五味子
五味子

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁少陰病脈証并治 三百十五章。
この章では、前章を受け、服薬後の証治と予後について
詳しく述べております。


三百十五章

少陰病、下利、脉微者、與白通湯。
利不止、厥逆無脉、乾嘔、煩者、
白通加豬膽汁湯主之。服湯脉暴出者死、微續者生。
白通加豬膽湯。方十四。

葱白四莖    乾薑一兩   附子一枚、生、去皮、破八片 人尿五合 豬膽汁一合
右五味、以水三升、煮取一升、去滓、
内膽汁、人尿、和令相得、分溫再服。若無膽、亦可用。

和訓:
少陰病、下利し、脉微なるものは、白通湯を与う。
利止まず、厥逆して脉なく、
乾嘔して煩するものは、白通加猪胆汁湯之を主る。
湯を服して脉暴に出ずるものは死し、微かに続くものは生く。
白通加猪胆湯。方十四。

葱白四莖 乾薑一両 附子一枚、生、皮を去る、八片に破る
人尿五合 猪胆汁一合
右五味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、
胆汁、人尿を内れ、和して相得しめ、分かち温め再服す。
若し胆なくも、亦用うべし。


少陰病、下利、脉微者、與白通湯
少陰病で下痢して脉微を示している場合は、白通湯が主治する。
温熱の療法で寒証を治療するのは、病機に適した療法である。

利不止、厥逆無脉、乾嘔、煩者、白通加豬膽汁湯主之
陰盛寒凝が過度に激しいからといって、
大熱の薬湯を一度に与え過ぎると、
寒冷と大熱が内に衝突し、陰陽が不和になって
交流しないようになり、下痢不止、厥逆、無脉、乾嘔、
煩等の真陰下脱、虚陽上浮の危険な証候が出現する。
これは誤治ではなく、考慮が充分でなかっただけであり、
大熱により散寒とならなかったのである。
従って白通湯で通陽させるだけでなく、
気味が寒・苦・鹹の人尿と、猪胆汁を使って薬力を高め、
病力を反対に下げるのである。
これにより心腎・陰陽が交流して均衡は取れていく。

服湯脉暴出者死、微續者生
服用後に脉気が徐々に回復すれば予後はよいが、
脈気が突然出現すれば、そのあとすぐに脉力は停止する。
これは胃気が脱しているので、
病は治らないのである。

白通加猪胆湯

葱白『中医臨床のための中薬学』より
葱白『中医臨床のための中薬学』より

葱白
基原:
ユリ科のネギの新鮮な根部に近い白い茎。

葱白は辛温で、辛散温通により上下を宣通し
表裏を通達し、外は風寒の邪を散じて解表し、
内は陽気を通じて止痛する。
風寒感冒の発熱悪寒に適するほか、
陰寒凝滞を宣通し上下・内外の陽気を通じるので、
陰寒内盛による上の戴陽や外の格陽にも有効である。
ただし発汗の力は弱いので、風寒表証に用いる。

乾薑
乾薑

乾薑
基原:
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。

乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。

附子
附子

附子
基原:
キンポウゲ科のカラトリカブト、その他の同属植物の子根。

加工・炮製して利用することが多い。
附子は辛熱壮烈であり、
「走きて守らず」で十二経を通じ、
下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、
皮毛に外達して表の風寒を散じる。
それゆえに亡陽欲脱の身冷肢冷・大汗淋漓・
吐利不止・脈微欲脱てんなどには回陽救逆し、
腎陽不足の陽痿滑精・腰膝冷弱には補火壮陽し、
脾腎陽虚・陰寒内盛の心腹冷痛・吐瀉転筋には温裏散寒し、
陽虚不化水湿の身面浮腫・腰以下種甚には
助陽行水して冷湿を除き、
風寒湿痺の疼痛麻木には祛風散寒止痛し、
陽気不足の外感風寒で
悪寒発熱・脈沈を呈するときは助陽発表する。
このほか、補益薬と用いると
一切の内傷不足・陽気衰弱に使用できる。

人尿
基原:
健康人の小便の中間尿を用いる。
とくに10歳以下の男子の小便を童便といい、良品とされている。
また妊娠2~3ヶ月の
健康な妊婦の尿を妊娠尿として用いることもある。

滋陰清熱・止血・活血化瘀の作用があり、
結核などの発熱や喀血、高齢者や病後の衰弱に用いる。
傷寒論では下痢で陰液まで
損なわれたときに白通湯に猪胆汁とともに人尿を配合する。

猪胆汁『中医臨床のための中薬学』より
猪胆汁『中医臨床のための中薬学』より

猪胆汁
基原:
イノシシ科のブタの胆汁。

猪胆汁は寒滑で、寒で清熱し滑で潤燥し、
清心・凉肝胆の効能を持ち、
古来から導腸通便・清肝明目に用いられている。

提要:
三百十四章を受け、服薬後の証治と予後について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、下痢し、脉が微となった患者には、白通湯を投与する。
服薬後も下痢が止まらず、しかも四肢が厥冷し、脉が触知されず、
乾嘔してイライラする場合は、白通加猪胆汁湯で治療する。
服薬して脈拍が突然に出現するのは死証であり、
脉が次第に回復してくれば生存の望みがある。処方を記載。第十四法。
葱白茎四本 乾薑一両 附子一個、生、皮を除く、八片に割る 人尿五合 猪胆汁一合
右の五味は、三升の水で、一升になるまで煮て、滓を除き、
胆汁と人尿を入れて、よく混和し、二回に分けて温服する。
もし猪胆がなければ、これを入れないでも用いることができる。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:為沢 画

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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