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『馬王堆出土文献訳注叢書 五十二病方』東方書店
『馬王堆出土文献訳注叢書 五十二病方』東方書店

黄帝内経以前の書物とされていますので、
内経以降の書物のような治療法もあれば、
やはり医学の東西問わずあったであろう
呪術のようなものまであり、
非常に興味深い内容となっています。
またご紹介できるよう、
読み進めていきます。

では『諸病の主薬』の記事に参ります。


【原文】
提気、須用升麻、桔梗、為主。
労熱痰嗽声嘶、須用童便、竹瀝、為主。
暴吐血、須用大黄、桃仁、為主。
久吐血、須用当帰、川芎、為主。
衂血、須用枯黄芩、芍薬、為主。

<第十八に続く>


【解説】
気をかかぐるには、升麻、桔梗を使用すべし。

労熱の痰嗽、嗄声には、童便、竹瀝を使用すべし。

激しい吐血には、大黄、桃仁を使用すべし。

吐血が続くものは、当帰、川芎を使用すべし。

鼻血には、枯黄芩、芍薬を使用すべし。

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升麻しょうま

升麻『中医臨床のための中薬学』より
升麻『中医臨床のための中薬学』より

キンポウゲ科のサラシナショウマの根茎。
性味:甘・辛・微寒
帰経:脾・胃・肺・大腸
効能:
①発表透疹
・麻疹初期、透発が不十分な時に用いる。
方剤例→升麻葛根湯・宣毒発表湯。

②清熱解毒
・胃火亢盛による歯茎のびらん、口内炎、口臭に。
方剤例→清胃湯。
・熱毒による咽の痛み、発赤に。
方剤例→晋済消毒飲。

③昇拳陽気
・気虚下陥の慢性下痢、脱肛、子宮筋腫に。
方剤例→補中益気湯・昇陥湯。

桔梗ききょう

桔梗
桔梗

キキョウ科のキキョウの根。
性味:苦・辛・平
帰経:肺
効能:
①宣肺祛痰
・外邪犯肺の咳嗽や痰に。
・風寒の咳嗽、痰、鼻閉、鼻水に。
・風熱の咳嗽、粘調な痰に。
・肺気不宣の咽喉の腫れや痛み、嗄声に。
方剤例 → 桔梗湯・加味甘桔湯・清咽利膈湯。

②排膿消腫
・肺癰の胸痛や膿血痰に。
方剤例 → 桔梗湯・肺癰排膿湯。
・皮膚化膿症に。
方剤例 → 排膿散及湯・十味敗毒湯。

③その他
・尿閉や排尿困難、腹痛、下痢などに。

童便どうべん

小児の尿。
性味:凉(寒)
補足:
小児の尿でここには記載されているが、
勿論 大人の尿(人尿)も他の書物には記載がある。

竹瀝ちくれき

イネ科ハチクの竹竿を加熱し、
そこから流れ出た液汁。
性味:甘・寒
帰経:心・肺・胃
効能:
①清熱滌痰・定驚透絡
・痰壅の中風や癲癇に。
方剤例 → 竹瀝湯。
・痰熱による咳嗽や呼吸困難、喘鳴に。
方剤例 → 竹瀝達痰丸。
・小児の痰熱による痙攣に。
・痰留経絡のしびれやひきつりに。

大黄だいおう

大黄
大黄

タデ科のダイオウ属植物。
又は、それらの種間雑種の根茎。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
効能:
①瀉熱通腸
・胃腸の実熱積滞の便秘や腹痛、高熱、意識障害などに。
方剤例 → 大承気湯・小承気湯・調胃承気湯。
・大腸湿熱の下痢や腹痛、テネスムスなどに。
方剤例 → 芍薬湯。
・食積の下痢や腹満、腹痛に。
方剤例 → 木香檳榔丸・枳実導滞丸。
・寒積の便秘や腹痛、冷えなどに。
方剤例 → 温脾湯・大黄附子湯。

②清熱瀉火・凉血解毒
・火熱上亢の目の充血、喉の痛みや腫れ、歯痛、鼻血など。
方剤例 → 三黄瀉心湯・凉膈散・当帰竜薈丸。
・虫垂炎に。
方剤例 → 大黄牡丹皮湯・闌尾化瘀湯・闌尾清化湯。
・皮膚化膿症に。

③行瘀破積
・血瘀の無月経や産後瘀阻の腹痛に。
方剤例 → 無積丸・下瘀血湯。
・打撲外傷の腫れや痛みに。
方剤例 → 復元活血湯・治打撲一方・通導散。

④清化湿熱
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 茵蔯蒿湯。
・水熱互結の結胸による心窩部〜下腹の痛み、発熱などに。
方剤例 → 大陥胸湯。
・腹水の腹満や便秘、尿量の減少に。
方剤例 → 已椒藶黄丸。

桃仁とうにん

桃仁
桃仁

バラ科のモモやノモモなどの成熟種子。
性味:苦・甘・平
帰経:心・肝・大腸
効能:
①破瘀行血
・血瘀の無月経や月経痛、腹腔内の腫瘤に。
方剤例 → 桃紅四物湯。
・産後瘀阻の悪露停滞や下腹部痛、下腹の腫瘤等に。
方剤例 → 生化湯。
・蓄血の狂躁状態、下腹部が硬くてはるの症状に。
方剤例 → 抵当湯。
・打撲外傷の内出血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 復元活血湯・桃仁湯。
・火毒壅盛の気滞血瘀による肺化膿症や虫垂炎に。
方剤例 → 大黄牡丹皮湯・腸癰湯。

②潤腸通便
・腸燥の便秘に。
方剤例 → 五仁丸・潤腸丸。

③その他
・気逆の咳嗽や胸郭脾痞満に。
方剤例 → 双仁丸。

当帰とうき

当帰
当帰

セリ科の根をいう。
根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
性味:甘・辛・苦・温
帰経:心・肝・脾
効能:
①補血調経
・血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・眩暈・目がかすむ・動悸・月経不順などに。
方剤例 → 四物湯。
・大出血のあと、あるいは気虚をともなうときに。
方剤例 → 当帰補血湯。
・虚寒の腹痛・冷えなどをともなうときもに。
方剤例 → 当帰生姜羊肉湯。

②活血行気・止痛
・気滞血瘀の疼痛・腹腔内腫瘤などに。
方剤例 → 膈下逐瘀湯。
・打撲外傷による腫脹・疼痛に。
方剤例 → 活絡効霊丹。
・痺証のしびれ痛みにも。
・癰疽瘡瘍にも。

③潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 潤腸丸。

川芎せんきゅう

川芎
川芎

セリ科のマルバトウ属植物の根茎。原名は芎藭。
性味:辛・温
帰経:肝・心包・胆
効能:
①活血行気
・気血瘀滞による月経不順・無月経・月経痛など。
方剤例 → 四物湯。
・肝鬱気滞・血瘀の胸脇痛。
方剤例 → 柴胡疏肝散。
・瘀血痺阻心脈による挟心痛。
方剤例 → 冠心Ⅱ号。
・火毒壅盛の気滞血瘀による皮膚化膿症など。
方剤例 → 透膿散。
・打撲外傷による内出血の腫脹・疼痛。

②祛風止痛
・風寒の頭痛に。
方剤例 → 川芎茶調散。
・風熱の頭痛に。
方剤例 → 川芎散。
・風湿の頭痛に。
方剤例 → 羌活勝湿湯。
・血虚の頭痛に。
方剤例 → 加味四物湯。
・風寒湿痺の関節痛に。
方剤例 → 三痺湯。

黄芩おうごん

黄芩
黄芩

シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称す。
当条文の枯芩は
老根で内部が黒く空洞になってものである。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
効能:
①清熱燥湿
・湿温・暑温初期の湿熱阻滞気機の胸が苦しいや、悪心、嘔吐などに。
・湿が熱より重いとき。 → 黄芩滑石湯。
・熱が湿より重いとき 。→ 甘露消毒丹。
・湿熱中阻の腹満や嘔吐時に。 → 半夏瀉心湯。
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。 → 黄芩湯・葛根黄芩黄蓮湯。
・湿熱黄疸に。

②清熱瀉火・解毒・凉血
・肺熱の咳嗽や呼吸の促迫、黄痰などに。
方剤例 → 清肺湯。
・上焦火熱の高熱や口渇、喉痛などに。
方剤例 → 凉膈散。
・上焦火盛の喉の腫れや痛み、皮膚化膿症に。
・血熱妄行の鼻血や吐血に。
方剤例 → 黄蓮解毒湯・三黄瀉心湯。

③清熱安胎
・妊娠中の蘊熱による下腹痛に。
方剤例 → 当帰散。

白芍びゃくしゃく

芍薬
芍薬

ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
効能:
①補血斂陰
・血虚による顔色がよくない、ふらつき、眩暈、かすみ目などに。
方剤例 → 四物湯。
・陰虚陽浮による自汗や寝汗に。
・外感風寒・表虚の営衛不和の自汗や悪風に。
方剤例 → 桂枝湯。

②柔肝止痛
・肝鬱気滞による胸脇部の張りや痛み、憂鬱感、イライラなどに。
方剤例 → 四逆散・柴胡疏肝散。
・肝脾不和の腹痛や下痢に。
方剤例 → 痛瀉要方・逍遙散・当帰芍薬散。
・血虚肝乗の筋肉の痙攣や痛みに。
方剤例 → 芍薬甘草湯・桂枝加芍薬湯・小建中湯。
・大腸湿熱の下痢や腹痛に。
方剤例 → 芍薬湯・黄笒湯。

③平肝斂陰
・肝陰不足・肝陽上亢の頭痛や眩暈に。
方剤例 → 鎮肝熄風湯・七物降下湯。

④その他
・利水剤として。
方剤例 → 真武湯。
・血痺に。
方剤例 → 黄耆桂枝五物湯。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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