神戸ルミナリエ
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こんにちは、為沢です。
「2013年」という表記に慣れてきたと思ったら、
2013年が残り僅かになってしまいました(汗)

月日が流れるのは あっという間ですネ。
寒い日が続きますので体調管理に気をつけて下さい。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百五十八章。
この章では、心下痞証で中焦が虚して
下痢をした場合の証治について詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(下)百五十八章

傷寒中風、醫反下之、其人下利、日數十行、穀不化、
腹中雷鳴、心下痞鞕而滿乾嘔、心煩、不得安、醫見心下痞、
謂病不盡、復下之、其痞益甚、此非結熱、
但以胃中虛、客氣上逆、故使鞕也、甘草瀉心湯主之。
甘草四兩、炙 黄芩三兩 乾薑三兩
半夏半升、洗 大棗十二枚、擘 黄連一兩

右六味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升、溫服一升、日三服。

和訓:
傷寒中風、医反って之を下し、
其の人下利すること日に数十行、穀化せず、

腹中雷鳴、心下痞鞕して満し、乾嘔心煩して安きを得ず。
医心下痞を見て、病尽きずと謂い、
復た之を下し、其の痞益甚だし。

此れ結熱に非ず、但だ胃中虚し、
客気上逆するを以て、故に鞕からしむるなり。

甘草瀉心湯之を主る。
甘草四両、炙る  黄芩三両  乾薑三両  
半夏半升、洗う 大棗十二枚、擘く  黄連一両 
右六味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、
再び煎じて三升を取り、一升を温服し、日に三服す。


傷寒中風、醫反下之
太陽病表証の傷寒或いは中風証は、
その状況に応じて発汗法で解いていくが、
医者はこの原則に従わず攻下法を行った。

日數十行、穀不化、腹中雷鳴、
心下痞鞕而滿乾嘔、心煩、不得安、醫見心下痞

それにより脾胃が傷つき、
邪熱が虚に乗じて内陥し心窩で寒熱が入り混れ、

気機の昇降に影響が及んで心窩が
痞硬して膨満するようになったのである。

中焦で痞塞し、上下・水火が交流しないと同時に、
脾の陽気が上焦せず、

寒水が下焦の腸間に入るので、1日に数十回も
腸鳴下痢が起こり水穀を分けられないなどをみる。

また、胃気が下降せず逆に火を助け
上方を炎がすために乾嘔、心煩不得安をみる。

謂病不盡、復下之、其痞益甚、此非結熱
医者がこの病理を分からず、心下痞満、心煩不得安は
陽明熱実証によるものだと誤って判断して攻下法を行ったので
痞塞をさらに甚しくさせてしまったばかりか、
上焦・下焦で起こっていた症状も

攻下すると前に比べさらに激しくなってしまったのである。

但以胃中虛、客氣上逆、故使鞕也、甘草瀉心湯主之
胃にもともと熱実がないのに、
誤下を行えば必ず中焦が虚して

邪の内陥が起こり、それが心窩にとどまって
痞硬が出現するようになる。

この場合は甘草瀉心湯で調中補虚、
降逆消痞を行っていけばよい。

甘草瀉心湯

 

甘草
甘草

甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。

甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。

 

黄芩
黄芩

黄芩
基原:
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根、
内部が充実し、
細かい円錐形をしたものを
条芩、枝芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になったものを枯芩、
さらに片状に割れたものを片芩と称する。

黄芩は苦寒で、苦で燥湿し寒で清熱し、
肺・大腸・小腸・脾・胆経の湿熱を
清利し、
とくに肺・大腸の火の清泄に長じ
肌表を行り、安胎にも働く。

それゆえ、熱病の煩熱不退・肺熱咳嗽・湿熱の痞満・
瀉痢腹痛・
黄疸・懐胎蘊熱の胎動不安などに常用する。
また瀉火解毒の効能をもつので、
熱積による吐衄下血あるいは
癰疽疔瘡・目赤腫痛にも有効である。

とくに上中二焦の湿熱火邪に適している。

 

乾薑
乾薑

乾薑
基原:
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。

乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。

 

半夏
半夏

半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。

半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、
逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、痰湿犯胃の咳喘・
胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。

 

大棗
大棗

大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。
またはその品種の果実。

甘温で柔であり、
補脾和胃と養営安神に働くので、

脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。

また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。

ここでは、脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。

また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、

大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、

大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、
営衛を調和することができる。

 

黄連
黄連

黄連
基原:
キンポウゲ科のオウレン、
及びその他同属植物の根をほとんど除いた根茎。
以上は日本産である。
中国産は同属の川連・味連、雅連・峨眉連、
野黄連・鳳眉連、雲連などに由来する。

黄連は大苦大寒で、
寒で清熱し苦で燥湿し、

心・胃・肝・胆の実火を清瀉し、
胃腸積滞の湿熱を除き、

清心除煩・消痞・止痢に働き、
湿火欝結に対する主薬である。

それゆえ、心火熾盛の煩熱神昏・心煩不眠、
肝胆火昇の目赤腫痛・羞明流涙、
胃熱の清穀善飢、
腸胃湿熱の痞満嘔吐・腹痛泄瀉などの要薬である。
また、清熱泄火・解毒にも働くので、
疔毒癰腫・口舌潰瘍・湿瘡瘙痒および
迫血妄行の吐血衄血にも有効である。

提要:
心下痞証で中焦が虚して下痢をした場合の証治について。

訳:
傷寒あるいは中風の患者を、医者は誤って攻下法で治療した。
すると一日に数十回もの下痢がおこり、不消化便で、腹はゴロゴロと腸鳴があり、
心下部は痞えて硬く膨満し、からえずきして、イライラして不穏となった。
医者は心下部の痞塞を根拠に、裏実証がまだとれていないと判断し、
もう一度攻下法で治療したところ、心下部の痞えと膨満はさらに悪化した。
これはもともと有形の熱結実証ではなく、ただ胃中が空虚で、邪気が上逆しただけの
それで起こった硬い痞満である。甘草瀉心湯で治療する。処方を記載。
甘草四両、切る 黄芩三両 乾薑三両
半夏半升、洗う 大棗十二個、裂く 黄連一両
右の六味を、一斗の水で、六升になるまで煮て、滓を除き、三升になるまで更に煎じ、一升を温服し、一日に三回服用する。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

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是非参考文献を読んでみて下さい。

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