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こんにちは、大原です。
前回(『霊枢』の「終始」 その5)の続きです。

これまで『霊枢』のキーワードであろう「終始」の
意味をその文脈から読み解いていってますが、
前回の記事では、
その核心部分であろう終始篇(第9)の
はじめの部分をみていきました。
そこには
鍼灸による施術を行う者は
終始を理解しなければならず、
そのためには人体の陰陽に
よく通じていなければならない
とありました。

さて、そもそも「終始」の漢字の意味ですが、
普通は
初めから終わりまで
という意味になりますが、
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第14巻(38ページ)には
以下のような解説があります。

<解説>
語源上からみた「終始」の意義

・・・元来、貯蔵(たくわえ)や充実(全部に行きわたる)の意が含まれる。


 ・・・胎児の「胎」と同系の字であり、胎児は「はじめて形をなしたはら子」の意。
→「始」に関しては、現代の「はじめ」の意に似ているようです。

さらに「終始についての」解説が続き、
以下抜粋しますと
以上述べた、終と始とをその語源上の意義から考察するときは、
終始とは、人間が母の体内にみごもってから十ヶ月の月日を過ぎて、
この世に生まれ出て成長して青年となり、
壮年となり、やがて年老いて死に至るまでの全課程を含むものと思われる。
これは人の寿命を春秋といい、
若い人々を春秋に富むというのと同じような表現法であろう。

しかもそれは一個人についての観察であって、
これを宇宙全体から観察するときは、
それは大宇宙の一局部に出現した単なる一コマに過ぎぬものであろう。
すなわち宇宙の一局部に起こった一過程であり、
大宇宙の中には
そのような現象が至るところにおいて絶えず反復されているのである。

しかしてその原動力となっている偉大なる力、
これを陰陽二元としそれを基底として組み立てられた医学、
それが即ち東洋医学の基礎をなすものではないだろうか。
『素問』陰陽応象大論篇の冒頭において
「陰陽は天地の道なり、万物の綱紀、変化の父母、生殺の本志、神明の府なり」
と教示されているゆえんもまたここにあるのだろう。
大宇宙間に起こりつつある諸現象をつぶさに観察するときは、
そのあらゆる現象が陰と陽とのからみ合いによって起こっているのである。
人間はこの大宇宙の間に存在する小宇宙とも見るべきものであり、
また大宇宙構成の一分子なのである。
したがって、その生命現象もまた宇宙の法則に支配されるもので、
宇宙の法則に関係なく単独なる行動は許されないのである。
すなわち、陰と陽との両輪を有する車が軌道上を走る状態、
それが人の生命現象なのである。
したがって、陰陽の両輪が常に故障なく円滑に回転するときに
車は軌道上を走ることを得るもので、
そのいずれかが支障を生ずるときは円滑なる回転はできなくなり。
脱線の危を免れないことも起こるのである。
この理をよく認識しているものを、終始を知るというのである。

『鍼灸医学体系』は
全25巻にもなる名著ですが、
その中でも
ここの記述は重要なものだと思います。

続きます。

山道にて
山道にて。力強さを感じました。

参考文献
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第14巻 雄渾社
『現代語訳◉黄帝内経 霊枢』上巻 東洋学術出版社

ご興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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