・身体痛などの症候時に用いる。
方剤例 → 川芎茶調散。

②勝湿止痛
・風寒湿痺の関節痛・筋肉のひきつりに用いる。
方剤例 → 防風湯。

③祛風止痛
・破傷風など、外風による痙攣・ひきつりに用いる。
方剤例 → 玉真散。

羗活きょうかつ

羗活『中医臨床のための中薬学』より
羗活『中医臨床のための中薬学』より

中国産は、セリ科の多年草キョウカツ、
または寛葉羗活の根と根茎。
日本産はウコギ科のウドの根。
性味:辛・苦・温
帰経:膀胱・肝・腎
効能:
①散寒燥湿解表
・風寒湿邪の外感による悪寒、発熱、関節の痛みに。
方剤例 → 九味羗活湯。

②祛風湿、止痛
・風寒湿痺の関節痛に。
方剤例 → 羗活勝湿湯。

◉蒼朮

蒼朮『中医臨床のための中薬学』より
蒼朮『中医臨床のための中薬学』より

キク科のホソバオケラ、
もしくはシナオケラの根茎。
性味:辛・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①祛風除湿
・風湿痺、寒湿痺の関節痛や肢体の痛みに。
方剤例 → 二朮湯・桂枝加朮附湯。
・湿熱痺の関節痛や腫れ、熱感に。
方剤例 → 二妙散・三妙丸。

②燥湿健脾
・湿困脾胃の腹満や胸苦しい、悪心嘔吐、下痢などに。
方剤例 → 平胃散・胃苓湯。

③散寒解表
・外感風寒の頭痛や発熱、無汗、悪寒などに。
方剤例 → 神朮散。

④除障明目
・夜盲や角膜混濁、白内障などに。
方剤例 → 蒼朮丸。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン

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是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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