この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。


8/30(水)
太陽病中篇より

(117条)
焼針令其汗、針処被寒、核起而赤者、必発奔豚、気従少腹上衝心者、
灸其核上、各一壮、与桂枝加桂湯、更加桂二両。

1

焼針を行って発汗させた結果、寒邪が入り込んで
」(突起物)が体表に起こり赤くなった。
この場合は奔豚(腹部から、胸部〜咽喉につきあげる不快感)をなす。
そのような場合には灸を核の上に一壮し、
桂枝加桂湯を用いるという内容である。

焼針による発汗法によって太陽病は取れたが、
火気が上逆してしまった。
もともと、水邪(腎邪と表現する書物もある)や
熱邪といった宿淫があり、
焼針によって心陽が虚したことで
火気・宿淫が結びついて奔豚となったとする解説がある。

65条でも奔豚の記述があり、
そこでは裏寒による水気上逆がみられ、
茯苓桂枝甘草大棗湯を用いた。
ちなみに、本条や65条と同じ内容が
金匱要略の奔豚の病の記述としてある。

また、核の症状は
営衛が通行していないことによるものである。

医心法によると、本条は
「内薬外灸」という処置をとることにより、
営衛を通行させつつ
上逆した邪を下ろすということのようである。

桂枝加桂湯は、気の衝き上げたものに対し、
衝き上げを平して降逆させる。
ちなみに、当時の桂枝には
肉桂(桂枝の幹の部分)も混ざっていたという可能性もある。
肉桂は、命門火衰・腎陽虚に効果があるとあり、
陽気不足の強いものに対する。
すなわち、当時の桂枝加桂湯の作用は
より強いものだったのかも知れない。

これらのことから、
桂枝加桂湯は甚だしい陽気不足に用いることが、
より明確に分かる。


(118条)
火逆、下之、因焼針煩躁者、桂枝甘草龍骨牡蠣湯主之。

2

冒頭の「火逆」についてであるが、
116条にも「火逆」という記述があった。
これは表証に対して火を用いた治療を行い、
腰から下が重くなって痺の症状が出たということであった。
本条では火逆法と下法とを用い、さらに焼針を用いたことで
煩躁の症状が出たということである。

さて、桂枝甘草湯に龍骨と牡蠣とを加えた方剤を用いるとあるが、
桂枝甘草湯は64条にもあった。誤って発汗したことで
心陽を傷つけたのであるが、
おそらく本条も同じ様に心陽を傷つけたのであろう。

脈経によると、表証に対して火逆法を行ったが取り切れず、
下法を用い、さらに焼針を用いた。
そして焼針の熱と、体内の熱とが結びついたことで煩躁がおこったとある。
すなわち、もともと熱邪が体内に存在していたか、
熱がこもりやすい体質であるということが読み取れる。

(続く)


参加者:下野、新川、大原、盧

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