こんにちは、大原です。
前回の記事(鍼灸甲乙経を読む その36)で
「上焦は霧の如く、中焦は漚の如く、下焦は涜の如し」
という一文が最後に出てきました。

さて、この上焦、中焦、下焦の三つを合わせて
三焦と称しますが、
それぞれどのような性質・性格なのかが
この文章に表されています。

その前にまず、三焦全体についてですが、
生理作用は
①原気の通り道
②水液の通路
であると言われてます。そして、
隔膜より上(臓腑では心、肺)=上焦
膈膜より下で臍から上(臓腑では脾、胃)=中焦
臍から下(臓腑では肝、腎など)=下焦
であるとされています。
ではここから具体的にみていきましょう。

『基礎中医学』では
上焦は、心・肺によって宗気と呼ばれる全身を動かす気が、
全身に昇発・宣散され、霧が立ちこめるように散布することから、
上焦は霧のごとし」と言われる。
と解説されています。
さらに『鍼灸医学大系』の解説においては、
後漢末の『釈名しゃくみょう』という漢字の辞典を引用し、
「霧」とは「冒」なり。気、蒙乱もうらん(おおいみだれる)して、物を覆い隠するなり」
とあることから、
霧というものは一面にひろがって凡てのものを
覆いかくすような性格をもっており、
上焦の性格もまたこれによく似ていると述べられています。

中焦について
『基礎中医学』では
胃は水穀を受納して腐熟し、脾は水穀の精微を吸収・上輸して運化を達成し、
飲食物から変化した精微を発生させるために
「中焦は漚のごとし」おうとは、発酵して生じる泡のこと)と
いわれると説明しています。
では、『鍼灸医学大系』の解説も確認してみますと、
同じく「泡」の意であるとは思われるが、
ではなぜ「漚」という字を用いたのかという疑問について触れ、
『説文解字』から
「漚とは久しく水につけるなり」さらに
「區(区)とはこまごまと色々に区分すること」と引用し、
「漚麻」とは、麻を作るときに先ず麻の木を刈り取って久しく水中に漬け、
その樹液を去ってから皮と繊維と木質部とに区分したものをいうが、
その麻の木の代わりに
色々な穀物を水に漬けたらと考えたらそれが中焦の作用に連なる。
つまり、口から取り入れた水穀は胃中に入り、そこに漬けられるということである。
とあります。
ここでようやく、単なる「泡」ということではなく
「漚」とする意味が分かると思います。

同様に、「下焦」も確認していきます。
『基礎中医学』では水液と糟粕を排泄するため、
「下焦は涜の如し」(とく:みぞ)といわれているとまとめています。
『鍼灸医学大系』の解説では『説文解字』を引用し、
「溝である」として、
「従って、下焦というものは液体がつきぬけて流れ、
ミゾのような働きをするものであるということで、
主として大腸から下り、
下焦となって膀胱に入るような作用を述べたものと解釈される」
とし、『基礎中医学』と同様の、溝であるとする解説が
なされています。

第11「営衛気と三焦」篇は以上になります。
次からは、第12篇の「陰陽・清濁・精気・津液・血脈」になります。


参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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