この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。


太陽病上篇より

8/31(水)

 板書

28条
服桂枝湯、或下之、仍頭項強痛、翕翕発熱、無汗、心下満微痛、小便不利者、桂枝去桂加茯苓白朮湯主之。


この条文であらわされている内容は、
桂枝湯を服用させ、または、下法を行ったが、
なお症状が治まらない場合に
桂枝去桂加茯苓白朮湯が主治するというものである。

症状は、①頭項強痛、②発熱、③無汗、④心下満に微痛、⑤小便不利とあり、
①②③はこれまで学んできた太陽病の所見である。
④⑤は太陽病ではなく、裏証であり、水飲内停の所見である。
脾胃の水飲の停滞が心下満をおこし、
膀胱の働きが失調することから小便不利をおこしている。

すなわち、これら5つの症状から、
太陽病と、脾胃や膀胱の水飲停滞の所見があるといえる。

本条文のはじめに、
「桂枝湯を服用させても症状が治まらない」とあることから、
もともと裏の弱りがあることから
表証が治まらないと考えるのが適当と思われる。
さらに、「あるいは、下法を用いても治まらない」ことから
陽明病ではないことが分かる。
裏の症状が、下法を用いることで緩解するようにも考えられるが、
水飲が停滞しているのが膀胱や脾胃であることから、
陽明の邪ではないため、下法では緩解しないと思う。

この条文の解釈は諸説あるようで、
①②③は表証の所見ではあるが表証ではなく、
裏の水飲内停によって
膀胱経の経気不利でおこった裏証とする見方がある。
そのため、方剤は桂皮を除き、
利水作用のある茯苓や白朮を加えている。
小便不利が治れば水飲の停滞がとれたとみなす。

また、①②③は表証であるとする見方もある。
この場合、裏の虚があることで表証にかかりやすくなっていたと考える。
また、条文のはじめに、まず桂枝湯を服用させても
(先に表だけを改善させようとしても)治らなかったことから、
裏の虚をととのえることが必要ともいえる。
そのため、桂枝湯から桂皮を除き、
裏の虚を改善させることに主きをおいた方剤となったと思われる。

表証の所見が必ずしも表証を表すということではないこと、
また、桂枝湯や下法を用いても症状が改善しないことを
考えると、裏の水飲の停滞を主にして
治法を検討すべきであるということが
この条文の主旨であると思う。 

参加者:下野、新川、本多、大原、小堀


返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here