紅葉の葉も色づいてきました(10月中旬 緑地公園へ向かう歩道にて)
紅葉の葉っぱも色づいてきました (10月中旬 緑地公園へ向かう歩道にて)

 


こんにちは、大原です。
前回までは、結胸証のひとつ
「大結胸証」について
述べてきましたが、その続きで
まず「小結胸証」について
述べていきます。

条文138条 小結胸証とは
(参考リンク:【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百三十七章・百三十八章

小結胸証は、大結胸証と同様に
熱邪と痰飲が胸中で結合したものですが、
・部位が心下のみ
・按じると痛む
といった点が大結胸証と異なります。
(条文137条に、大結胸証の範囲や症状が述べられています。)

脈は浮滑となり、これは
浅いところに痰(痰熱)があることを示します。

すなわち、小結胸証とは
大結胸証に比べて病変部位は浅く、
症状も比較的軽いといえます。

小結胸証に対しては小陥胸湯を用います。
以下、『中医臨床のための方剤学』から、
方剤の組成について抜粋します。

小陥胸湯:
黄連6g、半夏12g、栝楼実(かろじつ)30g
→祛痰剤(清熱化痰剤)に分類

≪参考≫  大陥胸湯:
大黄18g、芒消21g、甘遂(カンスイ)1~1.5g
(瀉熱破結の峻剤で、水熱の結合を破って流通させる。)
→瀉下剤(寒下)に分類

黄連は、大黄の清熱作用に比べて穏やかで、
半夏は、甘遂の逐水作用に比べて緩やかであり、
栝楼実は痰濁を下行させる働きがあるとされています。

条文139条
心下に寒飲の邪が結滞している場合

(参考リンク:【古医書】傷寒論:弁太陽病脈証并治(下)百三十九章・百四十章

「太陽病で横臥しているとかえって苦しい」
という状態は、
心下に邪気が停滞しているためである
と述べられています。

すなわち、
太陽病の場合、脈は浮緊となるはずですが、
微弱の脈を呈する場合は、
病人が体質的に脾虚裏寒で
心下に寒飲の邪を有しているためです。

この場合の治法は、太陽病の表邪を解し
心下の水飲をさばく解表化痰が妥当となります。
ですが、誤って下法を用いた場合、
下痢が止まると
太陽の邪は裏に内陥し水飲と結合して
結胸証を形成することになります。

また、下痢が止まらない場合は
裏寒に表熱が重なった「協熱下痢」を呈します。
これは表裏同病
(表の身熱、内の脾虚による泄瀉が同時におこる)を
呈するためであるとされています。

条文140条
太陽病を誤って攻下した場合、その変証と脈象について

(参考文献によると、
原文にある内容は一部訂正するべきであるとのことから、
そのように訂正したものを記していきます。)

<太陽病を誤治した後の脈象と変証について>
・脈浮のままで結胸の症状なし 
 → 表邪が裏に入っていないため、やがて正気が勝ち治癒に向かう

・脈促 → 熱邪旺盛 → 結胸する可能性が高い

・脈細数 → 陰虚火旺(少陰の熱証) → 少陰の咽痛がみられる

・脈弦 → 少陽に伝入 → 胸脇苦満

・脈沈緊 → 裏寒 → 寒によって胃気上逆すれば嘔気あり

・脈沈滑 → 湿熱が大腸に迫る → 下痢

・滑数 → 裏の熱邪が旺盛 → 下血

条文141条
寒実結胸証について

(参考リンク:【古医書】傷寒論:弁太陽病脈証并治(下)百四十一章・百四十二章

本条文の前半は太陽病について述べられており、
後半は、寒実結胸証について述べられています。
これは、大結胸証、小結胸証に加えて、
もう一つの結胸証ということになります。

寒実結胸証
熱邪と痰飲が結びついた
他の二つの結胸証とは異なり、
寒邪と痰飲が結合して形成されたものです。

症状も口渇などの熱証はみられず、
悪寒や喘咳など、陽気・津液のめぐりが
悪くなって起こる症状がみられます。

治法は温逐水寒・除痰破結で、
方剤は白散(別名:三物白産)を用いるとされています。

白散(三物白産):
桔梗・貝母各3と、巴豆1の割合で散にし、1回0.5gを湯で服用
→瀉下剤(温下)に分類

条文142条
太陽と少陽の伴病について

太陽病が完全に治まらないうちに
少陽経にも邪実が侵入して少陽病も出現するものです。

ちなみに、「伴病」とよく似た用語に
「合病」がありますが、
「合病」は二経同時に発症するもので、
「伴病」は二経の発症に時間差があるものをいいます。

太陽と少陽の併病では、
少陽経の気滞によって
心窩部の鞕満・痛みなどの症状を呈し、
時ニハ結胸ノ如ク』と、
一見結胸のようにみえることがあるとされています。

この場合、少陽病があるため、
発汗スベカラズ』とあります。
発汗法を用いてしまうと
胃中の津液を損傷し、
少陽の邪熱が陽明に伝入してしまい
陽明腑病(譫語など)を発するためです。

すなわち、少陽の邪を
優先的に解除すべきということです。

最後に、少陽の邪が解さずに
陽明病も併存している状態に対しては
期門ヲ刺スベシ』と、
やはり少陽経の熱邪を
優先的に解除すべきということですね。

いつも長い文章の記事を読んで頂いて
ありがとうございます。
まったくの余談ですが、
この記事を作成するにあたり、
2年前の為沢先生の記事リンクを
設定しておりますが、その中で
「青空将棋」の写真が目にとまり、
とても懐かしく感じました。
ギターと将棋がとてもマッチしていました(笑)
将棋界は、現在王座戦の真っ最中で、
やはり羽生王座が若手相手に力を見せているところです。

続きます。


参考文献:

『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会

*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。

大原

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