将棋クラブ / 鉛筆
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こんにちは、為沢です。
画は大阪・新世界の将棋クラブの光景。
写真載せたかったのですが、おじさん達への配慮のため絵に起こしました。
平日の昼間でしたが、なかなかディープな雰囲気でしたよ。
将棋ファンの大原氏と一度訪ねてみたいものです(笑)


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百四十七章。
誤治により、中焦が虚し邪が鬱滞し少陽病となった場合の証治について詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(下)百四十七章

傷寒五六日、已發汗而復下之、
脇滿微結、小便不利、渇而不嘔、但頭汗出、
往來寒熱、心煩者、此爲未解也。柴胡桂枝乾薑湯主之。

柴胡半斤 桂枝三兩、去皮 乾薑二兩 括蔞根四兩
黄芩三兩
牡蠣三兩 甘草二兩、炙
右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、
再煎取三升、溫服一升、日三服。初服微煩、復服汗出便愈。

和訓:
傷寒五六日、已に發汗して復た之を下し、
胸脇満して微かに結し、小便利せず、渇して嘔せず、但だ頭に汗出で、
往來寒熱、心煩する者は、此れ未だ解せずと為すなり。
柴胡桂枝乾薑湯之を主る。

柴胡半斤 桂枝三両、皮を去る 乾薑二両 括蔞根四両 黄芩三両
牡蠣二両、熬る 甘草二両、炙る
右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、
再び煎じて三升を取り、一升を温服し、日に三服す。
初めて服して微煩し、復た服して汗で便ち愈ゆ。


傷寒五六日、已發汗而復下之
傷寒の5〜6日、
病邪は少陽に内伝し始めているのに、発汗法と攻下法を行った。

脇滿微結、小便不利、渇而不嘔、
但頭汗出、往來寒熱、心煩者、此爲未解也

誤治により外では陽が汗と漏れ、
内では中焦が虚して水飲が動いたのである。

少陽枢が作用して邪を外に追い出すことができず、
胸脇の水飲が激しく動くため「胸満微結」となり、
下焦に循らないために「小便不利」となる。
相火が鬱滞し、上焦を炎かすので「心煩・渇而不嘔」となり、
水と熱が上蒸するから「但頭汗出」となる。
正邪の抗争が表裏の間で行われているので「往來寒熱」となる。

柴胡桂枝乾薑湯主之
この場合の治療は柴胡桂枝乾薑湯で少陽枢を動かし、
外・太陽に邪を至らせると同時に、
益気・温中・散水を行ない、気化させていく。

そして表裏を疎通させ、津気を和して汗出させれば癒える。

柴胡桂枝乾薑湯

 

柴胡
柴胡

柴胡
基原:セリ科のミシマサイコ、またはその種の根。

日本や韓国で栽培利用されているのは本種である。


柴胡は苦微辛・微寒で芳香を有し、
軽清上昇して宣透疏達し、
少陽半表半裏の邪を疏散して透表泄熱し、

清陽の気を昇挙し、
かつ肝気を疏泄して欝結を解除する。


それゆえ、邪在少陽の往来寒熱に対する主薬であり、

肝気欝結の胸脇脹痛・婦女月経不調や
清陽下陥の久瀉脱肛などにも常用する。

 

桂枝
桂枝

桂枝
基原:クスノキ科のケイの若枝または樹皮。


桂枝は辛甘・温で、
主として肺・心・膀胱経に入り、


兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、


外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、


散寒止痛・活血通経に働くので、

風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。

発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、


とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。


このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。

 

乾薑
乾薑

乾薑
基原:ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。

古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。


乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。


陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・

吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、
風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、


乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。

 

 

天花粉
天花粉

括蔞根(天花粉)
基原:
ウリ科のシナカラスウリなどの肥大根の外皮を去ったもの。

天花粉は甘酸微苦で寒凉であり、
甘酸で生津して止渇潤燥し、苦寒で清肺し、
血分に入り瘀血を消し結熱を散じて排膿消腫に働くので、
熱病傷津の口渇煩躁・消渇・肺熱燥咳・癰腫瘡毒などに適する。

 

黄芩
黄芩

黄芩
基原:シソ科のコガネバナの周皮を除いた根、
内部が充実し、
細かい円錐形をしたものを
条芩、枝芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になったものを枯芩、

さらに片状に割れたものを片芩と称する。

黄芩は苦寒で、苦で燥湿し寒で清熱し、
肺・大腸・小腸・脾・胆経の湿熱を
清利し、
とくに肺・大腸の火の清泄に長じ肌表を行り、安胎にも働く。

それゆえ、熱病の煩熱不退・肺熱咳嗽・湿熱の痞満・瀉痢腹痛・
黄疸・懐胎蘊熱の胎動不安などに常用する。

また瀉火解毒の効能をもつので、
熱積による吐衄下血あるいは
癰疽疔瘡・目赤腫痛にも有効である。

とくに上中二焦の湿熱火邪に適している。

 

牡蠣
牡蠣

牡蠣
基原:イタボガキ科のマガキ、
その他同属動物の貝殻、通常は左殻が利用される。
牡蠣は鹹渋・微寒で重く、
益陰清熱・潜陽鎮驚の効能をもち、

鹹渋で軟堅散結・収斂固渋にも働く。
熱病傷陰の虚風内動・肝陰不足の肝陽上亢・
驚狂煩燥・心悸失眠・自汗盗汗・遺精崩帯・
久瀉不止・瘰癧痰核・肝脾腫大などに有効である。
このほか、煅用すると胃痛吐酸に対し止痛止酸の効果がある。

 

甘草
甘草

甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、

またはその他同属植物の根およびストロン。


甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、
補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。

そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。

また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。

ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。

提要:
誤治により、中焦が虚し邪が鬱滞し少陽病となった場合の証治について。

訳:
傷寒の病に罹り五六日が経ち、すでに発汗法も攻下法も用いて治療した。
しかし、胸脇が膨満して少し詰まったように感じ、小便は少なく、口渇はあるが嘔吐せず、
頭部にのみ汗が出て、往来寒熱があり、イライラして落ち着かないなどの症があれば、
病邪はまだ除かれていない。柴胡桂枝乾薑湯で治療する。処方を記載。
柴胡半斤 桂枝三両、皮を除く 乾薑二両 括蔞根四両
黄芩三両 牡蠣二両、焙る 甘草二両、炙る
右の七味を、一斗二升の水で、六升になるまで煮て、滓を除き、三升になるまで更に煎じ、
一回に一升を、一日三回温服する。一服目を服用すると少しイライラし、さらに服用すれば汗が出て治癒する。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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