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飴 アンパンマン
飴 アンパンマン

下野です。
先日、地元でお祭りがあり、
屋台でおばちゃんが飴で絵を描いてくれました。
これ、一筆書きで作られた物で、
一見やる気の無さそうなおばちゃんでしたが(笑)、
作る時の顔付きは まさに職人顔でした。

では『諸病の主薬』の記事に参ります。


【原文】
嘈雑、須用姜炒黄連、炒梔子、為主。
順気、須用烏薬、香附、為主。
痞満、須用枳実、黄連、為主。
脹満、須用大腹皮、厚朴、為主。
水腫、須用猪苓、沢瀉、為主。
寛中、須用砂仁、枳穀、為主。

<第十五に続く>


【解説】
嘈雑(胸焼け)には、姜炒黄連、炒梔子を使用すべし。

順気(降逆下気)には、烏薬、香附を使用すべし。

痞満(胸や腹が張り、つかえて苦しい)には、枳実、黄連を使用すべし。

腹の張りには、大腹皮、厚朴を使用すべし。

水腫には、猪苓、沢瀉を使用すべし。

中をゆるめるには、砂仁、枳穀を使用すべし。

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黄連おうれん

黄連
黄連

キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸
効能:
①清熱燥湿
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。
方剤例 → 香連丸・芍薬湯・葛根黄笒黄連湯。
・腸胃湿熱の腹満や嘔吐、悪心、下痢に。
方剤例 → 半夏瀉心湯・枳実消痞丸。
・三焦湿熱の潮熱や胸苦しい、口渇、嘔吐などに。
方剤例 → 杏仁滑石湯。

②清熱瀉火
・熱入心包の高熱や意識障害、譫言、煩燥などに。
方剤例 → 牛黄清心丸・安宮牛黄丸。
・火盛迫血妄行の吐血、鼻血に。
方剤例 → 三黄瀉心湯。
・心火上炎の焦燥、不眠、口内炎に。
方剤例 → 朱砂安神丸。
・陰血不足があるときに。
方剤例 → 黄連阿膠湯。
・胃火の消穀善飢、歯痛に。
方剤例 →清胃散。
・肝火胃犯の胃痛や嘔吐、胃酸過多に。
方剤例 → 左金丸。
・肝火上炎による目の充血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 当帰竜薈丸。
・胸中積熱・腸中有寒の腹痛、嘔吐に。
方剤例 → 黄連湯。

③清熱解毒
・熱毒の高熱、煩燥、目の充血、腫れ、咽喉の痛み、皮膚化膿症に。
方剤例 → 黄連解毒湯・普済消毒散。
・火毒による目の充血や腫れ、痛みに。

栀子しし

山梔子
山梔子

栀子、又は山栀子と言う。
アカネ科のクチナシ。
形が球形の物を山栀子、
細長い物を水栀子と言う。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病で起こる胸中鬱熱で胸が熱苦しい、不眠などを呈する時に。
方剤例 → 栀子豉湯。
・三焦の実火による高熱、意識障害を呈する時に。
方剤例 → 黄連解毒湯。
・肝火による目赤、疼痛、口苦、胸が苦しい等を呈する時に。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯。

②清熱利湿
・湿熱の黄疸に。
方剤例 → 栀子柏皮湯。
・膀胱湿熱の排尿痛、排尿困難を呈する時に。
方剤例 → 五淋散。

③清熱涼血
・血熱による各出血に用いる。
方剤例 → 栀子金花丸。

④清熱解毒
・熱毒による皮膚の化膿症に。
方剤例 → 清上防風湯。

烏薬うやく

烏薬『中医臨床のための中薬学』より
烏薬『中医臨床のための中薬学』より

クスノキ科のテンダイウヤクの肥大した根部。
性味:辛・温
帰経:脾・肺・腎・膀胱
効能:
①行気散寒止痛
・中寒気滞の腹痛や冷えに。
方剤例 → 烏沈湯・香烏散。
・寒凝気滞の下腹部痛や冷え、疝気に。
方剤例 → 天台烏薬散。
・寒鬱気逆の腹脹や痛み、呼吸困難などに。
方剤例 → 四磨湯。
・気滞血瘀の腹痛、月経痛などに。
方剤例 → 烏薬湯・加味烏薬湯。

②温腎縮尿
・腎陽不足、膀胱虚冷の頻尿や遺尿に。
方剤例 → 縮泉丸。

香附こうぶ

香附『中医臨床のための中薬学』より
香附『中医臨床のための中薬学』より

カヤツリグサ科のハマスゲの細根などを除いた根茎。
性味:辛・微苦・微甘・平
帰経:肝・三焦
効能:
①理気解鬱:
・肝鬱気滞による胸の脹痛、腹満、憂鬱など。
方剤例→柴胡疎肝散。
・気、血、痰、湿、熱、食鬱による胸苦しい、嘔吐、消化不良などに。
方剤例→越鞠丸。
・寒凝気滞による腹痛やお腹の張りに。
方剤例→良附丸。

②調経止痛:肝鬱気滞による月経の乱れや痛みに。
方剤例→香附芎帰湯・艾附丸。

枳実きじつ

枳実
枳実

ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・大腸
効能:
①破気消積
・調胃湿熱積滞の腹痛や便秘、或いは下痢などに。
方剤例 → 枳実導滞丸。
・熱結の便秘や腹満、腹痛に。
方剤例 → 大承気湯。
・気滞血瘀の腹痛や腹満などに。
方剤例 → 通導散・枳実芍薬散。

②化痰消痞
・胸脇の痰飲で胸が痞えて苦しいや呼吸促迫に。
方剤例 → 導痰湯・滌痰湯。
・痰濁阻滞胸陽の胸痛や胸の痞えなどに。
方剤例 → 枳実薤白桂枝湯。
・寒疑気滞の胃痛や上腹部の痞えに。
方剤例 → 橘皮枳実生姜湯。
・飲食停滞・脾胃不運の上腹部の痞えや腹痛、食欲不振に。
方剤例 → 枳実消痞丸・枳朮丸。

大腹皮だいふくひ

大腹皮『中医臨床のための中薬学』より
大腹皮『中医臨床のための中薬学』より

ヤシ科ビンロウジュの成熟した果実。
性味:辛・微温
帰経:脾・胃・大腸・小腸
効能:
①下気寛中
・湿阻気滞の腹満や排便してもスッキリしない等に。
方剤例 → 藿香正気散。

②行水消腫・止瀉
・水湿外溢の全身の浮腫や尿量の減少に。
方剤例 → 五皮散。
・脚気の腫れや痛みに。
・脾胃湿困の腹満や下痢に。
方剤例 → 一加減正気散。

厚朴こうぼく

厚朴
厚朴

モクレン科のカラホウおよびその変種の樹皮。
性味:苦・辛・温
帰経:脾・肺・胃・大腸
効能:
①行気化湿
・脾胃湿困や食積の腹満や腹痛、下痢などに。
方剤例 → 平胃散。
・寒湿に。
方剤例 → 厚朴温中湯・厚朴生姜甘草半夏人参湯。

②下気除満
・熱結や裏実気滞の腹満や腹痛、便秘に。
方剤例 → 厚朴三物湯・大承気湯。

③燥湿化痰・下気降逆
・痰湿壅肺の咳嗽や呼吸困難に。
方剤例 → 厚朴麻黄湯。

猪苓ちょれい

猪苓
猪苓

サルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核。
性味:淡・甘・平
帰経:腎・膀胱
効能:
①利水滲湿
・水湿停滞の尿量減少や水腫、水様下痢などに。
方剤例 → 四苓散・五苓散。
・湿滞有熱に。
方剤例 → 猪苓湯。

沢瀉たくしゃ

沢瀉
沢瀉

オモダカ科のサジオモダカの皮を取り除いた茎。
性味:甘・淡・寒
帰経:腎・膀胱
効能:
①利水滲湿・泄熱
・水湿停滞の尿量減少や水腫、水様下痢などに。
方剤例 → 四苓散・五苓散。
・湿滞有熱に。
方剤例 → 猪苓湯。
・湿熱下注の排尿痛や排尿困難、尿の混濁に。
方剤例 → 五淋散。

②除痰飲
・痰飲停留のめまいに。
方剤例 → 沢瀉湯・半夏白朮天麻湯。

③その他
・腎火を泻す。
方剤例 → 六味地黄丸。

砂仁しゃじん

砂仁『中医臨床のための中薬学』より
砂仁『中医臨床のための中薬学』より

ショウガ科のヨウシュクシャの種子。
性味:辛・温
帰経:脾・胃・腎
効能:
①行気止痛・消食
・脾胃の気滞や食積による腹満や腹痛に。
方剤例 → 香砂枳朮丸。

②開胃止嘔
・湿困脾胃の悪心嘔吐や腹満、食欲不振に。
方剤例 → 香砂二陳湯。
・脾胃気虚の悪心嘔吐や食欲不振に。
方剤例 → 香砂六君子湯。
・妊娠中の嘔吐。

③温脾止瀉
・脾虚寒湿積滞の下痢や腹痛に。
方剤例 → 縮砂丸。

④理気安胎
・切迫流産の腹痛に。

枳穀きこく

枳穀『中医臨床のための中薬学』より
枳穀『中医臨床のための中薬学』より

ミカン科のダイダイ、イチャンレモンの成熟果実。
性味・帰経・効能は
枳実と同じあるが、
作用が緩和で理気寛中や
胸腹の気滞による痛みに適す。
日本産では夏代や温州ミカンがこれに当たる。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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