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こんにちは、為沢です。

今回は張景岳ちょうけいがくの『質疑録しつぎろく』の第十一章「論疝与腎経無相干」其之二です。



和訓:
夫れ腎は水臓なり、膀胱は之の腑と爲す。
膀胱は寒水を化す所と爲す、疝は本寒湿の氣を感ぜる所なり、寒を以て寒を召し、
其の邪は最も速し、而して腎と膀胱は表裏を爲す。
経に云う「諸の寒の収引するは、皆な腎に属す。」
故に疝の攣急して上りて心胃を衝く者は、正に腎邪の病爲るなり。
今人の疝を病むを見れば、一つに房労有り、則ち其の病は便ち發して止まず。
故に『聖済総録』に「欲を嗜みて労傷し、
腎水の涸竭すれば、以て肝氣を滋栄すること無ければ、
則ち留滞内結して、發して陰疝を爲す」と云う、
是れ疝の腎虚に發する者多きなり。
若し疝を治すに化源に従らずして、
日に伐肝疏導を以て従事すれば、則ち病は劇しくなりて療し難からん。
是の症に臨む者は、当に丹溪の言を以て、
専ら肝経を主とするとともに腎虚で致す者甚だ多ければ、
参朮を以て君と爲し、疏導薬で之を佐けて得と爲すべし、
而して腎経は干すること無しの言を据と爲して執る可からざるなり。


・腎は水の臓であり、膀胱は腎の腑である。
膀胱は寒水を気化して外へ出す作用をするが、
疝は本来、寒湿の気を感受したものであり、内寒が外寒を招き寄せるようなもので
その外感の寒邪の性質は最も速いものである。

疝気せんきとは?
張景岳ちょうけいがく(1563年〜1640年)
『景岳全書』卷三十三より
”疝氣病者、凡小腹睾丸、爲腫爲痛、止作無時者、皆是也”

和訓:
疝氣の者は、凡そ小腹睾丸、腫を爲し痛を爲し、
止むとおこるが時無き者、皆是なり

小腹・睾丸が腫れて痛むとあるので
男性のみに疝気があると取られやすいが、疝は女性にも存在している。
(『景岳全書』卷三十三より
”不獨男子有之而婦人、亦有之經曰有積氣在腹中、有厥氣名曰厥疝”

・腎と膀胱は表裏の関係にあり『素問』至真要大論には
”諸寒收引、皆属於腎。”とあり、
(こちらを参照→【古医書】素問:其ノ七十四 至真要大論篇
疝証で攣急して上腹部へ気が上衝するものはまさしく腎邪の病である。

・最近の人々は疝の病は房事過多や労損によるものが多く、
一旦発病するとなかなか止まない。

宋徽宗そうきそう(1082年〜1135年)
聖済総録せいせいそうろく』卷第九十四·陰疝門より
”嗜欲労傷、腎水涸竭、無以滋栄肝氣、故留滞内結、發爲陰疝之病”

和訓:
欲を嗜みて労傷して腎水が涸渇し肝気を滋栄すること無ければ
則ち留滞内結して発して陰疝を爲す

これは疝は腎虚の者に発することが多いと指摘している。

・もし疝を治療するときに腎を補って化源を養うことをせず、
毎日肝気を消伐し、鬱滞を疏散し消導しようとばかり試みれば
病は益々激しくなって治療することが困難になるであろう。

・このような病証に臨む場合は、
丹溪のように肝経ばかりを治療するのではなく、
腎虚で疝になっている者が殆どであるので、
人参・白朮を君薬に用いて、疏導薬を佐薬として用いれば
的確な治療になる。

・腎経とは何ら関係ないという丹溪の言を根拠としてはならない。

・このような発言に拘ってはいけないのである。


参考文献:
『中国医典 質疑録』 緑書房
『中国医学の歴史』 東洋学術出版社
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社
『宋本傷寒論』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・素問』東洋学術出版社
『現代語訳 黄帝内経・霊枢』東洋学術出版社
『校釈 諸病源候論』緑書房
『景岳全書』台聯國風出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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