同業の某が質問してこう言った。
君はどの様な特効薬をお持ちで、
これらの難治性疾患に対して、
このように優れた実績を数多く挙げているのだ。
真実、命を救う熱い思いがあるならば、
処方・手段を伝えることを惜しまずに
教えて欲しいと。

私はこれに答えてこう言った。
ただその定症を洞察して、
適切な方剤をその人に施すだけである。
どうしてこれ以外の術があるだろうか、
決してない、と。

『完訳 医界之鉄椎』より抜粋


下野です。
久しぶりの『医界之鉄椎』からの
記事になります。

冒頭のやり取りの文章、
全くもってその通りだと思います。
四診を用いて
患者の病の本質を見抜くことが
何よりも大切であります。

また、推測にはなりますが、
特効治療の様な書籍や薬を出すことで、
無学の者が、浅い知識で
書籍に書かれたことだけを
丸暗記して施術を行うことで
その結果、誤治が起こる可能性も
十分考えられます。

少し話はずれますが、
かつて諺解書を多く世に出した
岡本 一抱が
兄である近松 門左衛門より
「無学の者が読んでもわかるような
諺解書をだすことで、
誤治が増える可能性があるから
止めるべきだ」
というような旨の事を言われたようで、
それ以降は諺解書を書かなくなったと
言う話もあります。

確かに、現代においても
多くの患者を救うためには、
多くの治療家が治せるように
なることが最良ですが、
その為には、
治療方法を書いた書籍や特効薬よりも、
鍼灸で言えば
基礎学や病因病理学、弁証学を
先ずはしっかりと学べきだと思います。

皆さんはどう思われますでしょうか。

下野


参考文献:
『完訳 医界之鉄椎』 たにぐち書店

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