こんにちは、大原です。
前回の続きです。
(前回の記事→鍼灸甲乙経を読む その56
「太陰の人」、「少陰の人」、「太陽の人」、「少陽の人」、「陰陽和平の人」、
それぞれに対する治療の考え方についてです。

<原文>
太陰之人、多陰而無陽、其陰血濁、其衞氣濇、
陰陽不和、緩筋而厚皮、不之疾寫、不能移之。

少陰之人、多陰而少陽、小胃而大腸、六府不調、
其陽明脉小、而太陽脉大、必審而調之、其血易脱、其氣易敗也。

太陽之人、多陽而無陰、必謹調之、
無脱其陰而寫其陽、陽重脱者易狂、陰陽皆脱者、暴死不知人。


少陽之人、多陽而少陰、經小而絡大、
血在中而氣外、實陰而虚陽、獨寫其絡脉則強、氣脱而疾、中氣重不足、病不起也。

陰陽和平之人、其陰陽之氣和、血脉調、宜謹診其陰陽、
視其邪正、安其容儀、審其有餘、盛則寫之、虚則補之、不盛不虚、以經取之。


此所以調陰陽別五態之人者也。

<読み>(意味)
太陰の人は、陰多くして陽無く、
その陰血は濁り、その衞氣は渋り、陰陽和せず、筋緩みて皮厚し。

これを疾寫せざれば、これを移すあたわざるなり。
(太陰の人は陰が多くて陽がありません。
しかもその陰の血は濁りその衛気はとどこおっており、
陰陽は調和せず、筋は緩んでおり皮は厚いものです。
したがって相当強い瀉法を実施しませんと
これを移動してバランスをとることはできません。)

少陰の人は、陰多くして陽少なし。
胃小にして腸大なり。六府は調わず。

その陽明の脉は小にして太陽の脉は大なり。
必ず審らかにしてこれを調えよ、その血は脱しやすく、その氣は敗しやすければなり。
(少陰に属する人は陰多く陽少ないものです。
胃は小さく腸は大きいというように六腑は不調和です。
その足の陽明胃経の脈は小さくて、
手の太陽小腸経の脈気は偏大であります。
それ故に多方面にわたり必ずこのようなことを
十分審らかにしてからこれを調えねばならず、
その血は脱しやすくその気は敗れやすいからであります。)

太陽の人は、陽多くして陰少なし。必ず謹みてこれを調えよ。
その陰を脱すること無くしてその陽を瀉す。
陽を重ねて脱する者は狂し易し、陰陽皆脱する者は、暴死して人を知らざる。
(太陽に属する人は陽多くして陰少なし。
必ずこまかい所までよく注意して調えねばなりません。
陰気がすでに少なくなっているのでありますから、
これ以上陰の脱することのないように注意して陽を瀉さねばなりません。
この際、過度に陽を脱しますと狂い易くなり、
また陰陽皆脱するときには突然死んだりまたは人事省になります。)

少陽の人は、陽多くして陰少なく、經は小にして絡は大なり。
血は中に在りて氣は外なり。陰を実して陽を虚にす。
獨りその絡脉を瀉すときは則ち強く、氣脱して疾む、

中氣重ねて不足して、病みて起たざるなり。
(少陽に属する人は陽が多くて陰の少ないものであります。
その経脈は小であって絡脈は大であります。
血脈は中に有りて気絡は外にあります。
それ故治療にあたっては
その内にある陰経を充実して外部の陽絡を瀉すべきであります。
もしこの際単独にその絡脈だけを過度に瀉すときには
陽気が脱しすぎてむことがあります。)

陰陽和平の人は、その陰陽の氣は和し、血脉は調う。
謹みてその陰陽を診そ、その邪正を診し、
その容儀を安じ、その有余を審らかにすること宜し。

盛んなれば則ちこれを寫し、虚すれば則ちこれを補い、
盛ならず虚ならずときは、経をもってこれを取る。
(陰陽和平に属する人は、陰陽の気は調和し血脈が調っているものであります。
それゆえによく手落ちのないように陰陽を診、その正と邪との有余不足を審らかにし、
およそ邪気が盛んなる実証であるならば瀉法を用い、
正気の不足している虚証であるならば補法を用いてこれを調え、
実でも虚でもないときには病んでいる経を取ってこれを治するのであります。)

これ陰陽を調うるに、五態の人を別つゆえんの者なり。
(このようにすることが
陰陽を調うるために五態に人を別つゆえんなのであります」と。)

長くなりますので、次回に続きます。

イチョウの木 葉や実が落ちて寒々しさが伝わってきます。

写真はイチョウの木です。
葉が落ちて寒々しさが伝わってきます。(12月末 御堂筋にて)
ギンナンの実も落ちていたので雌の木のようです。
葉を落とすのは冬への備えだそうで、
葉があるとその分エネルギーを消耗してしまうからだそうです。


参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

大原

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